「本の森」「中国」という神話 習近平「偉大なる中華民族」のウソ

楊海英著

●237ページ

●文芸春秋(税別880円)

 

辺境からの報告

 

 中国論と言えば北京中心の政治、大都市に偏重した経済と相場が決まっているのではないか。こういう偏った情報ばかりに接していると中国という国の全体像がつかめない。

 例えば、最近出た「核心の中国 習近平はいかに権力掌握を進めたか」(朝日新聞中国総局、朝日新聞出版)は確かに面白い。だが共産党内の権力闘争のことしか分からない。圧倒的に広い地域を占める農村で今、何が起きているのか。北京から見て辺境と呼ばれる地域ではどうなっているのか。何が起きていたのか。そんな疑問に答えてくれる本がないかと探していたら本書が見つかった。

 モンゴル出身で日本で国籍取得した文化人類学者で辺境の地についての報告だ。これまであまりお目にかかったことがない経歴の識者の中国論で、教えられることが多かった。著者が2年前に上梓(じょうし)した「逆転の大中国史 ユーラシアの視点から」(文芸春秋)と並行して読んで乏しい知識を補強した。

 

強国への異議

 

 本書はモンゴル、ウイグル、チベットという北京からはるか遠くの内陸アジアからの「告発の書」ということになるだろうか。これらの地域に住む遊牧民は中華世界とはまったく別の独自の文明を築き、価値観も思想も違うのに、中国人は強権を発動して中華民族の一員としてきた。内陸の民は「すべてわが国の少数民族で地方政権」だと決め込んで「統一した国家だった」と考えてきた。

 そして中国人は巨大で豊かな強国という神話を作った。著者はそれに異議を唱え、六つの方法を挙げて説明していく。結婚による民族戦略、絵本による洗脳、地名と文字のイメージ操作、暴力による弾圧、「テロ」というレッテル貼りなどだ。次の短い文章を挙げると、おおよそのことは、理解してもらえるだろう。

 「相手の文化を絶滅に追い込んで同化させることを『文明開化』だと理解し、他人の地下から出る資源を中国内に運ぶ略奪行為を『経済的な発展』とする思考を放棄しなければいけない」「北京が目指す『中華民族の偉大な復興』は少数民族の血と涙の上で進行中だ」

 中国の民族問題は人権問題である。それらを解決するには民族自決権を付与するしか方法がないと訴える。

 日本人にとって耳の痛いことも書いている。いくつか抜き出す。

 日本人は北京からの情報に依存し、中国中心の見方に踊らされていないか。中国人が内陸アジアに移住することは植民地主義なのに、日本の知識人や言論人はそうした事実を見て見ぬふりをしてきたのではないか。文化大革命(文革)を礼賛した日本人が自己清算しようとして切腹したという話を聞いたことがない。

 この文革が内モンゴルでどのように発動されたかを解明した資料集のほか、「墓標なき草原 内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録」(上・下・続刊、岩波書店)という著作もある。

(北風)

 

(KyodoWeekly7月23日号から転載)


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