「音楽の森」妖精の雰囲気

 メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」をご存じだろうか? これはドイツ初期ロマン派を代表する同作曲家が書いた劇付随音楽。劇自体は、夏至の頃に起きる不思議な出来事を描いた、シェークスピア作の喜劇で、人間たちの恋愛に森の妖精の王オベロンやいたずら好きの妖精パックなどを絡めた、幻想的な物語である。そして、メンデルスゾーンの音楽の中であまりにも有名なのが、トランペットのファンファーレで始まる「結婚行進曲」。さらに「序曲」(同曲のみ17歳時の作。メンデルスゾーンの天才ぶりを如実に示す好例として名高い)や「スケルツォ」「夜想曲」など、1部の楽曲は比較的知られている。

 しかし、それら以外の音楽は知名度が低く、耳にする機会もあまりないであろう。そこで今回は、主要な10曲を収めた「真夏の夜の夢」の新録音をご紹介したい。演奏は、イヴァン・フィッシャー指揮/ブダペスト祝祭管弦楽団。同楽団は、ハンガリーを代表する指揮者の1人・フィッシャーが1983年に創設後、長く関係を保ってきた手兵で、同国随一の機能性を誇っている。

 本ディスクは、作曲者のメロディーメーカーぶりと精緻なオーケストレーションを存分に堪能できる名演だ。フィッシャー自身、「私たちはこのレコーディングを、妖精たちのために行った」と述べているが、まさしくそうした“妖精の雰囲気”が、繊細かつファンタスティックに表現されている。

 順を追って主な特徴を記そう。まずは「序曲」の冒頭からデリケートな響きに耳を奪われ、柔らかな運びに魅せられる。「スケルツォ」はしなやかに駆け巡る速い動きが鮮やかだ。女声ソロが入る「まだら模様のお蛇さん」は、その歌声が心地よく、バックのこまやかな動きもニュアンスに富んでいる。「間奏曲」は後半部分のひなびた雰囲気がいい。「夜想曲」は柔らかなホルンの響きが美しさを際立たせ、壮麗な「結婚行進曲」も突出することなく、全体の流れに沿ってまろやかに奏される。「葬送行進曲」はクラリネットの音色と奏法が妙味十分。「終曲」は快適なテンポ感と合唱の絶妙なハーモニーが光っている。

 このCDのもう一つのお薦めポイントは、メンデルスゾーンの姉ファニーの歌曲が三つ収められている点。いずれも本来はピアノ伴奏曲だが、ここでは特別に編曲された管弦楽伴奏が効果を上げている。作曲の才能を高く評価された姉だけあって、各曲ともシンプルで短いながら、実にチャーミング。中でも「5月の夜」の甘美さに酔わされる。

 本作は、滅多に生で演奏されない音楽や未知の楽曲の美しさと楽しさを知り得る、CDならではのメリットを持った1枚だ。

(音楽評論家 柴田 克彦)

 

(KyodoWeekly8月27日号から転載)


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