民法改正、消滅時効が「5年」に 保険金請求権などの例外も

 契約に関する項目が全面的に見直される民法改正は、2020年4月から施行される。1896(明治29)年の民法制定以来、初めてとなる契約分野の抜本的改正項目は200を超える。その中で日常生活への影響が大きいルール変更の一つが、期限後一定年数の経過により貸金や未回収代金などの権利が消滅する「消滅時効」だ。これまで契約内容によって時効の期間が異なっていたが、ルールを統一し、分かりやすくしたのが最大の特徴。ただ、民法以外の特別法に基づく保険金・年金請求などの例外もあるので注意が必要だ。

 

 Q これまでの民法における「消滅時効」はどうなっていたのか。

 A 契約などによって発生する債権については、消滅時効が完成する期間は、支払いの期限後10年間が原則だった。しかし、契約の種類によって、より短い年数が定められていた。

 例えば、料理店やホテルの飲食料・宿泊料などは1年間、商品の未回収代金などは2年間、医師の診療費や工務店の設計工事費などは3年間、といった具合だ。これらは「短期消滅時効」と称され「飲み屋のツケは1年間で消滅」などと言われるように、比較的少額なケースが多かった。

 しかし、19世紀末にフランス民法を範として策定された、いわば職業別の時効完成までの時間差は、もはや現代の感覚には合わなくなっていた。

 Q これらの年数がどのように変わるのか。

 A 施行後に成立する契約などに基づく債権については、原則、支払いの確定期限から「5年間」に統一される。商取引によって生じた債権は、取引関係を早期に決着させる必要があるなどの理由から、これまでも商法では、原則5年間だった。結果として、民法・商法を通じて「5年間」に消滅時効が統一された。

 Q 消滅時効は、自動的に適用されるものなのか。

 A 「権利の上に眠る者は保護に値せず」とも言われるように、債権者からのアクションがなければ、確定期限後5年の経過で、消滅時効の対象となる。

 ただし、債務は本来履行すべきものであって、訴訟においては、債務者から時効の利益を受けることを主張する「援用」があって初めて時効消滅の判決が下されることになる。つまり、時効の適用は自動的ではない。

 Q 裁判外で覚えのない請求を受けた場合、債務者としてはどのようにすればよいのか。 

 A 自ら弁済したかどうかの記憶が曖昧な場合や、亡くなった親の(から相続した)債務について請求を受けた場合などにおいては、安易な言動は控えるべきだ。

 例えば、請求額の一部を支払ったり、支払い期限の延長を求めたりすることは、債務を「承認」したものとされ、経過していた時効期間がリセット(更新)される。

 また、時効期間が経過していたとしても、債務者がそのことを知らずに「債務の承認(借金の存在を認める)」をしたとすれば、もはや消滅時効を主張できなくなることが、判例上のルールとなっている。

 逆に、債権者の立場としては、債務者への請求のみでは、時効を阻止できない。時効完成前に訴訟を起こして支払いを求めるなど、何らかのアクションを起こし、裁判所が関与する手続きを取らねばならない。

 Q 契約以外で発生した債権の消滅時効はどうなるのか。

 A 故意や過失による加害行為として「不法行為」が成立するとき、被害者の賠償請求権も時効の対象となる。これまでは、損害および加害者を知ってから3年間で消滅時効が成立するため、被害者側としては早期のアクションが必要だった。今回の改正で、生命・身体の損害を受けた場合には、新たな原則「5年間」に一致するよう延長される。

 Q 当事者間で、民法と異なる消滅時効を定めたらどうなるのか。

 A 消滅時効の規定は「契約自由の原則」の例外の一つであって、仮に時効期間を延長したり、時効の権利を「放棄」させる契約を結んだりしても、無効となる。ただし、気を付けておかねばならないのは、特別法によって、民法とは異なるルールが定められている場合だ。

 損害保険・生命保険などは、事故などからの時間経過が調査を困難にする場合もあるため、「保険法」によって、保険請求権の消滅時効までの期間が3年間とされている。

 年金を受ける権利は「国民年金法」「厚生年金保険法」によって、権利発生から5年間で消滅時効になるとされている。ただし、年金を受ける基本権については、やむを得ない事情が認められれば、年金機構側から時効を主張しないという扱いがなされている。

 時効に関するその他の特別法もあり、個々の契約については改めて確認をしておく必要があるだろう。

 なお、労働基準法に基づく労働賃金請求権に関する「2年間」については、現在、労働者の権利保護の視点を含めた再検討が行われており、動向が注目されている。

 Q 一般市民として、時効にどのように向き合うべきか。

 A 今回の改正で、当事者間で債務の存在を確認するなどのため、1年以内の「協議」を行う際、その間は時効完成が猶予されることになる。

 来年の改正民法施行後、新たな制度の活用が期待されるが、最終的に訴訟に至った場合、債務者には時効を主張する道が残されていることは、認識しておくべきだろう。

 また、一般市民が債権者の立場となる、損害賠償、保険金、年金請求などについては「権利の上に眠る者」とされないよう、権利を放置することなく、適時に行動することが求められるだろう。

[筆者]

常葉大学法学部教授

大久保 紀彦(おおくぼ・のりひこ)

 

(KyodoWeekly1月28日号から転載) 


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