地域再生は「現場に解あり」 巻き込む力こそが奇跡生む

 

 ジャーナリスト出町譲氏が、月刊「潮」で、地域再生に取り組む全国各地の魅力的なリーダーたちを取材した、連載記事がこのほど、「現場発!ニッポン再興」(晶文社)にまとめられた。「リーダーはいかにして住民や行政を動かしたか」など地域再生の具体的な処方せんが描かれている。出町氏に自著を語ってもらった。(編集部)

 

 私は今回、取材した地域について、「歴史的な現場」と考えている。単なる地方の平凡な日常と片づけるわけにはいかない。なぜか。日本の人口減少は、人類史上経験のないスピードで進むからだ。今世紀末、つまりあと80年ほどで人口は5千万人となる見通しだ。

 こうした現場は、歴史的な舞台といえる。戦場や革命の現場にも勝るとも劣らない。人口が減れば、病院や学校、スーパーなどもなくなる。そうなると、働く場所もなくなる。少子化で小学校や中学校も統合され、子育てが困難となる。地震や災害のように建物が壊れるわけではないが“静かなる有事”と呼ばれる。

 さらに、世界に伝えるべき重要な意義がある。多くの世界の先進国は今後、少子高齢化の問題に直面するからだ。「課題先進国」の日本の現状は、世界の教訓になる。急ピッチな人口減少の中、反転攻勢するにはどうすべきか。

 「人口増」を前提に国づくりを進めてきた霞が関や永田町に、任せていても、解決法は見いだせないと、私は思う。国は過去50年近く、地方向けに100兆円近くを投じているが、事態は一向に改善しない。実は政府がもたもたしている間に、地方では現場が動き始めている。本書で取り上げた人たちは、現場で人口減少に直視し、具体的な行動を起こした。

 「曲がる器」の富山・能作さん、「やねだん」の鹿児島・豊重さん、「オガール」の岩手・岡崎さん、「流しの公務員」の愛知・山田さん…。それぞれ現場や仕事も違う。

 しかし、共通点がある。彼らは摩擦を恐れず、改革にまい進した。その戦いは、共感を呼び、周囲の人々を巻き込む。それが「奇跡」を生み出す。若い人がIターンしたり、閑古鳥が鳴いていた温泉街に観光客が殺到したり。そんな現場がいくつもあった。私はそれを見て、目頭が熱くなった。

 たんなる地域再生の事例集とは受け取ってもらいたくない。「現場に解あり」だ。

 役所は縦割りの仕事ではもう通用しない。親の介護が必要な家もあれば、子どもの引きこもりで悩むケース、さらに多重債務で苦しむ人…。地域にはさまざまな困りごとで悩む人がいるが、現場に根差して総合的に対応する必要がある。その意味で、「現場発のニッポン再興論」である。

 エコノミストの藻谷さんはこんな感想を寄せてくれた。

 「非常に感度の高い取材から生まれた“温故知新”の粒ぞろいなんです。これだけ多岐のジャンルにわたって、質の高い事例をセレクトして、きちんと取材をして書かれた本は貴重です。時と場所を超えて残すべき、地方創生の記録といえるのではないでしょうか」

 国や行政に頼らず、それぞれの地域、会社で一歩踏み出す。れが日本を変える近道だと考える。

【筆者略歴】

 出町 譲(でまち ゆずる)

1964年、富山県高岡市生まれ。早稲田大政経学部卒。90年に時事通信社入社。経済部やニューヨーク特派員などを経て2001年にテレビ朝日。ニュース番組でデスクを務める傍ら、東日本大震災をきっかけに著作活動を始めた。

 

 (KyodoWeekly6月3日号から転載) 

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