「落語の森」○○にちなんだ噺

 まずは「鰍沢(かじかざわ)」、三遊亭圓朝師の三題噺(ばなし)の名作。三題噺とは、江戸落語の祖・初代三笑亭可楽師が始めたとされる噺、お客から無関係の三つの題をもらい、即座に噺に仕立てるというもの。「鰍沢」では、「小室山・玉子酒・熊の膏薬(こうやく)」の三題ということになっているが諸説ある。現在の山梨県身延町にある日蓮宗の総本山、身延山久遠寺(くおんじ)を参詣した旅人が登場する。ドラマチックで大きな噺、演(や)り手が多いのもうなずける。こんないい噺なのにサゲはくだらない、即興でつくった噺、無理もない。

 「甲府い」、これも身延山久遠寺がらみの噺。折しも今年は武田信虎公が躑躅ガ崎(つつじがさき)に居を構えて500年。JR甲府駅前に大きな銅像が鎮座する。開府500年の今年4月6日に開催された、「信玄公祭り甲州軍団出陣」は盛り上がった。筆者も40数年前、一兵士として出陣した。「甲府い」、入船亭扇辰師が達者な高座を見せてくれる。

 「堀の内」は、東京都杉並区堀ノ内3丁目の日円山妙法寺が舞台。先代(十代目)桂文治師や橘家圓蔵師がよく演っていた。三遊亭小遊三師のあわて者の亭主のドタバタぶりが笑える。

 「百川(ももかわ)」は、日本橋浮世小路(現在の東京・日本橋室町2丁目)に実在した名代の懐石料理の店。安政元年、黒船を率いたペリー米提督に料理を出したこの店の宣伝用の「日本初のCМ落語」だという。三遊亭圓生師のあと、柳家小三治師のとぼけた主人公が楽しい。

 「品川心中」は廓(くるわ)噺。上、下にわたる長い噺だが大概は上で切っている。昔、圓生師が通しで演ったのを聴いたことがあるが、それ以後は覚えがない。この噺と「居残り佐平次」などを下敷きにした川島雄三監督の「幕末太陽伝」という名作映画がある。

 「松山鏡」は先代(八代目)桂文楽師の得意ネタ。「鏡のない越後の松山村」が、舞台の民話のような味わいのある噺。登場人物がみんな、善人。「伊予の松山」という説も。

 「王子の狐」は、人をばかそうとしたキツネを逆に人がばかすという艶っぽくもなんともない噺なのに戦時中「禁演落語」に指定された不思議な噺だ。晩年の高座で古今亭志ん生師、ネタ出しで「二階ぞめき」としておきながら、しゃべりはじめたら「王子の狐」になってしまった。「大方、キツネにだまされたんだろう」と楽屋の人々。

 「愛宕山」も文楽師の十八番(おはこ)、幇間(たいこもち)の一八ッツあんが谷底から、はい上がろうと着物を割いて、竹に巻きつけ力いっぱいたぐろうとするシーンは、相当体力がいる。つい先日この噺を演った立川談幸師は翌日、筋肉痛にみまわれた。

 「紀州」は、地噺、演者のセンスが全て。八代将軍を決める際のエピソード。圓生師や先代(十代目)金原亭馬生師のがよかった。「花筏(はないかだ)」はお相撲さんの噺、元は上方ダネらしい。次期落語芸術協会会長の春風亭昇太師の「花筏」が楽しい。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly4月15日号から転載) 


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