「音楽の森」新感触が味わえる演奏

 今回は「行進曲」のCDをご紹介したい。しかも「日本の明治~昭和」のマーチである。本欄で初めてマーチを取り上げる理由は、これがロンドン・フィルハーモニー管弦楽団という世界有数のオーケストラによって演奏されているからだ。

 収録されているのは12曲。古関裕而の「オリンピック・マーチ」は前の東京オリンピックの入場曲、團伊玖磨の「祝典行進曲」は当時の皇太子・明仁親王と美智子妃のご成婚祝賀曲、古関裕而の「栄冠は君に輝く」は夏の甲子園の大会歌、レイモンド服部の「コバルトの空」はTBS、古関裕而の「スポーツショー行進曲」はNHK、黛敏郎の「スポーツ行進曲」は日本テレビの各スポーツ番組のテーマ曲で、どれもおなじみだし、瀬戸口藤吉の「軍艦行進曲」もあれば、高井達雄がリメイクした「鉄腕アトム」もある。

 これらの多くは、誰もが耳にしているであろう。古い世代にはとりわけ懐かしく、中学~高校時に吹奏楽を経験した者は思い出深いに違いない。しかし本作の魅力はノスタルジーだけでなく、冒頭に記したロンドン・フィルの演奏にある。

 ロンドン・フィルは、1932年に創設されたイギリス五大オーケストラの一角。ハイティンク、ショルティ、テンシュテットといった巨匠のもとで幾多の名演を繰り広げてきた名門である。本作は、楽曲に何の思い入れもない、逆に先入観もない彼らが、こうした音楽を演奏するとどうなるか?の答えが一つの妙味だ。ただ、さすがに指揮者は日本人。チェコを中心に活躍する武藤英明が受け持っている。

 結論から言うと「驚くほど違和感がなく、しかも新感触が味わえる演奏」だ。指揮者が日本人とはいえ、フレージングや歌い方に不自然さがなく、のびやかに堂々と歌われている。日本の団体の演奏と根本的なテイストが変わらず、日本の音楽特有の哀愁をも感じさせる。思えばロンドン・フィルは、2012年のロンドン・オリンピックで世界すべての国と地域の国歌を録音した楽団。それゆえ対応力は高い。だが一方でこの自然さは、日本のマーチの構造が世界的な普遍性を有していることの証しともいえるだろう。

 弦楽器の加入と相まった、しなやかなサウンド、クラシカルで気品を湛(たた)えた表現や、これまで隠れていた豊穣な魅力が浮き彫りにされている点は、特筆すべき新感触だ。例えば「軍艦行進曲」。パチンコ店のBGMや軍国主義とは無関係なこの演奏を聴くと、魅惑的な主題を用いて緻密に構成された名曲であることを実感する。

 懐かしむよし、元気をもらうもよし、新発見するもよし。平成が終わろうとする今、あえて古いマーチを見直すのも悪くない。 

(音楽評論家 柴田 克彦)

 

(KyodoWeekly3月25日号から転載) 


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