命運分けた初動の3日間 日大アメフット問題

 

 日本大学(日大)のアメリカンフットボール部選手による悪質なタックルをめぐる問題は、単なる部活動の不祥事にとどまらず、同大学のガバナンス(組織統治)が問われる事態にまで発展している。この問題で、日大は危機管理上の数々の失敗を犯し、教育機関としてのブランドも傷つけてしまった。一体、ここまで事態を悪化させた原因は何だったのか。初動からの状況認識の甘さ、遅きに失した謝罪など、問題点を振り返る。

 

後手に回る対応

 

 問題が起きたのは5月6日、東京都調布市で開かれた関西学院大学(関学)との定期戦。関学のクオーターバックの選手に対し、日大のディフェンスライン、宮川泰介選手が後ろから反則タックルし、けがを負わせた。

 6日時点では、あるアメフットファン向けツイッターで、別のファンが投稿した反則タックルの動画のリンクを付けて、その危険性を指摘していた人がいたものの、一部のアメフットファンを除き、ほとんど話題になっていなかった。

 ところが、翌7日、あるジャーナリストが、ヤフーの個人ニュースに批判的な記事を投稿する。衝撃的な動画のリンクの効果もあって瞬く間に、ツイッターやフェイスブックを通じて拡散し、ネット上で炎上していった。

 改めて動画を確認した関学は10日、日大へ抗議文書を送付。これに対して、日大アメフット部は同日、事実関係への言及もなしに、チームのホームページ上に形式的な謝罪のコメントのみを掲載した。この対応に、事態を重く見た関学は、12日に鳥内秀晃監督らが記者会見を行う。その後、テレビが動画をそのまま繰り返し放映するなど、大手メディアが一斉に報じるところとなった。

 こうして、一部のみで知られていた悪質タックル問題は、多数の「目撃者」のいる大事件へと発展したのだ。

 

ぼやが大火災に

 

 では、日大は、どの時点で、何をすればよかったのか。筆者は5月8日から10日にかけての3日間がポイントだったと考える。

 一般的に不祥事は、ネットで炎上してから、大手メディアが取り上げるまで時間差がある。だが、いったん大手メディアがニュースにすると、情報拡散が一気に促され、“ぼや”だった火の気は“大火災”になってしまう。それゆえ、この時間差でどう対応するかが、命運を分けるのだ。

 こうしたネット世論への感度は、世代によって異なる。日大の内田正人前監督を含む年齢が高い層は、比較的鈍感な傾向がある。ネットの世界で起きていた“ぼや”に気づかず、単なる部活動のけんかと勘違いしたのか、放置してしまったのだ。

 大学のコンプライアンス(法令順守)担当者らと動画を確認すれば、最悪の場合、選手や監督が傷害罪に問われかねない危険な行為なのは明白だった。

 日大側は速やかに選手、監督、コーチらが関学側へ誠実に謝罪し、それが受け入れられたら、どうなっていただろうか。こうした問題は被害者側の処罰感情が、その後の行方を大きく左右する。

 また、社会では、起きたことに対して、それ相応の報いが求められる。初動段階なら、監督辞任は、切るカードとして効果があったはずだ。

 危機管理は起こしたことをなかったことにする魔法ではない。あくまでダメージコントロールであって、無傷で済むことはありえない。最悪の事態を想定して、受容できる損失をシビアに検討する現実的な思考が必要なのだ。

 日大の対応は後手に回り、もはや取り返しがつかない状況に至る。内田前監督や井上奨前コーチが頬かむりする中、5月22日、当事者の宮川選手が日本記者クラブで記者会見を開いた。会見は約1時間に及び、多数の記者やカメラを前に質問に答え、危険なタックルについて、井上前コーチを通じ、内田前監督から指示があったとの認識を示した。

 それを裏付けるかのように、週刊誌などが、試合後の囲み取材の音声データと、その内容を公開した。

 しかし、翌23日開いた記者会見で、内田前監督と井上前コーチは辞任したものの、あくまで指導者と選手との間に「認識の乖離(かいり)」があったと主張。しかも、司会による強引な運営のまずさも手伝い、状況をさらに悪化させた。

 すなわち、本来、最優先で守るべき学生である宮川選手ひとりを、日大は切り捨てたのだ。

 

防衛ライン

 

 その後、焦点は悪質なタックルの問題から日大のガバナンスに移り、結局、問題の試合からひと月近く経った30日になって、内田氏は大学の常務理事をも辞任するに至った。翌31日に第三者委員会も設置されたが、すでに被害選手側から、中立性について疑問が出ている。

 繰り返しになるが、危機管理はダメージコントールにすぎない。初動3日間のうちに、非を認めて関学に許しを請い、内田氏が監督を潔く辞任し、兼務する大学の常務理事としての責任論までは波及しないようにする防衛ラインを引くべきだった。

 今や大学のブランドイメージも傷ついた。日大は大学において最も大事な危機管理である「学生を守ること」を軽視し、教育機関として歴史に大きな汚点を残した。

 

[略歴]

広報・危機管理コンサルタント

大森 朝日(おおもり・あさひ)

共同通信社などで約14年半にわたり、記者として勤務。2007年6月、電通パブリックリレーションズに転じ、数多くの不祥事対応やメディアトレーニングに従事。16年1月に独立。(株)大森朝日事務所代表


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