「落語の森」武士と町人

 噺(はなし)では弱い町民が権力を持った武士をからかい、笑う。表立ってできないことを落語という形で、これでもか、とやってのけて庶民は溜飲(りゅういん)を下げる。

 夏の代表的な江戸噺「たがや」、時事ネタも入れられる便利な噺だ。明快な口調の先代(三代目)三遊亭金馬師らいろんな噺家さんのものを聴いてきた。

 そういえば、当代金馬師が一時体調を崩したが、今年の正月は、元気に高座を務めた。来月には90歳。

 先々代(三代目)桂三木助・先代(十代目)金原亭馬生・春風亭小朝各師のも良い。サゲで殿様の首が飛ぶのが普通だが、立川談志師は「たがやの首ィ斬ってるのは家元(あたし)だけ、たがやの首を切った方が自然、これが本来のサゲ」と言っていた。筆者は、普通にたがやさんの首を飛ばしてます。

 「棒鱈(ぼうだら)」は、酔っぱらった田舎侍と酔っぱらった町人のケンカ。先代(初代)金原亭馬の助師が良かった、酔っぱらいぶりが懐かしい。今は、柳家さん喬師か。

 「宿屋の仇(あだ)討」は、小朝師の師匠の先代(五代目)春風亭柳朝師。江戸っ子らしいテンポのいい口調で、粋な着物も楽しめた。上方だと「宿屋仇(がたき)」と、タイトルが変わる。

 「首提灯」は、昭和の名人とうたわれた三遊亭圓生・先代(八代目)林家正蔵(彦六)両師がすばらしかった。首を切られたことに気がつかない町人、歩き出すと首がずれて、あわてるシーンが見せ場。圓生師は、この噺で芸術祭文部大臣賞を1960(昭和35)年に受賞した。

 「蔵前駕籠(くらまえかご)」も演(や)り手は多い。古今亭志ん朝師は、スピード感がたまらなく心地よかった。正反対が前述の正蔵師、ゆっくりゆっくりコワイ顔で噺を運んでいた。

 「巌流島」は、サゲがきれいだ。船中の客にいろいろ言わせて、にぎやかに演れるし、短くもなるので寄席(よせ)では便利。いろんな人が演ってきている。小朝師も形がすっきりしていいし、立川談春師もすご味があって楽しめる。「岸柳島」と書く場合も。

 「禁酒番屋」は、柳家の噺。先代(五代目)柳家小さん師が十八番(おはこ)にしていて、師から一門の鈴々舎馬風師・柳家小三治師らに継承された。

 何年か前に、山梨県甲府市で小三治師の長いマクラの「禁酒番屋」を聴いた。マクラだけで終わるのか、と思っていたら筋に入っていったので驚いたことがあった。50年前の末廣亭での師の真打披露では、決まりきったマクラしか振らなかったけどなァ、変われば変わるもの。

 「鼻ほしい」は、梅毒で鼻が落ちてしまった侍を馬子がからかうという、イヤな噺。これを圓生師、よく演ってて「また、これか」とガッカリした。今は演りにくい噺だろう。

 「井戸の茶碗」は、善人しか出てこない気持ちのいい噺。寄席でもいろんな人が演る。筆者も立川志の輔師に薦められ演っている。客だけでなく、演者も気持ちがいい。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly2月11日号から転載)

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