「本の森」「10%消費税」が日本経済を破壊する

藤井 聡著

●196ページ

●晶文社(税別1500円)

 

門外漢の明快論理

 

 学者は仲間内の狭い世界に住んでいる。例えば憲法学者は憲法の専門でない人たちの論戦には参加しようとしない。素人は黙っていろ、われわれの主張に従えという姿勢だ。著者は都市社会工学が専門で、昨年末まで安倍内閣の参与を務め、国土強靭(きょうじん)化問題を担当していた。そんな経済の門外漢が書いたのがこの本だ。従って経済学を専攻する多くの学者は素人談義だとして無視する。特に消費増税は必要だという主張をマスメディアで振りまいている学者先生たちは、議論に値しないという姿勢を貫くのは間違いない。

 著者の主張は明快である。デフレ経済から完全に脱却できていないときに、消費増税すると総税収の減少を招き、日本経済は大きな打撃を受けるというものだ。この主張を論証するため、30数枚のグラフを駆使して説明していく。具体的な経済データを示しながら、解説していくので、大変分かりやすい。反対と叫ぶだけでなく、対案として法人税や所得税、金融所得課税の引き上げを提言する。

 「日本はもはや経済大国ではない」とか「日本は世界唯一の衰退途上国である」というデータの説明もある。なぜそうなったのか。それは1997年に消費税率を3%から5%に引き上げ、デフレ経済に陥ったためだ。消費増税は消費を抑えるデフレ政策だから当然なのだ。さらに5%から8%に引き上げた結果、3年で家計は34万円も消費額が減ったし、給与所得者の給料は下がったままだと説明する。

 このような事実を政府はどうみているのだろうか。昨年の財政制度等審議会の建議書は平成の30年を総括する異例の回顧を総論で掲げた。だが、デフレのデの字もない。消費税率を上げると総税収が減ったという不都合な事実にも触れない。財務省が操縦する審議会と言ってしまえばそれまでだが、40人を超える審議会委員はそろいもそろって何を見ているのだろうか。

 本書にはどぎつい言葉が多い。デマ、ウソ、プロパガンダという具合だ。これらは消費増税の賛成派学者らや財務省に向けられた言葉である。京都大大学院教授なのだから少し抑制したらいいのにとは思うが、我慢ならないということなのだろう。

 著者は編集長として隔月刊雑誌「表現者クライテリオン」(啓文社書房)の昨年12月増刊号で「消費増税を凍結せよ」を特集している。右派から左派までの学者や評論家が勢ぞろいした270ページにわたる力作である。本書と併せて読むと理解が深まる。次世代につけを回さないためデフレ経済下でも消費増税はやむなし、という不思議な言説がまかり通っているからこそ一読の価値がある。

(北風)

 

(KyodoWeekly1月14日号から転載)


PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ