「本の森」《受胎告知》絵画でみるマリア信仰

高階 秀爾著

●189ページ

●PHP新書(税別920円)

 

欧州旅行前にぜひ一読を

 

 ロバは旅しても馬になって帰ってくるわけでない。西洋のことわざである。ロバが馬になるわけがないのにどうして…。 その解釈はさておき、4月から5月の大型連休は、人によっては10日間もある。多くの人が欧州まで足を伸ばすことだろう。欧州に行くと、なぜか急に美術館に出掛ける。そこで目にするのは圧倒的な数の宗教画だ。

 しかし、キリスト教に関心も興味もない多くの日本人には何を描いているのか理解できない。だから素通りして、分かりやすい世俗的な近・現代絵画のコーナーに向かう。目の前に宝物があるのに、もったいないことではないだろうか。

 本書は、日本人にはなじみのない宗教画の「受胎告知」の場面を描いた絵画を解説したものだ。空から天使が舞い降りて、聖母マリアにイエスを身ごもったことを告げるシーンだ。宗教画の中でも最も頻繁に取り上げられる主題である。10世紀末から18世紀初頭まで、つまりロマネスクからバロックまでの様式の時代に、この場面を描いた48点を解説している。同じテーマなのに画家によって実にさまざまに表現されていることに驚く。

 また時代によって表現様式が違うことにも本書を読むと分かる。共通しているのは、絵画に描かれる小道具だ。例えば、ユリの花、書物、ハト、オリーブなど。ユリは天国の花で生命や光、書物は知恵の象徴である。こういう分野を扱うのを図像解釈学という。著者はそういうことを分かりやすく説明する。それだけでも読むに値する。「受胎告知」を通してごく簡単な西洋美術史も学べる工夫もされている。

 図像解釈学の簡単な手引き書としては「絵画を読む」(日本放送協会、若桑みどり)が文句なしに有益である。カラバッジョの「果物籠」からブリューゲルの「バベルの塔」までを取り上げている。宗教画も多い。さりげなく画面に描かれる砂時計、どくろ、枯れた花、虫が食った果物など、それぞれに意味が込められていることを知れば目からうろこが落ちる。

 もちろん、この中には高階が取り上げたアンジェリコの「受胎告知」も含まれている。

 高階の本はわずか200ページ足らずの新書で、文章は簡潔で読みやすい。数時間で読了できるだろう。解説している絵画はすべてカラーで見ていて楽しい。これを読めば宗教画にも親しみが持てるはずだ。

 美術館内で素通りしていた宗教画にも少しは目が行き、立ち止まる。大型連休で欧州に出掛ける人はぜひ一読を。モネやマネやフェルメールばかりが、西洋絵画ではない。(敬称略)

(北風)

 

(KyodoWeekly4月22日号から転載)

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