情報難民を減らすために

 先月、南の島で家族で夏休みを楽しんでいた筆者は、大型のトロピカルストーム「オリビア」に襲われた。上陸前に勢力は幾分弱まったものの、周囲は緊急事態に備えて慌ただしい。しばらくしてホテルの館内アナウンスが流れ、何かを呼び掛けていたが、十分に聞き取れない。待機でいいのか、避難場所はどこか。何とか情報収集し、事なきを得たが、言葉が通じない異国で被災する恐怖を肌で感じた。

 今夏、6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月の台風21号と関西地域は立て続けに大きな自然災害に見舞われた。中でも台風21号は、関西国際空港のA滑走路や駐機場の冠水、タンカーの衝突による連絡橋の損傷などが報道され、大きな衝撃を与えた。

 関西では近年、外国人観光客の増加が続いており、大阪では、昨年1年間で1千万人の大台を超えた。ただ、相次ぐ自然災害の発生で外国人観光客の減少が懸念されている。現在、国や自治体は観光客の受け入れ態勢の整備を進めているが、今回の災害は大きな課題を突き付けた。

 それは外国人観光客への災害情報の伝達である。大阪北部地震発生当日、発表される災害や交通情報の日本語を理解できず、戸惑う外国人が多く見られた。駅や街頭ビジョンに外国語の案内がなかったため、彼らは自国の大使館に問い合わせたほか、会員制交流サイト(SNS)を用いて母国語で情報収集をしたようだ。

 こうした状況を受け、さまざまな対策が試みられている。大阪観光局では、来阪が多い国の領事館に呼び掛け、公共交通機関や観光地の情報を迅速に共有し、SNSなどでの情報伝達強化を決めた。大阪府でも外国人向けに情報発信を行う専属の職員を置くなど対応強化に動いている。また、大阪市は台風21号の発生から約2週間後に復旧状況と関西の魅力をPRする動画を多言語で公表。被害からの復旧状況、外国人観光客への支援状況を迅速に発信することは、風評被害の防止に加え、日本の災害復旧対応への信頼というソフトインフラの強靭(きょうじん)さを伝えられ、望ましいといえよう。

 しかし、こうした「プッシュ型」の情報発信は必要な人に届かないという限界もある。

 そこで筆者が提案したいのは、各人が避難行動に必要な情報を得られる「プル型」の仕組みを整えることだ。例えば、今般SNSに加え、モバイルデバイス上でメッセンジャーやチャットなどを利用した自動会話プログラム「チャットボット」が注目されている。

 これを活用し、あらかじめ用意していた避難場所などの情報を聞けば、教えてくれるようにできないだろうか。冒頭の筆者のような情報難民を減らすことにつながるのではないか。

 国連世界観光機関によると、2030年には世界全体で観光客は18億人に達すると見込まれる。来年は、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の開催、その翌年は東京オリンピック・パラリンピックが予定されており、今以上に多くの外国人が日本各地を訪れることは確実である。今後、観光地は地域の魅力向上(Destination)に加えて災害対策(Disaster)という二つのDのマネジメントが求められる。官民の関係者が一丸となった取り組みを望みたい。

(アジア太平洋研究所調査役 木下 祐輔)

 

(KyodoWeekly10月29日号より転載)


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