残された妻はどう守られるのか 民法改正で「配偶者居住権」

 高齢社会が進展する中で、残された配偶者の住居はどのように確保されるべきか? 政策課題であると同時に、民法上の相続と関わる重要な法律問題でもあった。7月6日に国会で成立した民法改正により創設された「配偶者居住権」は、これらの問題を解決するものとして期待される。一方で、新制度はあくまで相続における新たな選択肢の一つであって、その活用には個々の冷静な判断が求められることになる。

 

 Q そもそも相続における妻の立場はどうなっているのか?

 A 子がいれば、まず「法定相続」として、亡夫の全遺産の2分の1を妻が、残り2分の1を子(複数の場合等分)が共有する状態に移行する。重要なのは、その後の「遺産分割」だ。

 分割協議において、夫婦が同居していた夫名義の建物を、妻が取得できなければ、妻は退去せざるを得ないことにもなる。

 もちろん、夫として妻に有利な遺言を残しておけばよいのだが、生前に意思決定がなされ、法定の遺言書が作成・保管されることは少ない。

 Q 子が老いた母親に退去を迫ることなどあるのか?

 A 高齢社会の中、高齢で再婚する男性が増加している。そのような場合、残された妻と、血縁関係にない先妻の子との間の協議は難航する(【図1】参照)。実の母子間だと、いずれ母から再相続を受けられるため、高齢の母に配慮しやすいが、それとは対照的だ。このような問題の解決を企図して、今般「配偶者居住権」(改正法公布後、2年以内に施行)が創設された。

 Q どのような権利なのか。

 A 亡夫名義(又は夫婦共有)の建物に夫婦同居していた場合、妻と子の遺産分割協議において、妻が終身無償で居住できる権利として、提示できる。ただし、一身専属権として譲渡不可かつ、相続もされない。

 その場合、子は不動産の所有権者となるが、高齢の妻の生涯、家賃なしで家主の立場を保つ必要がある。ただし、配偶者居住権の存在を了解のうえ買い受ける者があれば、売却しても構わない。

 もし、この配分案で合意できず、家庭裁判所の審判に進むことになれば「配偶者の生活を維持するため」の必要性を考慮の上、結論が下される。 

 

 

 Q 不動産以外の預貯金などの財産はどう配分されるのか?

 A 現行法では、妻が居住継続を望む場合、所有権を得る選択肢しかなかった。多くの相続において、総遺産に占める不動産価値の割合が大きいため、総取り分を2分の1におさめるためには、預貯金の配分が少なくなり、住居を確保しても生活基盤が脆弱(ぜいじゃく)となる傾向にあった(【図2】の選択肢A)。

 

 

 これに対し、「配偶者居住権」は、おおむね妻の終身居住の家賃相当合計額の現在価値で評価されるにとどまるため、妻としてより多くの預貯金の配分を受けられる(【図2】の選択肢B)メリットがある。

 Q 不動産の所有権は登記が可能で、権利取得を確実にできるが、配偶者居住権はどうか?

 A 配偶者居住権も登記できる権利とされ、残された妻が配偶者居住権を得れば、登記請求権が与えられる。所有権は登記の権利部の甲区という箇所に、配偶者居住権は乙区に記録され、同一不動産において、子と残された妻の権利が併記されることとなる。

 Q 配偶者居住権は、相続トラブルがなければ、あまり持ち出されないものなのか?

 A 必ずしも、そうではない。良好な親子関係においても、配偶者居住権を用いることで、高齢の妻には終身の住居使用と一定の預貯金という必要性の高い財産を、当面の生活に困ることのない子には将来の財産を中心とする配分ができる。遺産分割協議を行う当事者間において、より納得性の高い選択肢が増える意義は大きい。また、遺言で、妻に配偶者居住権を与える「遺贈」も可能だ。今回の改正の別項目として、自筆証書遺言について、財産目録のワープロ作成が認められることになった。さらに、法務局で保管してもらえば、事後の検認手続きが不要となった。今後、遺言の活用で、相続をスムーズに進めることも期待される。

 Q 残された高齢の妻として、遺産分割において配偶者居住権を得ることがベストなのか?

 A 法律論とは別の難しい問題だ。居住建物が1人の生活には広すぎれば、その維持が負担になることもある。終身居住が可能だとしても、健康状態によっては介護施設への入居を余儀なくされることもある。将来を見据えればサービス付き高齢者向け住宅などへの入居がベターな選択肢になることもある。

 Q そのような場合、残された妻にとってどのような遺産分割を求めればよいのか?

 A 現行法でも可能だが、妻は全遺産の2分の1にあたる金額(【図2】の選択肢C)を求めていくことができる。もし不動産の価値が全遺産の2分の1超であれば、預貯金に加えて、不動産を受け継ぐ子から代償金を得て、全遺産の2分の1にあたる金額を受け取ることは可能だ。

 今回の改正で「配偶者短期居住権」も併せて創設され、遺産分割が完了するまでの間、夫名義の家に無償で継続居住することが保証されることとなった。

 近年の判例が要件緩和の上、明文化されたものだが、協議が長引いたり、審判に持ち込まれたりしても、その間の住居は確保される。熟慮の時間は十分に与えられたが、残された妻にとって「終活」としての厳しい選択を行わねばならないと言えるだろう。

 

[筆者]

常葉大学法学部教授

大久保 紀彦(おおくぼ・のりひこ)


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