「本の森」平成の軌跡 ー定点観測者としての通信社ー

新聞通信調査会・共同通信社編●143ページ●公益財団法人新聞通信調査会(税別1000円)

平成30年のオペラ

 「私が教えている学生にとっては『へー、こんなことあったんですか』という、3分の2は歴史的な資料です。それで、時代の気分というか、当時のリアルを感じてもらえないか、当時の感覚を思い起こしながら、書いてみました」。寄稿者の1人、水無田気流(みなした・きりう)氏は写真展「平成の軌跡」のレセプションでそう話した。

 「平成の軌跡」は、新聞通信調査会主催の写真展「定点観測者としての通信社」シリーズの10回目の写真展の図録である。本書には通信社配信写真から選定された130点に、内田樹(うちだ・たつる)氏(思想家)、水無田気流氏(詩人・社会学者)の寄稿を掲載している。

 写真は、バブル経済の象徴のひとつ、ディスコ「ジュリアナ東京」で踊る女性らの姿の「プロローグ」で始まり、第1幕「激変と不安」、第2幕「改革への挑戦」、第3幕「希望と難題」、その合間に間奏曲「本土との亀裂拡大する沖縄」と「慰霊の旅と祈り」を差し挟み、エピローグへと、オペラを模した構成である。

 

戦後史5段階区分説

 

 内田氏の「『涅槃(ねはん)状態』からの覚醒は―平成の30年を振り返る」では、平成の30年は「国運が隆盛から衰退に切り替わった」「転轍点」と述べられている。それを国家主権を取り戻す「戦後史五段階区分説」を提示して解説していくのである。

 第1段階は「対米従属を通じての対米自立」、第2段階は「金で主権を買い戻す」、第3段階は「『フレンドシップ』という貨幣で主権を取り戻す」、第4段階は「ノーガード戦法」、そして第5段階を「涅槃状態」としている。個別の写真にはまったく触れずにいながら、写真を眺めるときに役立つ、時代の気分を実にうまく言語化している。

 一方の水無田氏の「平成(ヘイセイ)・雑感(ザッカン)・空隙・史(クウゲキノシ)」では、氏が選んだ写真から受けた印象を書きとめている。例えば皇太子さまの結婚パレードの写真には、当時の「金色の公衆電話・ギザジュウ伝説」(縁に刻みが入った10円玉で電話をかけると恋が実る)と、雅子妃と同世代の男女雇用機会均等法第1世代のバリキャリ女性(バリバリのキャリアウーマン)の現状に言及し、音声合成ソフト人気キャラクター、初音(はつね)ミクの写真では雑誌「ユリイカ」に書いた自身の詩を援用して説明するなどだ。

 この130点は、「平成」を振り返る手掛かりを提示しているにすぎない。読者が「なんだよ、アレないのか」と毒づいたとしたら、ご自身の思う「平成」、ご自身の「足跡」がどんな絵を描いているのか、振り返るきっかけになったに違いない。

 アマゾンまたは、新聞通信調査会のホームページから購入できる。         (転)

 

(KyodoWeekly12月17日号から転載)


スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

第98回天皇杯 トピックス

決勝の結果(12月9日開催)

浦和レッズ   1-0   ベガルタ仙台

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ