「風のたより~地域経済」抱える課題こそ地域の宝に

 地域づくりに挑む団体にエールを送ろうと、共同通信と地方新聞46紙が設けた「地域再生大賞」は2018年度、第9回を迎え、今年2月に表彰式・シンポジウムを開いた。立ち上げから携わってきたが、時代とともに各団体の活動の重みは増していると感じる。キーワードは「ビジネス化」だ。

 大賞となった「多言語センターFACIL」(兵庫)は、阪神・淡路大震災で、外国出身者へ情報提供をしたことをきっかけに、行政や医療現場で通訳や翻訳を続けてきた。約60言語に対応する約1200人の登録者があり、映像制作や研修にも活動を広げている。約10人のスタッフを抱え、外国にルーツを持つ住民の立場からの提言や提案に力を入れていることが特色だ。

 準大賞の「いけま福祉支援センター」(沖縄)は、古里の池間島で最後まで暮らしたいとの高齢者の願いをかなえたいと、主婦グループが介護施設を開いた。民泊事業も始め、高齢者の経験を修学旅行の学生に伝えている。高齢者にとっては収入を得られるだけでなく、学生とのふれ合いが生活の張りとなり介護予防にもつながるという。

 いずれの団体も、地域課題を解決する取り組みを、経済的に成り立つ事業に「変換」した。FACILの吉富志津代理事長は、シンポジウムで「多言語の翻訳・通訳をコミュニティービジネスにした」と説明。いけま福祉支援センターの前泊博美理事長も「高齢者が主役で持続可能な事業」を目指したと話した。すばらしい活動でも、先立つものがなくては続かない。そのハードルを越える知恵こそ、これからの地域づくりだと示している。

 もう一つの準大賞「きらりよしじまネットワーク」(山形)の高橋由和事務局長は「地域も営業しないと」と指摘する。農村の全世帯参加のNPO法人として、ワークショップや小委員会を組織しての活動は企業顔負けだ。損益分岐点や費用対効果といった用語を駆使し語る姿からは、地域マネジメントを目指す熱意が伝わってくる。

 少し前まで地域おこしといった言葉で語られていた地域づくりは、メンバーのボランティア精神や行政の補助金が支えていた。

 しかし、行政は財政や職員が削られ、従来のような対応は難しくなってきた。一方、一極集中と人口減少の進展で地方を取り巻く環境は厳しさを増し、都市部でも空き家など新たな課題が生まれてきた。いや応なしに地域づくりは変化を迫られている。

 FACILなどが挑んだコミュニティービジネスは答えの一つだろう。鍵は売り上げや利幅といった従来のビジネス基準から、いったん離れることだ。若者ではなく外国人や高齢者をパートナーとしたことは、経済合理性からすれば不利のように見える。しかし、だからこそ、ほかの企業にはないアイデアが生まれ、事業につながった。

 根底には、ともに楽しく暮らしたいとの思いが流れている。課題は負債ではなく宝となり得るのだ。互いにできることを探し、挑むことが地域経済の次の時代を開く。しかも、東日本大震災以降、人の役に立ちたいと考える若者は確実に増えている。地域再生の可能性は大きく広がっている。

(共同通信企画委員 伊藤 祐三)

 

(KyodoWeekly4月29日・5月6日号から転載)


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