「落語の森」若旦那

  何とも言えず、魅力的で落語っぽいのが「若旦那」という呼び名。真面目な若旦那がいれば、どうしようもなく遊び人の若旦那も。どちらも愛すべき存在。

 まずは「紙屑屋(かみくずや)」。春風亭小朝師が二ツ目の頃から十八番(おはこ)にしていた。役者の声色(物まね)や唄、踊りと裏芸を存分に見せて陽気に華麗に演(や)っていた。演者それぞれが自分の好きな芸を披露することができる珍しい噺(はなし)。50年以上も前だったか、先代(初代)の桂小文治師がこの「紙屑屋」を上方風に演ったあと「ちょいと立ち上がりまして」と着物の裾をまくって「奴(やっこ)さん」などを踊った。子ども心に「このおじさん、噺より踊りの方が上手(うま)い」と思ったものだ。

 「干物箱」は、先代(八代目)桂文楽師や古今亭志ん生・先代(十代目)金原亭馬生・古今亭志ん朝親子が良かった。「干物箱」という落語ならではのニュアンス、サゲの見事さに脱帽するしかない。今なら柳家小三治師のものがいい。

 「よかちょろ」「船徳」「酢豆腐」「明烏(あけがらす)」とくると何(いず)れも文楽師の十八番。文楽師演ずる若旦那、どの噺に出てきてもきれいごと!「よかちょろ」は師亡きあと、立川談志師が「一番好きな噺」とよく演っていた。「よかちょろ」はその昔に流行(はや)った唄らしい。今、誰か演り手はいるのだろうか。「船徳」「酢豆腐」は夏の噺、笑い処(どころ)が多く、仕草も派手なのでいろんな人が演っている。「酢豆腐」の上方版が「ちりとてちん」、筆者は「若旦那」ができず、「ちりとてちん」の方で演っている。「明烏」で文楽師が「甘納豆」を食べると売店の商品が飛ぶように売れた、というエピソードはあまりにも有名。志ん朝師・小朝師の「明烏」も初めて女性を知った若旦那のウブさが秀逸。

 「六尺棒」はそれほど聴かない噺か。志ん生師、弟子の先代(初代)金原亭馬の助師、若き日の談志師が演って、三遊亭小遊三師も談志師から習った。

 「唐茄子屋政談」は演り手が多い。江戸の夏・江戸っ子の心意気を描ける噺。三遊亭圓生師、志ん生・志ん朝親子が良かった。昔、アマチュアだが明大落研時代の四代目紫紺亭志い朝君が結構な「唐茄子屋政談」を聴かせてくれた。先月末まで劇団SET本公演を池袋サンシャインで演っていた三宅裕司君がその人。「芝浜」の三代目駿河亭雀志先輩(札幌在住)と双璧。

 「崇徳院」も「恋煩(こいわずら)い」の噺で演り手は多い。以前は三代目桂三木助師の一手販売だった。上方だと桂米朝師が良かった。今、若者に「恋煩い」と言って理解してもらえるのか、「会いたい病」と言えば分かる?

 「木乃伊取(みいらと)り」を子供の頃「なぜ、この字でミイラ?」と思ったものだ。主人公は廓(くるわ)にはまった若旦那でなく、それを迎えに行く田舎者の清蔵。圓生師、先代(八代目)林家正蔵師がよく演っていて、談志師もにぎやかに演じていた。

 

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly11月5日号から転載)


スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

第98回天皇杯 トピックス

決勝の結果(12月9日開催)

浦和レッズ   1-0   ベガルタ仙台

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ