「漫画の森」生き残り懸ける新作たち

 消長激しい漫画界にも新作品は元気に生まれてくる。長期継続の願いを込め、今年1巻が発売された作品を紹介する。

 「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」(既刊2巻9月発売、芥見下々(あくたみ・げげ)/集英社)は、うっかり「見える」体質になってしまった高校生が主人公の除霊アクションで、掲載誌は過酷な中でも過酷で知られる週刊少年誌。設定や画(え)のタイプから過去の人気作を思い起こす読者もいるに違いないが、本作が「技あり」だと感じるのは、それら既存作品より個性がマイルドに見える点だ。ページや見開き単位では大きな違いを生まなくとも、1巻末尾では独特の雰囲気となって作品を包み込む。少年漫画では生命線である主人公の特別性を保ちながらも、キャラ同士の関心の方向性で主人公補正を和らげ、陰のある画でグロテスクな戦いを描きながらも登場人物の善性を維持し、さらにアクも実力も強烈な指導役の登場で年長読者の心をくすぐる。

 難題をふっかけられても、腐らず向き合ってクリアしていくような誠実さのある作品だ。今後も読者アンケートの荒波を切り抜けていってほしいと思う。

 「ヴラド・ドラクラ」(既刊1巻2月発売、大窪晶与/KADOKAWA)は、タイトル通り15世紀のワラキア(現ルーマニア南部)公にスポットを当てた作品。敵に対する残酷さから「串刺し公」と呼ばれ「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなったことで名高い人物だ。

 作品はヴラドが年若い君主として貴族たちに蔑(ないがし)ろにされているという絶妙な時期からスタート。1巻では彼の実権回復計画が始動するのだが、読者にとっての「知っている面」と「知らない面」が巧みに使い分けられている印象だ。年長者にはこびて油断させる、敵対陣営内にくすぶる不満を鋭く嗅(か)ぎつけて切り崩しにかかる、果ては外敵をも利用するなど、狡猾(こうかつ)さと容赦のなさはむしろ爽快。感情を表に出さない描写からは、今後もあまり苦悩はしないであろうことが想像でき、それがいかにも頼もしい。掲載誌は年10回変則刊行の個性派で、作品ラインアップも一癖ありげなものばかり。台詞(せりふ)が「です・ます」調の、親しみやすさ極小の主人公が躍動できるのも、王道とは少しずれた環境下だからなのだろう。

 「これ喰(く)ってシメ!」(既刊1巻7月発売、原作・久住昌之、作画・武田すん/日本文芸社)の舞台は漫画誌の編集部。女性デスク・マチ子と若手女性社員・ひじきがメインキャラだ。序盤はマチ子がそば店での飲み方などを指南する穏当な展開だが、5話で突如はじけ出す。給料日、ひじきがマチ子に寿司(すし)をおごると宣言するのだ。「鮨(すし)…あの魚へんに旨(うま)いと書く!?」「聞き間違い? いや違う」「最初からオチはわかってる(略)100%回るほう」(以上、マチ子の述懐)。

 回転寿司でしか食べられないからと牛カルビ握りを選び、ここは遊園地なのだからタブーはないと言い切る後輩に、マチ子は目からウロコだ。作品タイトルにもなっているシメはウニで「寿司から解き放たれ、また寿司に戻ってくる儀式」でこの回は終わる。これを境に、彼女らの台詞は食レポ風からトーク番組風に明確に変わる。タコ焼き店や残業後の1人メシでのコメントに、プリミティブかつどこか脱力気味の面白みがにじみ、「孤独のグルメ」の井之頭五郎を思い起こさずにはいられない。うんちくを披歴しているように見えて、食を生活の喜怒哀楽にきちんと織り込んだ作品なのだ。

(漫画愛好家 小岩 くぬぎ)

 

(KyodoWeekly11月12日号より転載)


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