2月の映画

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「フロントランナー」(2月1日公開)☆☆☆

政治家に対する報道のルールとは

 舞台は1988年の米コロラド州。ジョン・F・ケネディの再来と言われ、大統領選挙の最有力候補=フロントランナーに躍り出たゲイリー・ハート(ヒュー・ジャックマン)。だがマイアミ・ヘラルド紙がつかんだスキャンダルが報道されると事態は一変する。

 この出来事は、米国では政治家に対する報道のルールや、候補者の政策よりも人柄を重視するという国民感情の変化を象徴した事件として有名だが、もし、ハートが政策重視の観点から大統領になっていたら…と考えさせるところは、昨年の「ザ・シークレットマン」や「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」同様に、今のトランプ政権に対する不信感が反映された映画だとも言えるだろう。

 ジェイソン・ライトマン監督は、70年代に製作された「候補者ビル・マッケイ」(72)、「コンドル」(75)、「大統領の陰謀」(76)、「ネットワーク」(76)などを参考にしたという。そのためか、本作はどこか70年代映画の香りがする。

 

「アクアマン」(8日公開)☆☆☆

新作の主人公は海底王

 DCコミックス映画の新作の主人公は、人間と海底人のハーフのアクアマン=アーサー・カリー(ジェイソン・モモア)。彼が王の遺品である伝説のやり(トライデント)を手にし、海底王になるまでを描く。

 オーストラリア出身のジェームズ・ワン監督は、水中のビジュアルやアクションは、「スター・ウォーズ」シリーズの水中版を狙い、アーサーと王女メラ(アンバー・ハード)の関係は、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」を参考にしたという。

 また、主人公の名前が示す通り、英国のアーサー王のエクスカリバー(剣)伝説や、ディズニー映画「モアナと伝説の海」で描かれたハワイなどポリネシア地域に伝わる海の神の伝説をほうふつとさせるところもある。

 来日したハードは「この映画には、男女平等や、多様性についてなど、多くのメッセージやテーマが込められている」と語っていたが、暗いものが多いDCコミックス映画の中では、明るく楽しいものとしても記憶に残る。

 

「ファースト・マン」(8日公開)☆☆☆

初めて月面に立った男の内面に迫る

 人類史上初めて月面に立った男、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)を主人公に、デイミアン・チャゼル監督が、米宇宙計画の裏側を描く。脚本は「スポットライト世紀のスクープ」など、実録物の名手ジョシュ・シンガー。

 今回も多角的な視点から、宇宙計画の暗部や反対運動の様子なども描き込んでいる。

 本作の舞台となる1960年代は、まだ携帯電話もパソコンもなかった時代。そのためチャゼル監督は、可能な限りアナログ感を表現しながら、観客に当時の現実を体験させることに主眼を置き、ドキュメンタリーのスタイルを採用した。

 また「無限の宇宙(月)と平凡な日常(家庭の台所)が並立する作品に」をモットーに、宇宙開発のスペクタクルよりも、アームストロングらの内面を深く掘り下げることに腐心して描いている。日常的に現れる月、アームストロングが見上げる月など、地球から見た、異なる月のカットを印象的に映すシーンもそれを象徴する。

 

「アリータ:バトル・エンジェル」(22日公開)☆☆☆

3D映画の新たな可能性を示す

 日本のSFコミック「銃夢(ガンム)」を、製作ジェームズ・キャメロン、監督ロバート・ロドリゲスが実写映画化。

 遠い未来の世界は、天空に浮かぶユートピア都市ザレムと、荒廃した地上のアイアンシティに分断されていた。地上に暮らす医師のイド(クリストフ・バルツ)は、クズ鉄の山から少女の頭部を発見する。

 彼女は300年前に作られたサイボーグだった。イドは修繕した彼女をアリータ(ローサ・サラザール)と名付け、娘のように接するが…。

 キャメロンが「アバター」で扉を開けた3D映像が格段に進歩し、違和感を抱かせない。加えて、キャメロンが自身の娘を重ね合わせて創造したというアリータをはじめ、登場人物の描写がきちんと描かれるので、映像やアクションだけが際立つという失敗も犯していない。一時は乱発された3D映画も、最近は下火になった感があったが、キャメロンがまた新たな可能性を示したと言っても過言ではない。まさにキャメロン印の映画をロドリゲスが完成させた。

 

「THEGUILTYギルティ」(22日公開)☆☆☆☆

主要登場人物はたった1人のサスペンス

 警官のアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)は、ある事件をきっかけに、現場を退き、緊急通報指令室のオペレーターを務めていた。ある日、車で誘拐されたという女性からの通報を受けたアスガーは、電話の声と音だけを頼りに、事件解決に挑むことになる。

 スウェーデン出身のグスタフ・モーラーの長編監督デビュー作となったデンマーク映画。トラウマを抱える主人公が、姿の見えない相手と電話を通じて接触しながら変化していく様子が描かれる。主要登場人物はアスガーのみ。しかもカメラは緊急通報指令室から一歩も外に出ない、というところが新鮮に映る。

 また、外の場面や回想を全く入れずに、アスガーと電話の声だけで押し切った“我慢の演出”が、観客の想像力を刺激しながら、ミスリード(誤解)によるサスペンスを生み出すことにも成功している。セーダーグレンの見事な一人芝居に加えて、含みを持たせたラストシーンも心に残る。サンダンス映画祭観客賞受賞作。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly2月25日号より転載)

PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ