3月の映画

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

 「グリーンブック」(3月1日公開)☆☆☆☆

異なる世界に住む2人の変化と理解

 舞台は1962年。黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)とイタリア系白人のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)という、異なる世界に住む2人の旅の様子を、実話を基にユーモアとペーソスを交えて描いたロードムービー。

 コメディー映画を撮ってきたピーター・ファレリー監督が新境地に挑んだ作品でもある。第91回アカデミー賞では、作品、脚本、助演男優賞(アリ)を受賞した。

 本作が、これまでの白人と黒人によるバディムービーと大きく違うのは、互いが相手に対して抱くステレオタイプのイメージを崩しているところだろう。

 貧しく粗野なトニーが裕福で教養もあるシャーリーに向かって「俺の方がよっぽどブラック(黒人)だぜ」と言うシーンまである。

 そんな2人が旅を通して、互いに変化し、人種を超えて理解し合う様子が描かれる。モーテンセンとアリの好演に加えて、最後は“クリスマスの奇跡”まで見せられ、いい気分で見終わることができる。

 

「運び屋」(8日公開)☆☆☆☆

88歳イーストウッドのユーモアと余裕

 90歳のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、花の栽培家としては一流だったが、事業に失敗。仕事を口実にして顧みなかった家族からも見放され、孤独な日々を送っていた。そんなある日「車の運転さえすれば金になる」という話を持ち掛けられるが、それはメキシコの犯罪組織が仕組んだ、麻薬の“運び屋”の仕事だった。

 実年齢88歳のイーストウッドの監督・主演作で、集大成の感もあるが、同時に新たな展開も見られる。本作でもイーストウッド映画お得意の“善悪のはざま”が描かれてはいるのだが、いつもの暗くハードな雰囲気とは全く違う。主人公のアールは女好きで、機知に富み、スマートでひょうひょうとしているところがあるし、大金を手にして調子に乗る姿まで描かれる。イーストウッドと同年齢の山田洋次監督が「この主人公は、寅さんみたいな人かもしれない」と語ったというが、確かに、本作は落語のようなユーモアや余裕を感じさせる。

 

「ビリーブ 未来への大逆転」(22日公開)☆☆☆

女性弁護士が挑んだ“男女平等”裁判

 1970年代初頭。女性弁護士ルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)が挑んだ“男女平等”に関する裁判をクライマックスに、性別による差別が当たり前だった時代の風潮を描く。現在86歳のルースは現役の最高裁判事で、アメリカでは超有名人である。

 監督のミミ・レダーは、ルースを、単なる正義派、理想化肌の人ではなく、頑固で、ずるさや野心も併せ持った女性として描いているが、それは男性中心の映画界で長く仕事をしてきた自身とも重なる部分があったのだろう。

 また、あの時代に、共稼ぎによる育児や家事の分担、相手への理解と尊重といった、今では当たり前になったことを実践したルースと夫のマーティンとのユニークな夫婦関係も描かれ、ジョーンズに加えて夫役のアーミー・ハマーも好演を見せる。そして、ラストの、ルースの演説とその後の“奇跡”を見ると、やはりアメリカは、腐ってもデモクラシーの国だと感心させられるのだ。

 

「ブラック・クランズマン」(22日公開)☆☆☆☆

黒人がKKKに入団!?

 舞台は、1970年代半ばの米コロラド州コロラドスプリングス。この町で黒人として初めて刑事になったロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)が、白人至上主義を掲げる過激派団体KKK(クー・クラックス・クラン)に入団し、彼らの悪事を暴く。ロンいわく「俺は電話担当。代わりに白人刑事(アダム・ドライバー)が彼らと会う」という、実際にあったうそのような潜入捜査の様子を、コミカル味を交えながら描く。

 スパイク・リー監督は、本作では以前のように、主張や過激さを前面に出すのではなく、ファンキーな音楽やユーモアを交えながら、映画として面白く見せることに腐心している。

 特に物語を構成した自身を含めた脚本チームの仕事が素晴らしい。アカデミー賞で脚色賞を受賞したのも当然という感じがする。ただ、ラストで、最近の人種問題に関連した事件の実際の映像を挿入し、あえて“劇映画”としての体裁を崩した点には疑問を感じた。

 

「記者たち 衝撃と畏怖の真実」(29日公開)☆☆☆

イラクに大量破壊兵器は存在したのか?

 2003年、イラク戦争が勃発。大手新聞社が政府に迎合する中、唯一「本当にイラクに大量破壊兵器は存在するのか?」と異を唱えたナイト・リッダーの記者たちの動静を、実話を基に映画化した。

 今やイラク戦争は、01年の同時多発テロ後のアメリカを覆った異様な空気(愛国、報復、好戦)を巧みに利用して、政府が捏造(ねつぞう)した情報によって始まったとされる。

 このように、またもや過去の政府の失態を暴いた映画が登場してきたわけだが、こうした映画には、間接的ではあるが、今のトランプ米政権に対する反意が込められていると思われる。映画を使った告発、あるいは自己浄化は、アメリカ映画の長所である。

 ワシントン支局長役で出演もしたロブ・ライナー監督にとっては、「LBJケネディの意志を継いだ男」に続く社会派映画だが、今回は短くまとめ過ぎた感がある。それ故、事件の経緯が分かりづらくなり、記者たちが果たした役割や、事の重大さが伝わってこなかったのが残念だ。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly3月25日号から転載) 


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