5月の映画

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「アベンジャーズ エンドゲーム」(4月26日公開)☆☆☆☆

完結編にふさわしい内容

 「アベンジャーズ」の第4作でシリーズ完結編。前作「アベンジャーズインフィニティ・ウォー」で、宇宙最強の敵サノス(ジョシュ・ブローリン)によって、ヒーローたちを含めた全人類の半分を一瞬で消し去られたアベンジャーズ。残されたメンバーたちが世界や仲間を救うため、再びサノスに戦いを挑む姿を描く。新たにキャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)が参戦。監督は、前作に引き続きアンソニー&ジョーのルッソ兄弟が務めた。

 敗北からの再起、タイムトラベルを使った過去の清算、懐かしいあの顔この顔の登場、そしてオールスターによるまるで忠臣蔵を思わせるような展開…。多少雑なところもあるが、過去に戻ることで過去作を復習することができるし、シリーズを見ていれば見ているほど、ニヤリとするようなネタも満載。「アイアンマン」から11年、「アベンジャーズ」から7年という時の流れを思うと感慨深いシーンも多い。完結編にふさわしい内容だ。

 

「初恋 お父さん、チビがいなくなりました」(5月10日公開)☆☆☆

結婚50年の老夫婦の行く末は…

 結婚50年を迎えた老夫婦(藤竜也、倍賞千恵子)の飼い猫のチビが突然いなくなる。それを機に夫婦間の溝があらわになり、妻は離婚を考え始めるが…。

 西炯子(にし・けいこ)の人気漫画を小林聖太郎監督が映画化。「毎日かあさん」や「マエストロ!」でユニークな家族と隣人たちの姿を丁寧に描いてきた監督ならではの映画に仕上がっているが、今回は倍賞と藤という、若き日のかわいらしさとダンディーさの残り香を漂わせる2人を得たことが本作のポイントになっている。そして映画を見終わると、長いタイトルにもそれなりの意味があることに気付くことになる。

 藤が演じた、家のことはなにもしない、無口でええかっこしいの昭和のおやじはいまや絶滅危惧種だろうが、この後、2人はどうなる…と考えさせられるラストシーンが余韻を残す。欧米に比べるとベテラン俳優の活躍の場が少ない邦画界にあっては貴重な1本。2人の間に波紋を起こす昔なじみの女性を演じた星由里子の遺作となった。

 

「アメリカン・アニマルズ」(17日公開)☆☆☆

実際の犯人たちが劇中に登場

 米ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは、自分たちが普通の大人になりかけていることにいら立ちを感じていた。そんな中、2人は大学図書館に保管されたオーデュポンのビンテージ画集を強奪することを思いつき、新たに2人の友人を仲間に引き込む。

 “何かでかいこと”を探す若者たちが、犯罪映画を参考にしながら計画を立てたという、実際にあった強盗事件の経緯を描く。

 監督・脚本は本作が監督デビュー作となったバート・レイトン。もとはドキュメンタリー映像の作家ということで、実際の犯人たちが劇中に登場して証言をするという、劇映画とドキュメンタリーを融合させた手法で見せる。そこから、本人と演じている俳優たちがオーバーラップする面白さ、あるいは、証言の食い違いによって、一つの出来事を異なる視点で見せる面白さが生まれたが、では劇映画とドキュメンタリーの境界とは何なのかを考えさせられるところもある。

 

「アナと世界の終わり」(31日公開)☆☆

ミュージカルとゾンビが融合

 クリスマスを迎えたイギリスの田舎町に突如ゾンビが出現。さえない日常を送る高校生のアナは、日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、仲間たちと共にゾンビに立ち向かっていく。

 闘いの最中に、本格的なミュージカルさながらに、アナたちが歌うシーンが挿入されるという、青春コメディーとミュージカルとゾンビを融合させた珍品。常々、ホラーとコメディーは紙一重だと思っていたが、また新たな切り口のゾンビ映画が現れた。

 なぜゾンビという題材はこうも映像作家たちをとりこにするのか、と考えてみると、比較的低予算で作れ、メーキャップに凝るなど“遊び心”も発揮できる。何より非日常が描け、ゾンビをいくら“退治”しても殺人にはならないから、激しいバイオレンス描写も許される。また、作り方によっては隠喩やメッセージを込めることもできるなど、いろいろな理由があるだろう。その意味では、本作もゾンビに仮託した青春映画ということもできる。

 

「長いお別れ」(31日公開)☆☆☆

認知症の父と家族との7年間

 元中学校校長の昇平(山崎努)の70歳の誕生日。久しぶりに帰省した2人の娘(竹内結子、蒼井優)に、母の曜子(松原智恵子)は、父が認知症になったことを告げる。ゆっくりと記憶を失っていく昇平と家族との7年間を描く。原作は「小さいおうち」の中島京子。監督は「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太。

 アメリカでは、認知症を、少しずつ記憶をなくしてゆっくりと遠ざかっていく様子から、「ロング・グッドバイ=長いお別れ」と表現する。原作のタイトルはそれにちなんでいる。

 本作の、認知症の患者を抱えながら、笑って泣いて前に進む家族の姿が、現実とはかけ離れ過ぎていて甘いという見方もできるが、では、映画でも悲惨で厳しい現実を見たいか、あるいは見せる必要があるのか、せめて映画の中では…という二律背反する思いを抱きながら見た。

 変化していく老人を見事に演じた山崎はもちろん、松原が演じたような母の姿が本作を支えていると感じた。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly5月27日号から転載)

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