「落語の森」医者もさまざま

 落語には、不思議な医者が登場する。まずは、人間の目とイヌの目を交換してしまうという医者が騒動を起こす「犬の目」

 先代(四代目)春風亭柳好師がゆったりと演(や)っていた。やはり先代になる四代目柳家小せん師、あの人間国宝・柳家小さん師の総領弟子で、NET(現テレビ朝日)の「日曜演芸会」などでも「おとぼけの小せん」で売ったその人だ。この小せん師も飄々(ひょうひょう)と演っていた。この荒唐無稽な噺(はなし)を端正な芸で知られた西の人間国宝・桂米朝師が演っていたから面白い。サゲは色々、艶笑(えんしょう)がかったものもある。

 コップに入れた義眼を間違えて飲んでしまったのが騒ぎの元というのが「義眼」で、サゲのくだらなさが秀逸だ。古今亭志ん生師のものが有名。先代(十代目)桂文治師、桂枝雀師が楽しげに演っていたのを思い出す。筆者も学生時代に演ろうとしたが、挫折してしまった。

 声に出すのはもちろん、活字にするのもはばかられるタイトル「金玉医者」。立川談志師が復活させた噺で、これを談志師、弟子の志の輔師との2006年の親子会で演った。会場はナント、芝居小屋の名門・新橋演舞場。これを演りだしたら、いつもは歌舞伎を見ている品のいい客が凍りついたという、当然だ。確信犯・談志師の面目躍如といったところ。

 「疝気(せんき)の虫」。古今亭志ん生師の十八番(おはこ)だったこの噺、談志師が好んで演っていた。サゲがいかにも落語らしい。談志師が存命中は、演り手はなかったが今は色んな人が演っている。が、迫力にも独創性にもファンタジー性にも欠け、面白みがない。

 「代脈」「夏の医者」は、何と言っても名人、三遊亭圓生師のものが記憶に鮮明に残っている。「代脈」に出てくる愚かな弟子を圓生師、楽しげに演っていた。圓生師の弟子・好生師、1978年の圓生一門の落語協会脱退騒動の発端となった「大量真打」に反対した人だ。この騒動後、破門され林家正蔵師(後の彦六)の門に移った。春風亭一柳と名を代えたが、それでも圓生師そっくりに「代脈」を演っていた。芸とは師弟とは、皮肉で残酷なものだ。

 「夏の医者」、圓生師の田舎言葉がナントモ良かった。先日、1年2カ月ぶりに復帰し、師匠である「六代目笑福亭松鶴生誕百年祭」の高座に立ってシャレたあいさつをした笑福亭仁鶴師もかつては、夏の日盛りの田舎医者をよく描写し、爆笑させてくれた。

 「男の花道」は、役者と医者の友情を描いた人情噺。映画に芝居に講談にもなっている名作だ。春風亭小朝師、林家正雀師、三遊亭竜楽師など腕っこきの演者がそれぞれ楽しませてくれる。まともな医者が出てくる唯一の落語か。桂文枝師の創作落語に同名の噺があるがこちらは、大衆演劇の元座長のドタバタを描いたまったく別の爆笑噺である。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly10月15日号から転載)


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