あなたのお墓をどうします? 全国で急増する〝離檀〟

 少子高齢社会の到来は、老老介護問題、空き家の大量発生など、日本のあちこちに影を落とす。このほか、「死」に伴う「自分のお墓をどうするのか」という問題に直面する人も少なくないだろう。「寺院消滅」(日経BP社)などの著書で知られ、実家の寺の副住職も務める鵜飼秀徳氏が全国で急増する〝離檀〟の現状を報告する。(編集部)

 

墓じまい

 

 「葬式のたびに檀家(だんか)が減っていく」

 筆者が島根県の寺院調査に赴いた際、地元の住職が異口同音につぶやいた言葉である。

 分かりやすく、説明しよう。ある時、寺の檀家が亡くなった。喪主になるのは、たいていは故人の長男だ。

 しかし、長男は東京や大阪に出ており、普段は妻と2人暮らしをしている(つまり核家族を形成している)。葬式の際、故郷の菩提寺(ぼだいじ)で葬式を執り行ったものの、納骨の節目である四十九日法要を終えた段階で、離檀(檀家をやめること)してしまうというのだ。つまり、「墓じまい(改葬)」である。

 山間部に位置し、人口減少傾向が著しい島根県邑南町のある浄土宗寺院では、近年十数軒の檀家が離檀していったという。

 この寺の檀家数は70軒ほど。寺の収入だけでは到底、生活していけないことから住職は普段、社会福祉施設で働き、生活の足しにしている。

 この地だけではない。昨今、離檀が全国的に相次いでいる。厚生労働省の「衛生行政報告書」によれば、2007年度の改葬(離檀して墓じまいすること)数は7万3924件。ところが、2017年度では10万4493件にまで急増してきているという。

 

死活問題

 

 離檀の増加は、寺院にとって死活問題だ。寺院収入の多くの割合を占めるのが、檀家から徴収する墓地管理費である。墓地管理費は地域差はあるものの、檀家1軒あたり年1万~2万円が相場だ。また、檀家が減れば、葬式や回忌法要などの臨時収入も途絶えることになる。

 結局、収入源が断たれた寺院には後継者が現れず、今の住職を最後に寺が絶えてしまうケースも少なくない。そうして地方都市では、過疎化や高齢化の進行とともに、寺院が急激に無住化しているのだ。

 現在、国内における寺院の数は7万7千(ちなみにコンビニエンスストアの数は5万5千店)。

 そのうち、無住寺院は1万5千~2万にも及ぶとみられている。各仏教教団の調査などを基にした筆者の試算だと、2040年には現在よりも1万カ寺減少する見通しである。

 寺院消滅の理由は、地方から都市への人口の流出だけではない。死生観の変化に伴う、葬式の希薄化が追い打ちをかける。

 例えば、この5年ほどで一族の墓に入らない会員制の永代供養納骨堂が急増している。

 つまり、死後は菩提寺に頼ることなく、自らの居住地近くにある納骨堂を購入し始めているのだ。多くの納骨堂は、個人単位で納骨され、数年から33回忌までの納骨期限が設定されている。納骨期限が過ぎれば、合祀(ごうし)される。

 東京都では2016年の1年間で14棟の永代供養納骨堂が建立された。自動搬送式納骨堂と呼ばれる、遺骨を数千~1万以上収納するビル型納骨施設は都内で20棟を数える。2020年にはさらに5棟が開業する予定だ。同時に墓を持たない海洋散骨も増えている。

 こうした納骨堂では、寺檀関係を結ぶ必要はない。葬式や、年忌法要などを菩提寺で執り行わなければならない、寄付を要求される、などの縛りもない。

 

心の安寧

 

 都会人の中には、古くからの寺檀関係を煩わしく思う人も少なくないだろう。寺から過剰な布施の要求をされたと訴える声も、筆者の耳にしばしば届く。寺院消滅の一因は、寺院側にある。

 しかし、寺(あるいは墓)が地方から消えれば地域コミュニティーの核が失われる。「故郷」の概念も薄れ、正月やお盆、あるいは地域の祭りなどの年中行事の際に帰省することもなくなる。地方創生はおろか、人とカネの流れが都会に滞留し、地方はますます疲弊していくことだろう。

 筆者は寺院を再生していくことが地域創生に寄与すると考えるが、容易ではない。

 せめて個々人が、お盆や正月に帰省し、ご先祖さまの墓に手を合わせ、自分自身を見つめる機会をなくさずにいてほしいと考える。

 日本のストレス社会にあって、死者と対話する行為は、自分自身を顧みることにもつながり、心の安寧へと導く、稀有(けう)な機会であるのだから。

  ×  ×  ×

日経BP社、1600円(税別)

 

[筆者略歴]フリージャーナリスト

鵜飼 秀徳(うかい ひでのり)

1974年生まれ。成城大卒。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。実家は京都の浄土宗正覚寺。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける

 

(KyodoWeekly3月11日号から転載)


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