「あなたは何者ですか」 五感による自己紹介で発見

 「Who are you?」(あなたは何者ですか)と尋ねられるとどう答えますか。「私は○○株式会社の○○部長です」などと社会的な地位で答えるでしょうか。はたまた「○○県○○市出身です」と個人のルーツを述べるでしょうか。筆者が今回取り上げる、五感を使った自己紹介は、自分が気付かなかった自己の可能性を見いだすことが期待できるほか、企業の戦略策定にも有効だ。

「Zen 2.0」でマインドフルネスについて講演する重松教授(左)=9月、鎌倉市建長寺龍王殿方丈

 

マインドフルネス

 

 9月上旬、マインドフルネス国際フォーラム「Zen2・0」が神奈川県鎌倉市で開かれた。

 マインドフルネスとは、心の訓練法の一つで、瞑想(めいそう)などを通じ「今、この瞬間に注意を向ける」ことなどを学び、心の安定を目指すものだ。フォーラム参加のため来日した、スタンフォード大のスティーブン・マーフィ重松教授が、筆者が勤務する東北医療福祉事業協同組合傘下のある医療法人でワークショップを開催した。

 医師、看護師、保健師、栄養士ら医療介護に携わる職員が参加。2人一組になって「Who are you?」を交互に15分程度問い掛け、できるだけ多くの「自分とは何者か」を答えるプログラムだ。

 ただ、この「Who are you?」の問い掛けが始まると「私は○○です」について仕事、出身地、趣味などを数分間で答えるだけで、後が続かなかった。

 そこで、教授が著書「WHEN HALF IS WHOLE」の表紙を示し「この月がみなさん個人とすると、みなさんが今答えているのは、この写真の月の光の当たっている部分(半月)しか見ていません」。そして「この陰の部分をいかにたくさん答え、意識していなかった自己を認識するのがここでは求められています」とこの問い掛けの意義が明らかにされた。

 

自己把握に抑制力

 

 筆者が教鞭(きょうべん)をとっている青山学院大では2年生を中心に、この〝陰〟の部分をいかに見いだすか、という講義をしている。キャリアプランの授業の一環で、自分のやりたいことや、将来像を学生生活の早い段階で意識させる目的から設けられている。

 さて、「Who are you?」の問い掛けに、学生らは15分間を持て余すものの、大学での専攻やアルバイト、クラブ活動、生い立ちなど、冒頭の医療介護従事者と比べ、多くの答えを出すことができる。興味深いのは医療や介護に従事している人の方が、大学生より答えが少ない。それははなぜか。 

 これは医療介護従事者は患者や入所者に寄り添うように訓練され、自己把握に抑制力が働いているためと考えられ、自己の認識部分である光の当たる部分が半月でなく、三日月のように少なくなっているからだ、と分析される。

 それではこの〝陰〟の部分をどのようにすれば、もっと多く言葉にできるのだろうか。そこで筆者の授業で試みているのが、五感による自己紹介だ。プロセスを簡単に紹介しよう。

  ※   ※   ※

 ステップ1 30秒間で自己紹介をする場合の内容を紙に書きだす

 ステップ2 五感を基に自己像を表現し、その理由を書く

 ステップ3 ステップ2で五感から描いたいくつかの自己像を統合させ、一体とみなして30秒の自己紹介文を作成する

  ※   ※   ※

 この五感からの自己紹介のプロセスでは、具体的な五感から自分について思い付くものをメタファーにし、そこから「なぜ自分がそうなのか」という根拠を考えることで、自己を発見する。

 「あなたは何者か」といった質問からスタートすると、どうしてもすでに言語化されたもので終始してしまう。これがステップ1の自己紹介である。

 これに対して五感による自己紹介「味覚に例えると」の問いかけでは、言語化される前の自分のイメージが先行することから、思い付きといった無意識レベルでの自己像を表現することになる。つまりこの無意識からの回答が、月の〝陰〟の部分にあたる。

 このように、五感による自己紹介は他人への紹介というより、自分への自己紹介、つまり自分が気付いていない可能性の発見だといえるだろう。

 従って、五感による自己紹介では、自己像が、こうありたいといった期待される自己のイメージや、逆にこうあっては良くないので変わりたいといった願望も含まれていることに注目する必要がある。

 

企業の戦略策定にも応用

 

 この五感による自己紹介のプロセスは、「企業」を「自己」とみなし、その可能性を探索することに応用できる。

 例えば自分が経営する企業のありたい姿を考えるとき、自分の好きな触覚から生まれる言葉は「そよ風」、次にそよ風のような企業とは何かと考え「すべての人々の心に届く心地良さを提供する」といった経営戦略につながるアイデアが生まれるだろう。

 これは経営者の無意識の部分から五感を使って編み出された経営の願望でもある。

 秋の夜長、五感をフルに研ぎ澄まし三日月から半月そして満月に自己像を広げ、自分の可能性を探求してはいかがだろうか。

 

 

[筆者]

植嶋 平治(うえしま へいじ)

学校法人臨研学舎東北メディカル学院専務理事、東北医療福祉事業協同組合参与、青山学院大学経済学部非常勤講師。1976年、大阪市立大商学部卒

 

(KyodoWeekly11月5日号より転載)


スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

第98回天皇杯 トピックス

決勝の結果(12月9日開催)

浦和レッズ   1-0   ベガルタ仙台

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ