「本の森」インサイド財務省

読売新聞経済部著

●224ページ

●中央公論新社(税別1500円)

 

最新版の財務省事情

 

 財務省(旧大蔵省)ものの本は、この役所が不祥事を引き起こした後に出版されることが多い。昔は別にして順風満帆のときには取り上げられることはあまりない。

 今回、このような形で出版されたのは、大阪の森友学園の国有地払い下げ問題が契機となっている。権威が失墜したときにこそ政府を動かす財務省にスポットライトが当たるのだ。

 1990年代に入って「バブルの崩壊」「過剰接待疑惑」「大和銀行問題」「住宅金融専門問題」と次々に問題が起きた。そのころ毎年のようにどんな書籍が出版されたか、書名だけを抜き出す。

 「大蔵省の不覚」「賢人たちの誤算」「大蔵省『権力の秘密』」「検証大蔵省崩壊」「大蔵支配」「大蔵省はなぜ追いつめられたのか」といった具合だ。

 これらの大半は政策論ではなく組織論で人物に焦点が当たっているのが特徴だということ。 つまり、財務省はどんなところか、どんな人が働いているのか、何を考えているのか。そして、今回の本も同じ系譜で、人物の動きや考えを中心に財務省物語を書くという手法をとっている。

 本書は、読売新聞経済部が2018年6月から連載した記事をまとめた。連載中も感じていたが、感想は「カッコよく描きすぎているのではないか」というものだ。書き出しからそうだ。「不世出の官僚」というタイトルが付いて、亡くなった財務省事務次官の話から始まる。組織論を個人に焦点を当てて書くと必然的にそうなる。

 とはいっても、多くの記者が組織力を使って取材し、最新の材料を集めたので、財務官僚の考えや行動が分かって面白かった。

 いくらネットの時代とはいってもこういうのは、個人のジャーナリストや専門家では無理な話で組織力や機動力のある新聞社でなくてはできない。久しぶりの最新版の財務省事情といったところだ。霞が関の中央官庁で一つの省を取り上げて、1冊の本にできるというのは財務省以外にはない。

 いくつか注文がある。消費増税については、国家財政を背負った財務官僚は頑張っているという書きぶりだが、果たして増税は今必要なのか?

 また、デフレがこんなにも長く続き日本経済が低迷している現状について財務省の責任はないのか、官僚はどう考えているのか、そういうことの記述や描写がない。財務省の本流である財政や税制を担当する局の部分は詳しい。

 だが、それ以外の、例えば国際金融や国の財産などを管理する部署は表面をなぞっただけでもの足りなかった。続編があれば期待したい。

(北風)

 

(KyodoWeekly6月3日号から転載)

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