9月の映画

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

 

「泣き虫しょったんの奇跡」(9月7日公開)☆☆☆

真の奇跡は人との出会いにあり

 棋士・瀬川晶司五段の自伝的小説を映画化。小学生時代から将棋に熱中し、長じてプロ棋士の登竜門である奨励会に入会するも「26歳までに四段に昇格できなければ退会」という規定をクリアできず、一度はサラリーマンとなった主人公=通称〝しょったん〟(松田龍平)が、再びプロ棋士を目指す姿を描く。

 本作には、同じく棋士を主人公にした「聖(さとし)の青春」や「3月のライオン」に見られた〝熱気〟はなく、あくまでも淡々と描いているところが新味だが、その分、松田のあまり感情を表に出さない、つかみどころのない個性が生かされたとも言えるだろう。

 また、全編が乾いたタッチで描かれた分、それとは対照的にラスト近くの、しょったんの対局を応援する周囲の人々の〝熱さ〟が目立ち、スポーツ映画のクライマックスを見ているような気分になる。彼らの点描を見ていると、真の奇跡は、しょったんがこの人たちと出会えたことなのではないかと思えてくるのだ。

 

「MEGザ・モンスター」(7日公開)☆☆

B級モンスターパニック映画の趣

 200万年前に絶滅したはずの巨大ザメ・メガロドン(通称MEG)と、レスキューダイバーのジョナス(ジェイソン・ステイサム)との闘いを描く海洋パニック映画。とはいえ、米中合作のためか、ステイサムよりも中国人女優のリー・ビンビンの方が目立っている。

 監督は「クール・ランニング」、「フェノミナン」などを撮ったジョン・タートルトーブ。なかなか姿を見せないMEG、音響効果による脅かし、MEGの目から見たようなカメラアングル…など、「ジョーズ」の影響が満載だが、ここまであからさまにまねをされると、潔さすら感じさせられる。

 その「ジョーズ」から派生したさまざまな〝サメ映画〟では、サメたちは空を飛んだり、ショッピングセンターやスキー場に現れたりもしたが、久しぶりに海に戻った。ただ、MEGの体長はジョーズの3倍以上ということだが、大き過ぎて逆に恐怖が半減するところもある。全体的にB級モンスターパニック映画独特の趣が漂う怪作だ。

 

「プーと大人になった僕」(14日公開)☆☆☆

大人になったら忘れてしまうもの

 A・A・ミルンの「プー横丁にたった家」は、主人公のクリストファー・ロビンが、くまのプーに別れを告げる場面で終わるが、本作は、妻と娘と共にロンドンで暮らし、仕事に追われる日々を送る、大人になったロビン(ユアン・マクレガー)の前に、数十年ぶりにプーが現れるところから始まる。

 マーク・フォスター監督が「自分らしさを見失ってしまった男が、少年時代の想像力や好奇心を愛する気持ちを再発見する物語」と語るように、プーは、少年時代のかけがえのないものの象徴だが、大人になったら忘れてしまうものでもある。だから、プーに向かって「もう昔の僕じゃないんだ」と語るロビンの姿がとても切なく映るのだ。

 また、マクレガーは「これはジェームズ・スチュワート的な役柄だと思った」と言う。確かに、悪夢の後で本当に大切なものに気付くロビンには、スチュワートが演じた「素晴らしき哉(かな)、人生!」の主人公の姿が反映されているようにも見える。

 

「スカイスクレイパー」(21日公開)☆☆☆

アイデアの集積がお見事

 元FBI人質救出部隊のリーダー、ウィル(ドウェイン・ジョンソン)。爆発事故で片足が義足となった彼は、今は香港にある世界最高峰のビル「ザ・パール」に家族と共に住み、ビルのセキュリティーを担当していた。そんな中、謎の一団がパールに火災を発生させる。ウィルはビル内に取り残された家族を救うため孤軍奮闘する。

 本作の基になったのは、監督・脚本のローソン・マーシャル・サーバーの「世界で一番高い建物で火災が起き、主人公の家族は火災現場より上の階に取り残される。しかも主人公はビルの外にいる」というシンプルなアイデア。そこにスタッフがさまざまな難題を肉付けしていった。

 というわけで、「タワーリング・インフェルノ」+「ダイ・ハード」+「逃亡者」を、ジョンソン独りでやってのけたような映画になったが、さらに義足というハンディキャップまで付けたのだから恐れ入る。ジョンソンの存在を生かすためのアイデアの集積が見事だ。

 

「コーヒーが冷めないうちに」(21日公開)☆☆

もしも、あの時に戻ることができたら

 とある街の喫茶店の〝ある席〟に座ると、望んだ通りの過去に戻ることができるという。ただし、「過去に戻って、何をしても、現実は変わらない」「過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ」など、いくつかのルールがあった。

 「もしも、あの時に戻ることができたら…」という、誰もが抱く後悔の思いを描いた川口俊和の小説を映画化。タイムトラベルという、あり得ない現象を描くために、こんな設定をよく考えたものだと感心した。

 客にコーヒーをそそぐ時田数(有村架純)を狂言回しに、四つのエピソードが登場する。中でも、若年性認知症を患った妻(薬師丸ひろ子)と、彼女を優しく見守る夫(松重豊)の話は、2人の熟練の演技力も相まって心にしみる。それ以外は、残念ながら類型的な話という印象を受けたが、ほんの短い時間の会話でも、人生をいい方向に変えることはできる、というメッセージは伝わってくる。塚原あゆ子の初監督作品。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly9月24日号より転載)


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