成年年齢18歳へ引き下げ(上) 親として子に何を伝えるか

 「成年年齢の18歳への引き下げ」を定めた改正民法は、第196回国会で成立後すでに公布され、施行は2022年4月1日となった。少子高齢化の中で「若者の自己決定権を尊重し、積極的な社会参加を促して日本を活性化する」という意義はあるものの、若者の法律上の責任がどう変わるのかはしっかりと把握しておく必要がある。これを機に親の立場から子に何を伝えておくべきかという視点で考えてみたい。

 

 Q そもそも、「20歳成人」は、どのような経緯でいつ定められたのか?

 A 明治9年の太政官布告から引き継がれ、明治29年の民法制定以来、20歳となっている。10代後半~20歳が成年という当時の国内での慣習を、21~25歳という当時の欧米の制度に合わせていく方向で、20歳となったと考えられる。

 Q 現在、諸外国ではどうなっているのか?

 A 欧米ではおおむね1970年代に、当時の21歳から18歳に引き下げられ、現在では米(一部の州を除く)、英、フランス、ドイツをはじめ、ロシア、中国も18歳となっている。グローバルスタンダードに合わせるという意義は認められる。

 Q なぜ、いまこの時期に改正されるのか。

 A 18歳以上への選挙(投票)権付与として、2016年に公職選挙法が、18年6月21日には憲法改正手続きを定めた国民投票法が改正施行された。民法改正も課題であったが、国民投票法にギリギリで間に合わせた改正・公布となった。

 一方、民法の契約に関わる200項目超の抜本的改正が、09年以降、国際的視点も入れた5年間の審議会での議論を経て、昨年5月に成立し、20年度から施行される。

 「成年年齢引き下げ」の最大の意味は、契約ルールの適用年齢の規律変更であって、その施行は、民法の抜本的改正後の22年にスケジューリングされたと見ることができる。

 Q 契約において未成年者はどのように扱われているのか?

 A 民法上、未成年者は判断能力が十分でない者として扱われ、小遣いの範囲を超えるような売買・賃貸借などの契約を結ぶ場合、事前に親の同意を得なければならないとされている。

 これは未成年者保護の制度であって、親の了解なき契約でも一応有効とされる。その上で、未成年者側で不十分な判断だったと考えれば、理由にかかわらず契約を取り消すことが認められる。買い物で代金を支払い済みでも、返品と引き換えに返金してもらえることになる。 

 Q 18歳で成人となれば、契約を取り消すことはできなくなってしまうのか?

 A 成人であっても、契約相手の詐欺・強迫によって契約してしまった場合などについては、民法上契約取り消しが可能だ。それに該当しない場合でも、消費者の立場として事業者と契約する場合には、消費者契約法が適用され、一定の契約は取り消すことができる。また、特定商取引法などによるクーリングオフ制度も設けられている。

 18歳となっても、このような問題のある契約については、成年としての取り消しは認められる。しかし、契約全般について、未成年であることを理由とする取り消しは認められなくなるということだ。

 Q 親としてはそのことを、子にどうやって伝えるべきか?

 A 民法は、いわば自由主義経済の基盤となる取引ルールであって、大原則は「契約自由の原則」である。ただし、自分の自由な意思で決めた以上、決めたこと、つまり契約は守らなければならない。

 歴史的にいえば、市民革命によって実現した自由主義社会において、近代憲法の下で認められた経済活動の自由とも結びつく考え方である。

 社会の構成員として本格的に参画していく上では、自由・権利には、責任・義務が伴う、というようなことも含め、親子で話し合う機会を持っていただければと思う。

 Q 悪徳商法に対する法整備は十分なのか?

 A 「成年年齢引き下げ」への対応の一つとして、今国会で消費者契約法改正(来年6月施行)がなされ、不安をあおる告知やデート商法などによって「社会生活上の経験が乏しいことから」契約してしまった場合が、取り消し可能な類型として追加された。

 しかし、これでもさまざまなパターンから消費者が保護されるようにはなっていない。また、2022年に向けて悪徳商法が、さらに巧妙化することも危惧される。若者自身の自覚とともに、継続的な法整備が必要だ。

 Q 注意しておくべきなのは、悪徳商法だけか?

 A 悪徳商法に引っ掛からなくとも、将来見通しの甘さから、支払い能力を超えた債務に陥るリスクはある。クレジットカード取得が18歳から単独で可能になることが、そのリスクを高めてしまうことにはなる。

 カードローンを含む借金、さらに他人の借金の保証人になることはいかに危険であるかなど、親の立場からしっかりと伝えておいてほしい。

 Q 契約における若者の立場が、事業者側になることはないのか?

 A 「成年年齢引き下げ」によって、18歳となれば、親の許可なく事業を営むことが可能となる。将来の起業を目指す若者が増え、社会が活性化していく方向には意味があるだろう。

 しかし、若者がもうけ話に誘い込まれ、個人事業主の立場で債務を負ってしまうようなことや、若者がアルバイト先のオーナー社長の求めに安易に応じて、役員に就くことで責任を負ってしまうことなどは、決して想定し得ないことではない。

 省庁横断的に進めている環境整備においては、若者に対する消費者教育に重点が置かれているが、その他のさまざまなリスクを想定した対応も必要であろう。

[筆者]

常葉大学法学部教授

大久保 紀彦 (おおくぼ・のりひこ)

 

 (KyodoWeekly9月3日号より転載)


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