「パー会議」で会話力向上を ブレーンストーミングを楽しむ

 会話が少なくシーンとした職場。一見整然とした職場で仕事に集中し、生産性も高いと思われがちだが、これが〝くせもの〟。かえって職場のコミュニケーション不足がストレスとなり、仕事の効率性も下がりかねない。こんな職場にはアイデアを出し合い、手軽に会話を楽しむ「パー会議」がお勧めだ。

 

 あなたは、1日でメールやLINEなどでの文字のやりとりと、口から声を出す会話でのやりとりとどちらが多いですか?職場で隣の人にでも、メールで用件を伝えることに何の抵抗もない、口から言葉に出すことが苦手な若い世代が増えている。 脳神経外科専門医の築(つきやま)山(つきやま)節(たかし)氏(公益財団法人河野臨床医学研究所附属北品川クリニック・予防医学センター所長)によると、話さないことが多くなると、脳の音声認識の機能がフリーズし、人の話を聞かなくなってしまうという。これでは職場の意思疎通もうまくいかず、生産性も上がらない。

 そこでお勧めしたいのが、普段の悩みをメンバーで共有し、その解決策をみんなで考えアイデアを出し合う「パー会議」である。

 パー会議は、神奈川・鎌倉の市民活動である「カマコン」が実践しているブレーンストーミング(以下ブレスト)がその源流。カマコンでは毎月100人程度が集まって、3~5組が、街を良くするアイデア募集のプレゼンテーション(以下プレゼン)を行う。参加者は7~8人の小グループに分かれて約20分程度のブレストで60~80個のアイデアを出す。

 カマコンでのブレストには二つのルールがある。一つは「人のアイデアに乗っかる」。これは、人のアイデアにさらにアイデアを加えることから、自分では考え付かないアイデアが出てくることと、アイデアは特定の「誰か」が出したものではなく、みんなのアイデアといった認識になり、チームワークが良くなることだ。

 もう一つはアイデアの質は問わず、とにかくたくさんのアイデアを出す、というように量に集中する。そうするうちに頭の中がポジティブな発想になり、アイデアに対する取り組みが人ごとではなく、ポジティブな〝ジブンゴト〟になる効果がある。

 このカマコン活動のプレゼンを省略して、ブレストのエッセンスだけを残し、カマコン・ブレストの効果を楽しむのがパー会議である。

 パー会議名付け親のカマコンの宮田正秀氏によると、「パー」の意味は、自分が「グー」っと握っている悩みを、みんなに「パー」っと公開して、その悩みを解決するアイデアをブレストで募るところから名付けたそうだ。

 進め方は最大4~5人の小グループで車座になり、一人一人が今の悩みをメンバーに打ち明け、それを解決するために出してほしいアイデアのテーマについて話す。一周したところで、今度は一人一人のテーマについてカマコン・ブレストを行う。ブレストの前には、その人の悩みについての質疑応答の時間を数分設け、ブレストに入る。これはブレスト中に質問や意見などで時間を取られないようにするためである。

 最後にブレストのテーマを出した本人から自分が一番いいと思ったアイデアをみんなの前で発表し、出されたアイデアを実行するためのベビーステップ(まず最初の一歩)をみんなに宣言する。

 私はこのパー会議を職場や教育現場での会話力向上に活用している。職場では形式的な会議に陥りやすい場面をパー会議で足慣らしをすることで、参加者の発言レベルもぐっと改善される。

 また、授業の初めにパー会議を導入することで、受け身になりがちな授業態度も、能動的に変化させることが可能となる。

 私が勤務する東北メディカル学院は、4年制の医療専門学校で、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)の国家資格を目指す意欲にあふれた優秀な学生であるが、1年生はまだ緊張気味で言葉も重い。

 そこでこの1年生に自分の悩みをテーマにパー会議を授業に取り入れてみた。教室設備の関係上、机を挟んでブレストになったが、パー会議効果が働き、笑顔あふれる和気あいあいとした授業が実現できている。

 パー会議を経験した生徒へのアンケート結果(受講生46人、回答40人、回収率87・0%)をここで紹介しよう。まず、主な悩みには「朝起きるのがつらい」「勉強するので自由時間がない」といった内容がある。これに対して「パー会議でブレストすることの効果は?」との問いに、29人(72・5%)が「ブレストしたグループのメンバーとの関係が深まった」と答えている。 さらに「講義前にパー会議をすることが有意義か?」との問いに対しては、回答者全員が「意味がある」と答えている。その理由として「勉強のこと以外で、今まであまり言葉で話す機会がなかったので有意義だった」など、普段「言葉で話す」というコミュニケーションがいかに少ないかがうかがわれる。

 このパー会議のブレストでは強制的に多く「話す」ことが、授業を受ける学生に能動的な姿勢を促す効果があると言えよう。

 職場でも定期的にパー会議を開催することで、脳が活性化され、普段の対話不足による意思疎通の障害も解消できる。あなたの職場も、新年度を機にパー会議で会話の重要性を見直してはいかがだろうか。話せば会話の効用が分かる、「話せば分かる」のだ。

[筆者略歴]

植嶋 平治(うえしま へいじ)

学校法人臨研学舎東北メディカル学院専務理事、東北医療福祉事業協同組合参与、青山学院大学経済学部非常勤講師。1976年、大阪市立大商学部卒

 

(KyodoWeekly4月15日号から転載) 


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