夏の記憶を残す映画5選 少年たち、海水浴、墓参り・・・

 猛暑も峠を越えたが、まだまだ暑い日が続いている。“夏の映画”といえば、涼を促すための怪談やホラー、子ども向けのアニメなどを思い起こす人も多いだろう。だが、それ以外にも夏を感じさせる映画や、夏を舞台にしたさまざまな映画がある。ここでは、そうした中から5本を選んで紹介する。どれもレンタル店を訪れれば簡単に見られるものばかり。これらの映画で猛暑の記憶を残してほしい。

 

「スタンド・バイ・ミー」

夏の日の少年

 アメリカでは、少年時代を夏に例えて「ボーイズ・オブ・サマー」と呼ぶ。1950年代の米オレゴン州の田舎町を舞台に、心に傷を持った4人の少年たちが、死体探しの冒険の旅に出る“一瞬の夏”を描いた本作は、まさにその言葉通りの映画だ。

 ロブ・ライナー監督は、スティーブン・キングの原作にあった残酷な部分を省くことで、少年期特有の密度の濃い友情と別れというテーマを明確にし、ベン・E・キングが歌う同名主題歌の「いつも僕のそばにいて」という歌詞を、少年たちの心情と重ね合わせた。

 リチャード・ドレイファスが演じる、後に作家になった主人公が「12歳の時のような友だちを持つことは二度とできない」と書くラストシーンも心に残る。たった数年の交わりなのに、その濃密さを超える関係はもう二度と生じない。何度見ても自分が子どもだった頃を思い出して切なくなる映画だ。

「ジョーズ」

恐怖の海水浴

 夏といえば海水浴という人も多いが、もしそこに巨大な人食いサメが現れたら…。スティーブン・スピルバーグ監督が、海の恐怖をスリル満点に描いた本作は、低予算で作られたため、結果的にさまざまなアイデアを駆使することになった。

 スピルバーグは、サメのいる海の水平線や波間だけを映すことで、観客の見えないものに対する恐怖心をあおり、さらにサメの目線から見たようにして、泳いでいる人間の足を見せるという手法を用いて臨場感を生み出した。また、そこにジョン・ウィリアムズの不気味なテーマ音楽と音響効果を加えることで極度の緊迫感も生まれた。

 その結果、スピルバーグが「観客は映像と一体化し、私が部分的にしか描かなかったシーンを、想像力を駆使して補完してくれた」と語る“共犯関係”が生じ、本作は海洋パニックスリラーの古典となったのだ。

 

「日本のいちばん長い日」

終戦記念日

 8月15日は終戦記念日。本作が描くのは、御前会議で降伏が決定した昭和20年8月14日の正午から、ラジオを通じて天皇が国民に終戦を知らせる8月15日の正午までの24時間だ。

 この間、閣僚たちは降伏の形にこだわり延々と会議を続ける。一方、軍事クーデターをもくろむ青年将校たちは、ラジオ放送を阻止するため、玉音を録音したレコード盤を探す。この二つの出来事が同時進行で緊迫感たっぷりに描かれ、映画は大ヒットを記録した。将校たちのあせりを強調するかのように、彼らの軍服ににじむ汗が印象的に映る。

 だが、本作を撮りながら「何かが違う」と感じた岡本喜八監督は、国家ではなく一兵士から見た終戦として「肉弾」を撮った。日本人にとっての終戦とは何だったのかを知る意味でも、対で見るのが望ましい。

 

「野良犬」

夏の犯罪

 夏の暑さは人を狂わせ、犯罪に走らせもする。黒澤明が監督した本作の舞台は終戦直後の東京。うだるような夏の暑さの中、拳銃を盗まれた若い刑事の村上(三船敏郎)が、ベテラン刑事の佐藤(志村喬)と共に犯人を追い求める姿を描く。

 黒澤映画は、ギラギラとした太陽、大雨、大雪など、極端な状況描写で知られるだけに、晩年の「八月の狂詩曲(ラプソディー)」まで、夏を印象的に描いた映画が多い。 本作も冒頭から、照りつける太陽、人々の肌に浮く汗が印象に残る。特に、復員兵に化けた村上が、拳銃の行方を追って闇市をさまようシーンの“暑い夏の描写”がすさまじい。このシーンは、後に「ゴジラ」を監督した本多猪四郎が撮ったという。そして、太陽と大量の汗の後に、大雨を降らせて事件を急展開させ、最後は暑さを忘れさせるかのように、スカッと終わらせる。お見事!

 

「異人たちとの夏」

盆と墓参り

 日本の夏といえば、年に一度、亡くなった人々に思いをはせる、盆を抜きにしては語れない。その風習を巧みに描き込んだのが本作だ。

 結婚に失敗した中年の脚本家(風間杜夫)が、故郷の浅草で12歳の時に死別した両親と再会したことから、懐かしくも切ない、奇妙な生活が始まる。主人公はまるで怪談「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」のように、死者と接することで生気を失っていくが…。

 原作・山田太一、脚色・市川森一、監督・大林宣彦による、大人のためのファンタジーホラー。本作は、夏(盆)の風景や、浅草という街が持つ独特の懐かしい雰囲気を映し出した映像、そして俳優たちの妙演が相まって、小説とは違う映画ならではの表現力の素晴らしさを感じさせる。特に風間が背中で悲しさを表現した両親との別れのシーンが絶品。本作を見て、墓参りに訪れた人も少なくないという。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly9月3日号から転載)


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