緑豆でバングラデシュ農家支援 ユーグレナ、ロヒンギャ難民も

 

 身近な野菜、モヤシの原料である緑豆。この栽培事業である「緑豆プロジェクト」を通じ、ミドリムシの健康食品などを扱う(株)ユーグレナが、バングラデシュ農家の生活向上を支援している。同社で社会的課題と収益の両立を目指すソーシャルビジネスを展開している佐竹右行執行役員(63)に、取り組みについて聞いた。(編集部)

インタビューに応える佐竹執行役員=東京都港区、3月

 ―緑豆プロジェクトを始めるきっかけは。

 「大学卒業後、野村証券に約20年間勤務後、独立して、いくつかの会社経営に携わりました。今から約10年前に『雪国まいたけ』でお世話になっていたとき、その会社がモヤシの事業をやっていたことが緑豆とのそもそもの出合いです。そこでのビジネスを引き継ぐ形で、ユーグレナに移りました」

 ―モヤシ生産の現状は。

 「モヤシの原料である、緑豆の供給は以前から不安定な状態でした。国内で食べるモヤシの大半は日本製だと思っている方が多いかもしれませんが、約9割の緑豆は中国製なのです。輸入した豆を1週間から10日間、日本国内で発芽させモヤシにしています」

 ―モヤシの値段は安い。

 「ほとんどのモヤシは事実上中国産ということになります。もし中国が緑豆の輸出をストップしたら、日本でモヤシがほぼ食べられなくなります。多くのモヤシはスーパーなどで、1袋30円前後で売られ、家計にやさしい野菜です。ただ、緑豆価格は、約15年前の2004年が1トン約7万円でしたが、現在は25万円ぐらいになっているのです」

 ―原料の緑豆の価格が上がっている。

 「そうです。原料価格が大幅にアップしているものの、モヤシの販売価格は大きく変わっていません。そんな環境下で、国内のモヤシメーカーはこの10年間で4割ぐらい廃業している。もし緑豆の輸入がストップすれば、家計にやさしいモヤシが高級品になるかもしれません」

 ―気軽に食べられない。

 「多くの日本人は、モヤシのそのような現状を詳しく知らないと思います。緑豆を中国だけではなく、どこかほかの国でも作ることができればいいのでは、と考えました。その国は世界でもっとも貧しい国といわれていたバングラデシュでした」

 「その国の中核をなしている農家に緑豆を作ってもらえれば、その人たちの収入が増えますし、日本にとっても安定的な食料供給が維持できるわけです。まさにウィンウィン(相互利益)の関係だと考えました」

 ―現地での協力者は。

 「私たちの思いを、当時のグラミン財団におられ、バングラデシュの経済学者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏に話したところ『すばらしいソーシャルビジネスだ。合弁会社を設立しよう』ということになりました。その合弁企業が私の名刺にあるグラミンユーグレナです(前身はグラミン雪国まいたけ)」

 ―契約農家の数は。

 「緑豆を作ってもらっているバングラデシュの契約農家は2018年度が約8千人、19年度は1万人の見通しです。当初は100人くらいから始まった事業でしたが、年々増えています。18年度は約5千ヘクタールで約1600トンの収穫をし、日本にもその一部を輸出しました。スーパーなどで売っているモヤシの袋で、約700万食相当になります。栽培の場所はバングラデシュの南部にある、ミャンマーとの国境沿いの町、コックスバザールなどです」

 ―農家の理解はあったのか。

 「バングラデシュでの緑豆の栽培ですが、毎年2月に種をまき4月末から5月に収穫します。約65日で収穫できます。四季はなく、雨期と乾期の2シーズンで、雨期にコメを、乾期には、換金作物として野菜、豆などを作っています」

 「農家たちは乾期の作物で、作付けが一番良さそうで、もうかりそうなものを選びます。私たちは緑豆の作り方をよく知っており、現地で農民集会を開いて、こういう作り方をしてこうすれば、こういう値段で買い取ることを保証するなど、しっかりと説明します。そうすると、『やっぱり緑豆が一番利益が出る』と契約農家は理解してくれるのです」

 ―農家たちは集まったのか。

 「集会でわれわれが説明した当初は、農家たちから『うそをつけ、俺たちはだまされてばかりだった』との反応ばかりでした。100人集まっても5人ぐらいしか契約農家にならなかった。1カ月、半年とかかって100人の契約農家を集めるのに必死でした。しかし、今では口コミで広がり集会に1万人が集まります。1人当たりの収入を200ドルも増やしているからです。今はお断りするのが大変になっています」

 ―苦労するところは。

 「契約する農民が1万人規模と一口にいいましたが、1万人にどうやって栽培方法を教えるのか、1万人分の緑豆を持って来たら、どこで緑豆を管理して、銀行口座も持たない人たちにどうお金を渡すのか。そういう問題を一つ一つ解決しています。冷蔵庫、トラックもないですし、道路は舗装されていない。そういう現場で、課題解決する仕組みをつくりあげるところがとても苦労しました」

 ―長年の取り組みが実を結んだ。

 「ウィンウィンの関係を目指し、10年間の知見、経験を積みました。一方、当社は栄養食品の会社ですから、ポリシーとして以前から、バングラデシュで、ユーグレナ入りのクッキーを金・土曜の休日を除いて毎日1万人の子どもたちに無償で配布しています。ミャンマーからの約100万人の難民がバングラデシュに越境してくる『ロヒンギャ問題』が起こった2017年にわれわれは、このクッキーの栄養を増量して20万人分お届けしました」

 「そのときは、当社社長の出雲充も現地入りしました。そして後日、これまでの活動を知った、日本の外務省や国連から、ロヒンギャ難民への支援で、何かできないだろうかとお話がありました」

バングラデシュなどで配布しているユーグレナクッキー(右)と緑豆=東京都港区、3月

 ―それで国連と事業提携を。

 「今年2月、国連機関の世界食糧計画(WFP)と当社が緑豆プロジェクトで、事業連携の覚書を締結しました。これは日本企業としては初めてのことです。100万人の難民がミャンマーから流れ込んで来ており、ロヒンギャ難民の食料支援のための事業です」

 ―具体的には。

 「WFPとの提携で、約5億5千万円のプロジェクト費用のうち、今回は約2億2千万円の活動資金を受領します。これで緑豆の栽培技術移転などいろいろな費用に充てます。同時に、WFPがロヒンギャ難民の情報をカードに登録し、難民が地域の小売店から食材を購入することができるシステムを構築し、彼らがそのカードを活用し、農家たちが作った緑豆を買うという仕組みをつくりました」

 ―なぜそこまで熱心に。

 「冗談ですけど、バングラデシュに行ったら恐ろしい伝染病があるから気をつけなさいと言われました。致死に至る病気が四つあって、ジカ熱、デング熱、マラリア、そして、ユヌス熱だと。そして、先ほど登場しました『ムハマド・ユヌス熱』にかかったら一番、深刻なことになるといわれました(笑)。私はユヌス熱にずうっとかかっているのでしょう。それほど、魅力的な人物です」

 ―今後の目標は。

 「社内で私の代わりにできる人が増えたら、バングラデシュ以外の途上国でも、緑豆プロジェクトを進めたい。これは私だけではなく、ユーグレナ創業者で社長の出雲も同じ思いを持っています。当社はそもそも、ユーグレナ(ミドリムシ)に秘められた無限の可能性を信じ、世界に栄養を届けたい、そんなことを目指している会社ですから」

 

さたけ・ゆうこう 1955年京都市生まれ。早稲田大卒業後、野村証券などを経て、2014年にユーグレナ入社。グラミンユーグレナの共同代表を兼任。

 

 (KyodoWeekly7月1日号から転載)

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