「本の森」吉沢久子家事レポート50年

吉沢 久子著 ●228ページ ●新潟日報事業社(税別1400円)

家事の意味を問い直す

 

 新元号が「令和」と発表になる約1週間前。大正、昭和、平成の世を生き、女性のライフスタイルを提案してきた生活評論家、吉沢久子さんが亡くなった。101歳だった。

 料理番組への出演や執筆活動、講演など幅広く活躍し、近年では老いと向き合うことを語った書籍を数多く出版。新潟日報紙で連載した「家事レポート」は1967年から半世紀以上続き、弊社でも2017年、連載50年を記念し「吉沢久子家事レポート50年」を発刊させていただいた。同書の扉には、日だまりの中穏やかにほほ笑む吉沢さんの写真とともに、次のような言葉が記されている。

 「『家事レポート』は私にとって日記のようなもの。50年間の連載が本になって、今は幸せでいっぱいです」

 半世紀続いた連載を振り返ると、時代の移り変わりが見えてくる。本書の中からいくつか紹介し、哀悼の意としたい。

 「電波で料理する」(1967年)―今では生活必需品となった電子レンジだが、当時は未知の存在。東京のデパートで店員に「使ってみるとビリっと来ることがないのかしらねェ」とつぶやくお客さんの姿が微笑(ほほえ)ましい。吉沢さん自身も冷ごはんや酒のおかんなどに使ってみて、効果を実感。婦人会主催で製品テストをしてはどうか、と提案している。

 「横井庄一さんのこと」(1972年)―終戦から28年。グアム島で日本残留兵が発見されたことに、国内外が大きな衝撃を受けたことは、戦争を知らない世代の私とて容易に想像ができる。まして戦時中を過ごした吉沢さんにとっては、「深く深く考えさせられる」出来事だった。 さらに吉沢さんを驚かせたのは、横井さんの所帯道具。誰に見せるわけでもなくジャングルで独り過ごしていたにもかかわらず、鍋はきれいに磨かれ、包丁は使い勝手よく形を整えている。生きる姿勢を称賛しつつ、「家事の意味を、もう一度自分に問い直してみる」と結んだ。

 「おソメさんと万作さん」(1982年)―まずタイトルの付け方が秀逸。吉沢さんのセンスを感じる。おソメさんと万作さんは知人の老夫婦の話。幼いころから同じ山村で年を重ね、ともに歩んできた。そこで終わればただの昔話だが、当時の都会の状況を憂い、次のように述べている。

 「老いて茶飲み友達のほしいだけの気持ちも若い家族たちによってゆがめられる場合がある。急速に高齢化にすすむ今の日本で、若い人も自分の明日の問題として考えてほしいところである」。37年前の吉沢さんの問題提起に、現代日本は応えられていない。

(新潟日報事業社出版部 販売担当 河村 正明)

 

(KyodoWeekly5月20日号から転載)


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