「落語の森」ご隠居さん

山梨落語研究会の高座で演じる紫紺亭圓夢さん

 「八っつぁんに熊さん、横丁のご隠居さんにバカで与太郎、人のいいのが甚兵衛さん」と言いながら噺(はなし)家さんは、いろんな噺に入っていく。今回は、なぜかいつも横丁にいるご隠居さんの登場する噺を。落語国の住人、とにかくご隠居さんにものを聞きたがる。

 先代(五代目)柳家小さん師がよく演(や)っていたのが「浮世根問(うきよねどい)」。どこでも切れる、寄席(よせ)では都合のいい噺だ。

 「やかん」は先代(三代目)三遊亭金馬師が得意にしていた。立川談志師は、師匠小さん師から「浮世根問」のご隠居と「やかん」のご隠居は違う、と教えられたという。「物知り」と「知ったかぶり」の違いだと。金馬師の楽屋でのあだ名は「やかん」、噺のマクラでも博識ぶりを振り回していた。

 「柳家」の一門が最初に教わるのが「道灌(どうかん)」。古今亭志ん生師や金馬師のも楽しかった。「後生鰻」「つる」は、昨年亡くなった桂歌丸師が寄席でよく演っていた。上方の桂米朝師の「つる」も良かった。

 「千早振(ちはやふ)る」は、いろんな噺家さんが演るが志ん生、小さん両師のものが有名だ。今は、柳家小三治師、三遊亭小遊三師ら、それぞれの師匠が工夫をし、楽しませてくれる。

 志ん生師がラジオで演っているのを中学生だった筆者はあわてて、速記のようにメモった。大学の落語研究会に入って初めて演ったのもこの「千早振る」。昨年末に何年ぶりかで演って楽しんだ。

 「十徳(じっとく)」は、前座噺。十徳とは、「脇を縫い付けた、羽織に似た着物。主に儒者・絵師・医者等(など)が礼服として用いた」と立川志の輔師監修の「千字寄席(PHP文庫)」にある。以前は、よく聴いたが、今はあまりはやらない噺か。

 「一目上がり」も前座噺。掛け軸の褒め方を教わった八っつぁん「結構なサンですねェ」「いや、これは詩だ」、「結構なシですねェ」「これは語だ」、「結構なロクですねェ」「いや七福神だ」と家を一軒一軒訪ねるたびにオチになる珍しい噺。尻上がりになっていく噺なので、その昔は縁起をかついで初日によく演ったという。オチは、まだあって「これは芭蕉の句(九)だ」で演る場合も。

 「子ほめ」は寄席でよく聴く噺。前座噺だが笑いも多く、確実にウケるので数々の演者が演る。柳家小さん師が1936年の二・二六事件の際、上官の命令で士気を鼓舞するため反乱軍の兵に向かって演らされたのがこの噺だ。「全くウケなかった」と後に小さん師。

 「天災」も小さん師が有名、談志師も良かった。先々代(六代目)の春風亭柳橋師も心学の先生・紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)をほうふつとさせて楽しかった。

 そうそう今年、明治大学落語研究会が60周年、山梨落語研究会は10周年。そして筆者も「落語人生50周年」を迎えます。どうぞ、よろしくお願い致します。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly1月14日号から転載)


PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ