6月の映画

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「ゴジラキング・オブ・モンスターズ」(5月31日公開)☆☆☆☆

「怪獣映画を見た!」という気分になれる

 レジェンダリー・ピクチャーズ製作のモンスターバースの第3作。前作「GODZILLAゴジラ」(2014年)から5年後。極秘に怪獣の調査を行ってきた秘密機関モナークのエマ・ラッセル博士(ヴェラ・ファーミガ)らのたくらみによって、ゴジラをはじめとする太古の怪獣たちが目覚め、世界各地を襲う。その中には宇宙怪獣キングギドラもいた。

 全体のテーマは、人間と怪獣との共生、あるいは“神獣”としてのゴジラや怪獣たちなのだろうが、ひたすら暴走するエマの行動原理がよく分からない。というか、人間側の描写や設定があまりにも雑で閉口させられる。

 ただ、数ある日本のゴジラ映画にも、実はこうしたひどい話のものはたくさんあった。要は、怪獣映画とは、そうしたドラマ部分の欠点を忘れさせるようなインパクトが怪獣たちの描写にあるかどうかが勝負なのだ。

 その点、この映画は、監督のマイケル・ドハティのゴジラや怪獣たちへの熱い思いがあふれており、「怪獣映画を見た!」という気分にさせてくれる。怪獣たちのすさまじいバトルシーン中に、対ギドラ戦でのゴジラとモスラの共闘、ラドンと戦闘機との空中戦、あるいはそこに流れる伊福部昭、古関裕而の音楽など、日本のゴジラシリーズへの敬意が数多く見られるからだ。

 モンスターバースは、物語の設定やゴジラの造形も含めて、東宝のゴジラシリーズとは別物だと思っていたのだが、ここまでやられると、次回作(多分「ゴジラ対キングコング」)にもつい期待してしまう。

 

「アラジン」(6月7日公開)☆☆☆

名作アニメを27年ぶりに実写映画化

 自分の居場所を探す貧しい青年アラジンと、自由に憧れる王女ジャスミン、そしてランプの魔人ジー二ーの運命を描いたディズニーのアニメーション映画を27年ぶりに実写映画化。

 CGを多用した派手なアクションと魔術の描写、エキゾチックなロケーションにアクション派のガイ・リッチー監督らしさが感じられた。また、本来はラッパーでもあるジー二ー役のウィル・スミスが歌う「フレンド・ライク・ミー」は、さすがに乗りがいい。

 アラン・メンケン作曲の挿入歌の配列は「ホール・ニュー・ワールド」をはじめ、アニメ版から大きな変化はないが、今回はジャスミン(ナオミ・スコット)が歌う新曲「スピーチレス」が追加された。

 そして「王は男でなくともよい」「女性にとって結婚が最良の方法ではない」というニュアンスを含んだこの曲にこそ、アニメ版から27年という歳月を経た故の、女性の生き方の変化が象徴されている。いわばこの曲こそが今回の核なのだと感じた。

 

「X―MEN:ダーク・フェニックス」(21日公開)☆☆

X―MENシリーズの最終章

 若き日のプロフェッサーX(ジェームズ・マカボイ)やマグニートー(マイケル・ファスベンダー)を中心に、X―MENの結成前を描くところから始まった新シリーズの4作目で、今回が最終章となる。

 アポカリプスとの闘いから10年。ミュータントの一人ジーン・グレイ(ソフィー・ターナー)は、宇宙での事故によって、自身の中のダークサイドの力が増幅し、制御不能に陥る。仲間たちは何とか彼女を救おうとするのだが…。

 ミュータントたちの超能力をVFXを駆使して見せる「X―MEN」シリーズは、マーベル映画の嚆矢(こうし)として2000年から始まった長期シリーズ。

 とは言え、途中から登場人物が若返ったり、スピンオフ作品もあるので、全体的なストーリーのつながりや登場人物の相関関係などは分かりづらい。また、最終章としては、オールスターによる総括的な映画になった「アベンジャーズエンド・ゲーム」に比べると、地味な印象を受けるのは否めない。

 

「ある町の高い煙突」(22日公開)☆☆☆

世界一の大煙突を建設した人々

 明治時代末期から大正時代にかけて、茨城・日立鉱山の亜硫酸ガスによる煙害に対して、当時世界一となる大煙突を建設した人々の姿を描く。原作・新田次郎。監督・脚本は松村克弥。

 本作を見ると、国策・殖産工業に伴い、雇用などで地元も潤うが、同時に自然破壊や公害、事故なども発生するという、現代の原発と同様の縮図が明治時代にもあったことが分かる。

 そして、理想と現実のはざまで、企業と地元住民が一体となって事に当たり、より良い結末を得たという稀有(けう)な例が明かされる。

 新田次郎原作の映画は、1970年代後半にブームがあり「八甲田山」「アラスカ物語」「聖職の碑」と作られた。最近では「劒岳(つるぎだけ)点の記」がある。

 これらに共通するのは、実話を基に、極地や山岳地を舞台にして、世間からは黙殺されながらも何事かを成し遂げた、あるいは徒労に終わった無名の男たちを描くというテーマである。その点、本作は一種のハッピーエンドになっており、新鮮な印象を受けた。

 

「今日も嫌がらせ弁当」(28日公開)☆☆

娘にメッセージ弁当を作り続けた母

 ブログを基にした人気エッセーを映画化。舞台は八丈島。夫を事故で亡くしたシングルマザーに篠原涼子、その娘に芳根京子という配役。随分物騒なタイトルだが、実は反抗期で口もきかない娘に向けて、高校の3年間、母がメッセージ弁当を作り続けたというお話。裏を返せば、嫌がらせとは名ばかりの愛情表現に他ならない。本来、苦であるはずの弁当作りを、喜や楽に変える工夫が面白く描かれる。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly6月24日号から転載)

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