「口福の源~食料」離島で地産地消味わう

長崎県西海市平島を訪問した筆者(左)=2018年9月

 わが国は、6852の島々から成り立っている海洋島嶼(とうしょ)国家であり、そのうち、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を除く6847がいわゆる離島だ。ただ、その中で人が住んでいる島は416を数えるにすぎず、その約4分の3にあたる304が離島振興法など五つの離島関係地域立法の対象となっている。

 これら304の離島について見てみると、面積はわが国の国土の2%にすぎないが、海岸線延長はわが国全体のほぼ4分の1を占めている。一方、離島全体の人口は約61万8千人であり、わが国の人口の0・5%に届いていない。人口規模別にみると、500人未満の離島が304の73%強を占めている。

 上記のように、面積や人口のシェアでみるとわずかにすぎない離島であるが、その国家的役割には大きなものがある。

 まず、国境、領土や領海、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を確保し、海洋資源を守っている。ちなみに、わが国のEEZと領海の面積は447万平方キロメートル(世界第6位)であるが、これは離島の存在により、本土のみに比べて約2倍となっている。密漁や密航の監視などで海の治安を守っているとともに、海難救助や緊急時の船の寄港など海の安全確保にも寄与している。

 このように、国家的役割が大きく、また近年それがクローズアップされつつある離島であるが、人口の推移をみると、一貫して減少し、その減少率は全国はもとより、過疎地域と比べても大きいものとなっている。

 こうした中で、離島の産業の状況に目を転じると、どうしても第2次産業や第3次産業が伸びる原動力に乏しく、第1次産業が就業者こそ大きく減少してきているものの、全国平均と比べると高いものとなっている。

 第1次産業のうち、四方を海で囲まれている特性を生かした水産業の生産額をみると、離島はわが国全体の8%程度を占めているが、水揚げ量は年々減少傾向にあり、生態系への配慮や過剰な漁獲の防止など、水産資源の適切な保全・管理が求められている。

 一方、第3次産業の枢要をなす観光について見てみると、離島の観光客数はピーク時に比べて大幅に減少し、延べ宿泊者数も同様の傾向にある。

 しかし、世界自然遺産の屋久島や小笠原諸島、世界ジオパークに認定された隠岐諸島、国立公園に指定された慶良間諸島や奄美群島、100万人の来場者を集めた瀬戸内国際芸術祭など、近年離島の観光に注目が集まっている面もある。

 離島の中には、観光客数が伸びているところもあるが、全般的にみると、日帰りが多く、宿泊や飲食などの観光消費額の増加に直結しないという側面が見受けられる。離島に渡るには航路や航空路を利用せざるを得ないが、これらの運賃が非常に高額となっていることが離島の観光にとって最大のネックとなっている。

 航路についてみると、定期船などの運賃はJR運賃の3倍、高速船の料金は在来特急や新幹線以上の高額である。現在、航路運賃の住民割引は行われているが、観光客向けの割引はほとんど整備されていない。離島は海上輸送に頼らざるを得ず、高額な運賃負担は、観光のみならず、離島産品出荷や生活必需物資・資機材の調達にもネックとなっている。

 もう少し、離島の現況をみてみよう。離島の教育については、学校が少ないため、本土や他の離島に通わざるを得ない離島があり、これに伴い、通学や寄宿にかかる費用負担の軽減が課題となっている。また、高等学校などがある離島については、その教職員の充実が課題となっているが、定数決定などに対して、離島の特殊事情が十分に反映されていない実情がある。離島の学校を存続させるために、近年、離島留学(小中学生が離島に1年単位で移り住み、離島の学校に通う)に取り組む離島が増えてきており、さらに高校での取り組みに広がりを見せている。

 最後に、離島の情報通信環境にふれておきたい。陸路で渡れないという離島の地理的ハンディを克服するため、産業振興、医療、教育、防災面などにおいて不可欠な光ファイバーなど高速通信網の整備や、携帯電話不感地区の解消が求められている。

 ブロードバンド(高速大容量)の整備率は、99・4%と利用可能世帯の割合が高まってきており、これを活用した離島地域の活性化事例も見受けられるようになっている。

 例えば、沖縄県の与那国島では、2011年秋から情報通信技術(ICT)を利用したオンライン双方向授業を行っており、こうした取り組みは各地の離島で広がりを見せている。12年4月に開所した鹿児島県奄美大島の「奄美市ICTプラザかさり」には本土のIT企業が立地してきている。

 これまで、離島の現状と課題について俯瞰(ふかん)してきたが、このまま手をこまねいていると、「日本の未来予想図」ともいうべき人口減少と高齢化の影響で、相当数の離島の地域社会が疲弊していくことになりかねない。

 そこで、離島らしき産業である水産業と観光業のコラボレーションを図ること、つまり離島で捕れた魚を食べてもらうために離島に来てもらうという「地産地消」の取り組みに希望を見いだせないかと考える。

 こうした取り組みは既に愛知県南知多町の日間賀島(ひまかじま)などに先例があるが、全国の離島の美味には枚挙にいとまがない。それをこれから、コラム「口福の源」で具体的に紹介していきたい。

 

【筆者紹介】小島 愛之助(こじま・あいのすけ) 1953年東京都生まれ。慶応大卒業後、旧経済企画庁(現内閣府)に入庁し、国土庁離島振興課長、内閣府経済社会総合研究所次長を経て2015年から日本離島センター専務理事。

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 「日本離島センター」とは、1966年2月、離島振興の推進に当たっての拠点組織として、(全国離島振興協議会を母体に)設立された公益財団法人である。北は北海道礼文町から南は沖縄県与那国町まで、離島振興関係5法の指定有人離島を有する137市町村で組織されている。離島地域における自主的・創造的な振興活動の推進と支援を行いつつ、離島と本土、離島相互間の交流推進と相互理解のための業務をはじめとして、広く国民に離島の実情を理解してもらうための各種事業を実施している。

 

(KyodoWeekly5月20日号から転載)

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