「デザイン思考」で地域活性化 集客・購買施策に効果

 何かを改善するに当たり、関係する要素も含めて体系的・包括的に考えるのが「システムズエンジニアリング」。具体的なシーンに落としてユーザー目線で利便性や使いやすさを考えるのが「デザイン思考」である。この二つの方法論を組み合わせることは、多くの問題を考える際の強力なツールとなる。

 

1、地域活性化の事例から

 

 富士通総研は、さまざまな形で地域活性化支援を行っている。2015年には商店街とスポーツチーム、交通事業者を連携させた地域活性化イベントを実施。16年には地方銀行も加えた地域活性化イベントを千葉市にて行った。

 地域活性化のためには、集客施策と購買施策が必要である。今年、山梨県で実施したアニメ「ゆるキャン△」スタンプラリーと千葉市の事例を基に、それぞれの施策を見ていきたい。

(1)集客施策

 TVアニメ「ゆるキャン△」は、山梨県の美しい山々を舞台としたキャンプアニメである(TV放映18年1月~3月)。この作品の舞台を巡るスタンプラリーを4月中旬から6月初めまで実施し、約5千人がイベントに参加した。

 地域イベント開催の目的の一つは、地域外から多くの人を呼び込むことである。今回は参加者の85%が県外からの来訪だった。地域への集客施策としては大成功といえる。

(2)購買施策

 地域活性化においては、集客だけでなく経済的な効果を得るための購買施策が不可欠となる。

 スタンプを集めるには作品の舞台である山梨県を広範囲に回る必要がある。この施策は、作品の舞台となった美しい観光地を訪れることでファンの満足度を向上させるとともに、交通費や宿泊費、飲食費も含めた購買機会を増やし、経済効果を大きくするという側面もあった。

 このような地域活性化の集客施策と購買施策を考える上で「システムズエンジニアリング」と「デザイン思考」はどのように有効なのか、それぞれ見てみよう。

 

2、システムズエンジニアリング手法

 

 「システムズエンジニアリング」手法は、従来から機能を要素分解して個別分析する方法論として活用されてきた。しかし、一つの要素だけで機能改善を図っても、改善には限度がある。ここでは、むしろ各要素のつながりに着目することで、システム全体の価値を向上させることに着眼した分析手法として活用している。

 千葉市での地域活性化イベントを例に、集客施策について説明する。まず、商店街単体のイベントでは集客効果に限度があるため、地域を舞台としたアニメコンテンツを用い、移動手段である交通機関や地域コンテンツでもあるプロ野球チームと連携することで、それぞれのファン層を取り込むとともに、送客し合う形で効果を大きくした。

 また、スタンプラリーに仮想通貨の技術(ブロックチェーン)を用い、同じスタンプでも複数枚数を保有し、キャラクターの人気投票やプレゼント応募に消費できるようにした。金融とITを組み合わせたフィンテックを用いた地域活性化案件という位置付けにしたことで、地方銀行からの支援を得ることもできた。

 このように、対象をより広い観点から整理し、関連する多様な専門性を統合し、目的の成功確度を高めるのが「システムズエンジニアリング」手法の特徴となる。

 

3、デザイン思考

 

 次に、「デザイン思考」について。ここでは、購買施策を取り上げてみる。

 通常は、購買に応じてポイントが付与される。店舗によっては、独自のスタンプを押してくれるところもあるだろう。紙のクーポン券が付くこともあるかもしれない。

 ユーザーとしては、これは明らかに面倒である。一つのインターフェースで、通貨も、ポイントも、スタンプも、クーポンも統一的に扱えないものであろうか。

 ここでは、スタンプとポイントの融合を考えてみる。スタンプとポイントの違いは、ポイントは合計値としての「数」であるのに対し、スタンプは購買の都度提供される「絵」である。ポイントは定量的なものであるのに対し、スタンプは定性的なものであるといえるだろう。

 千葉市の地域活性化の事例では、スタンプごとに異なるキャラクターを配置し、1枚、2枚とためたり、消費したりすることができるようにすることで、スタンプの絵という定性的な面と、ポイントの数という定量的な面を融合させた。

 好きなキャラクターのスタンプを獲得するためには、そのキャラクターの等身大パネルの設置店舗に行く必要があるため、レアキャラクターの獲得や、すべて集める(コンプリートする)ようなゲーム感覚を取り入れる「ゲーミフィケーション」による購買促進策も兼ねている。

 このようにユーザー体験を中心として仕組みを考え直すことが「デザイン思考」である。

 

4、終わりに

 

 以上、「システムズエンジニアリング」と「デザイン思考」について地域活性化をテーマに紹介した。

 この方法論は、どのようなテーマにも適用できるため、皆さんの身近な話題にも適用することが可能である。決して対立する手法ではなく、相互に融合させることで効果が高まると考えられる。

 

[略歴]

富士通総研ビジネスサイエンスグループチーフシニアコンサルタント

松本 泰明(まつもと やすあき)

富士通でFM-Vなどのコンシューマービジネス向けサービスを開発・運用した後、富士通総研に出向。専門分野はスポーツやアニメなどのコンテンツを軸としたデジタルマーケティングなど

 

(KyodoWeekly11月12日号より転載)


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