「落語の森」江戸っ子

 「江戸っ子は五月の鯉(こい)の吹き流し口先ばかり腸(はらわた)はなし」と振ってから入るのが「三方一両損」。江戸っ子の「宵越しの銭は持たねェ」という了見を端的に表した噺(はなし)。学生時代に聴いた新宿末廣亭での立川談志師のこの噺、カッコ良かった! 立て板に水のたんかに憧れて演(や)った。先輩から「談志さんそっくりだな」と言われ、得意になっていた。サゲの「多かァ(大岡)食わねェ、たった一膳(越前)」がバカバカしくていい。

 その談志師の墓を4月半ばに詣でた。孫弟子に当たる立川吉幸師の真打ち昇進パーティーに出席した翌日のこと、文京区の根津神社に近い浄心寺。談志師が愛した「八重垣煎餅」の店に寄って、三遊亭圓朝師の眠る谷中の全生庵から、ほど近い「ねぎし三平堂」へも。

 「大工調べ」のたんかもスカッとする。先代小さん、古今亭志ん朝、先代(五代目)春風亭柳朝、談志の各師が見事な高座を見せてくれた。盛り上がりに欠け、「大工は棟梁(とうりょう)(細工は流々)」のサゲも分かりづらいため、後半は演らずに前半で終えることが多い。

 「強情灸(ごうじょうきゅう)」は江戸っ子の美学「やせ我慢」を楽しく描いた噺。灸を据(す)えた小さん師の顔がだんだん赤くなっていくシーンは、毎回うなった。

 「三軒長屋」も鳶(とび)の女房、ケンカ好きの若い衆が登場し「江戸っ子ワールド」をにぎやかに見せてくれる。古今亭志ん生師・三遊亭圓生師・小さん師から志ん朝師・談志師などに伝わった。長い噺なので「上」を小さん師、「下」を圓生師とリレー落語の高座もあった。どんでん返しのサゲがナントも心地いい。

 「天災」はやはり、小さん・談志両師の印象が強い。おっとりしゃべる先々代(六代目)の春風亭柳橋師の演じる心学の先生・紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)も良かった、と今回これを書くに当たって思い出した。上方の桂ざこば師も見事に聴かせてくれる。

 「そば清(せい)」、いかにも江戸の噺っぽいが、元は上方の「蛇含草(じゃがんそう)」だという。先代(十代目)金原亭馬生師が気持ち良さげにそばを食べるシーンを演っていた。これを「蛇含草」で演っていたのが、先々代(三代目)桂三木助師。林家木久扇師は最初の師匠である三木助師の型「蛇含草」で演り、「餅の食べ分け」を見せてくれている。

 「酢豆腐」は江戸っ子が嫌味な若旦那をからかう、先代(八代目)桂文楽師の噺。「銭はないけど刺身は食う」「もちりん」「すんつァん」などのステキなフレーズが忘れられない。

 「文七元結(ぶんしちもっとい)」、歌舞伎にもなった圓朝師の傑作。理想の江戸っ子を描いた人情噺。見ものは、娘を吉原に売った50両を吾妻橋から身投げしようとする見ず知らずの男にやってしまうシーン。圓生・先代正蔵・志ん朝・談志の各師がそれぞれ工夫して、ドラマチックで魅力的な高座を見せてくれた。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly5月27日号から転載)

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