「落語の森」●●からの卒業

 「独身(ひとりもん)からの卒業」、珍しい与太郎さんの結婚噺(ばなし)。「ろくろ首」あるいは「ろくろっ首」、上方だと「ろくろく首」になる。さるお屋敷のお嬢さんと婿養子の口があると聞いた与太さん、喜んでお屋敷に行くとこれがたいへんにいい女! ところが夜になるとこのお嬢さんの首がスーっと…。上方の噺を三代目か四代目の柳家小さん師が東京に持ってきたらしい。人間国宝・五代目の柳家小さん師から門弟の立川談志師や柳家小三治師に伝わっている。若き日の談志師のスピーディーなこの噺を50年も前か、聴いている。

 「大喜利からの卒業」は、「山号寺号(さんごうじごう)」。「高野山金剛峰寺」「比叡山延暦寺」「身延山久遠寺」というように「山」と「寺」は切っても切れない。山(さん)、寺(じ)を使った言葉遊びがメインの幇間(たいこもち)と旦那のたわいもないやりとりの噺だ。この言葉遊びが昔から大喜利のネタになっている。

 今年3月2日の山梨県立図書館「第6回来ぶらり寄席」でわれわれも「長崎幸太郎さん山梨県知事」「ゴーンさん検察は意地」「テンヨのビミサンかくし味」とご当地ネタ・時事ネタを披露して、定員をはるかに超えたお客さんに喜んでいただいた。

 「支配からの卒業」って故尾崎豊君だね、噺は「桃太郎」。親離れした子と子離れできない親。筆者もこの噺、演(や)ります。

 「この世からの卒業」は「死神」、落語中興の祖・三遊亭圓朝師作の名作。三遊亭圓生師、先代(八代目)林家正蔵師が良かった。今も演り手は多く、それぞれの演者がサゲを工夫している。当代三遊亭円楽師の「死神」には、桂歌丸師の名が出てくる。

 「常識からの卒業」は「一眼国(いちがんこく)」、正蔵師からお弟子さんの春風亭柳朝師や林家九蔵師(現三遊亭好楽)に継承された。意表を突いたサゲは、秀逸だ。九蔵師、弟弟子の正雀師の故郷山梨で開演前の楽屋「あんチャンの故郷だろ、いいからあんチャンがトリ取んなよ」と正雀師に優しく言っていたのを思い出す。

 「俗世間からの卒業」は「蒟蒻問答(こんにゃくもんどう)」。正蔵師や先々代(六代目)の春風亭柳橋師が楽しかった。サゲが仕方(ジェスチャー)になるこの噺を古今亭志ん生師、なんとラジオで演ったというからすごい!

 「信心からの卒業」といえば「小言念仏」、これはもう先代(三代目)三遊亭金馬師、今は小三治師。上方の桂文珍師も今風に演っている。朝のお念仏を唱えるシーンだけのシンプルな噺。しゃべるのは独りだけ、それなのに家の広さ・赤ん坊の表情・行商のどじょう屋の風体などが目に浮かぶ。学生時代にチャレンジしたが挫折、独りしゃべりは難しい。

 「多分卒業はできない生徒ばかり」という噺は「授業中」。一昨年亡くなった三遊亭圓歌師の大ヒット作。何度聴いても笑えた、あの口調は唯一のものだろう。

 そういえば、鈴本演芸場を皮切りに各寄席で「歌之介改め四代目圓歌襲名披露興行」が始まる。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly3月4日号から転載) 


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