レストラン列車、続々と出発 誘客の起爆剤に期待感

 車窓の景色を楽しみながら、沿線の食材を生かした料理を楽しめるレストラン列車が日本各地で広がっている。今年3月に福岡県内を走る第三セクター、平成筑豊鉄道と、私鉄大手の西日本鉄道がそれぞれ運行を始めた。鉄道をこよなく愛する〝鉄ちゃん〟記者が最新の動きをまとめた。(編集部)

 

まるでチャペル

 沿線の田園風景が映り込んだ深紅色の車体の観光列車が、かつて日本の主要な石炭産地だった筑豊地方を駆ける。平成筑豊鉄道が3月21日に営業運転を始めた「ことこと列車」は、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」を手掛けた水戸岡鋭治氏がデザインした。

 田んぼと山々が広がるのどかな景色に囲まれながら、福岡市の人気レストランのオーナーシェフ、福山剛氏が監修したフキノトウや新玉ネギなど旬の地元食材を生かしたフランス料理のコースを味わえる。

 2両編成の列車で、既存ディーゼル車両を約5千万円かけて改造。天井にステンドグラスをはめ込み、窓枠やついたてに組み木をあしらい、床に寄せ木細工を採用するなど木目を生かした車内はまるでチャペルのような雰囲気だ。

 土日と祝日に1日1本走らせ、料金は1人当たり1万4800円に上るが、平成筑豊鉄道の河合賢一社長は「6月上旬までの運行日はほぼ満席の状態だ」と滑り出しに手応えを示す。福岡県の小川洋知事は「大勢の皆さまの夢を乗せ、大いに親しまれ愛され、沿線地域の発展につながっていくよう力を結集していきたい」と意気込む。

平成筑豊鉄道が3月21日に運転開始の「ことこと列車」=3月12日、福岡県福智町

平成筑豊鉄道の「ことこと列車」の車内

 

車内の窯でピザ

 西鉄は既存電車を約5億円かけて改造し、天神大牟田線の西鉄福岡(福岡市)―大牟田(福岡県大牟田市)間を約2時間半かけて結ぶ「ザレールキッチンチクゴ」を3月23日に出発させた。

 沿線食材を生かしたタケノコやアスパラガスを用いたピザを車内に設けた窯で焼き上げ、福岡県柳川市産のノリを添えた博多和牛などとともに作りたてで提供する。料理は沿線の陶芸家らが手作りした器に盛り付け、季節ごとに内容を変える。

 3両編成に52席ある座席とテーブルは地元の大川家具職人が手掛け、天井や壁を瓦や、手編みの竹細工といった伝統工芸品で装飾している。

 西鉄の倉富純男社長は「料理も装飾も一つ一つに気持ちを込め、良い仕上がりになった」と自信を見せている。毎週金~日曜と祝日に昼食、夕食の両コースを設け、料金はそれぞれ1人8640円。6月1日に西鉄福岡から太宰府(福岡県太宰府市)へ午前中に向かってブランチを味わえるコースも追加する。もちもちのパンにソーセージを挟み、ゆずこしょうを利かせた福岡県久留米市の飲食店の人気メニュー「ゆずドッグ」を、オリジナルデザインの容器に入れたコーヒーとともに提供。料金は1人3240円で、「学問の神様」の菅原道真を祭った太宰府天満宮を参拝する旅行者らを呼び込む。

西日本鉄道の「ザレールキッチンチクゴ」の車内に立つ女性車掌=2月1日、福岡県筑紫野市

西日本鉄道の「ザレールキッチンチクゴ」に設けたピザを焼くための窯

西日本鉄道が3月23日に運行を始めた「ザレールキッチンチクゴ」の昼食と夕食で提供するピザなどの料理

 

鉄人のフレンチ

 一方、それぞれ九州新幹線と接続する新八代(熊本県八代市)と川内(鹿児島薩摩川内市)の間などを走るレストラン列車「おれんじ食堂」の新たなプランを3月16日に始めたのは三セクの肥薩おれんじ鉄道だ。

 同鉄道は九州新幹線が部分開業した2004年3月にJR九州の並行在来線を引き継いで発足した。東シナ海の大海原の車窓を楽しみながらこだわった料理を満喫できる「おれんじ食堂」を13年3月から運行している。

 目玉は沿線の鹿児島県出水市出身で、人気を集めたテレビ番組「料理の鉄人」に出演した坂井宏行シェフがプロデュースした昼食のコースだ。天然真鯛のスモークや、伊勢エビのロースト、和牛すね肉とタケノコのポトフといった沿線の豊かな食材をふんだんに生かしている。料金は大人が2万1千円、子どもが1万4千円。

 東日本大震災からの復興支援のため、JR東日本は八戸(青森県八戸市)と久慈(岩手県久慈市)をつなぐ八戸線を往復するレストラン列車「TOHOKUEMOTION(東北エモーション)」を13年10月から運行している。

 三陸海岸の絶景を眺めながら八戸から久慈への往路は地元の海産物を生かした料理を楽しめ、帰路は好きな菓子を自由に味わえるデザートビュッフェを設けている。

 今年4月6日~9月29日の19年度上半期は、日、月、金、土曜のそれぞれ一部で計78日間を設定した。JR東日本傘下のホテルメトロポリタン盛岡(盛岡市)のシェフが監修し、往復利用は大人1万1900円、子ども1万700円。

 

人気ドラマの舞台でも

 社会的反響を呼んだNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」が沿線で撮影された岐阜県の三セク、明知鉄道は、四季折々の地場産品の味覚を楽しめる食堂列車を運用している。4月から9月にかけて寒天を用いた懐石料理を提供する「寒天列車」、秋は地元で採れたキノコを味わえる「きのこ列車」、冬は滋養強壮や疲労回復に良いとされるジネンジョを賞味できる「じねんじょ列車」をそれぞれ走らせている。

 大手私鉄の西武鉄道は、東京都心部の池袋と「埼玉県の奥座敷」と言われる秩父市にある西武秩父を結ぶ電車「旅するレストラン 52席の至福」を16年4月から運行中。

 長野県の三セク、しなの鉄道は水戸岡鋭治氏がデザインして14年7月に運転が始まった観光列車「ろくもん」を主に長野と有名保養地の軽井沢(長野県軽井沢町)の間を走らせている。信州サーモンなどの地場食材を生かした同県小布施町の「鈴花(すずはな)」の日本料理を堪能できるコースや、信州ワインと洋食のコースなどを用意して人気を集めてきた。

 今年7月に5周年を迎えるのを控え、今後は繰り返し乗るリピーターの獲得強化が課題となる。そこで、四季それぞれの旬の食材を生かした料理を提供しているのを一段とアピールする方針。しなの鉄道の玉木淳社長は「春のろくもんに乗ったら、次は冬のろくもんも、というようにリピーターの獲得につなげられるといい」と意気込む。

 各地での取り組みについて、沿線の自治体や観光業からは、レストラン列車が旅行者を呼び込む起爆剤となり、地域の名産品も発信できるとして期待する声が広がっている。

明知鉄道の食堂列車を組み込んだ急行「大正ロマン号」=2018年10月、岐阜県恵那市

長野県上田市を走るしなの鉄道の「ろくもん」=2018年9月

しなの鉄道の「ろくもん」の車内=2018年10月、長野県内

[筆者略歴]

大塚 圭一郎(おおつか けいいちろう)

共同通信社福岡支社編集部次長。1973年生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒。97年4月に共同通信社に入社し、ニューヨーク支局、編集局経済部次長などを経て現職。優れた鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」の審査委員を務める

 

(KyodoWeekly4月8日号から転載) 


PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ