積み重ねて 得られるものは~畑で思う地域づくり~

 「遠いところから来てくれて悪いね」。あいさつをすると、明るい声が返ってきた。6月中旬、信州・伊那谷の実家に帰省した折、集落の住民が総出で行った草刈りに参加した。既に梅雨に入っており、空模様を心配しながらの早朝作業は約1時間半で終わった。

 人口が減り続ける集落だが、さまざまな行事はある。お祭りのような楽しい集まりもあるが、重要なものは道普請など地域を守る共同作業だ。配布プリントによると、この日の草刈りは集合が午前6時、雨天決行とあった。しかし、額面通りに受け取ってはいけない。以前参加した公民館の清掃では、集合時間の午前6時に行ったところ、あらかた作業は終わっていた。農家の朝は早い。多くの人は1時間ほど前から始めていたのだ。指示通りの時間に来たのは私と移住してきた若い男性だけ。2人で顔を見合わせ、苦笑いした記憶がある。

 教訓を生かして、午前5時過ぎに実家を出た。案の定、隣のおじさんはウオーミングアップを終えた草刈り機を荷台に乗せ、軽トラックにエンジンをかけるところだった。慌てて声を掛け、集合場所まで乗せてもらうことにした。これで、作業に出遅れる心配はなくなった。

 集落と集落をつなぐ道路に出る。クルマがすれ違える程度の細さだが、大事な生活インフラだ。斜面や道路脇の伸びた草を刈っていく。爆音を響かせ、慣れた手つきで草刈り機を操るおじさんたちを横目に、人力で鎌を振るった。残念ながら、技術も経験もない身では機械を使う自信はなかった。参加することに意義があると言い聞かせ、作業を続けた。

 茨城県で地域づくりに取り組む団体が昨年秋、約30席の映画館を開いた。周辺地域で消えた映画のともしびを再びと取り組んだ。寄付を集めたり、廃館となる映画館からイスを集めたりと、東奔西走を重ねた。大手の映画館で上映されない作品を選び、営業を続ける。「この作品を見たかった」と、県外から来る客もいるという。

 奈良県では、林の中に手作りのステージをつくったグループがある。下草を刈り、間伐材を並べ観客席にした。市街地と離れており、アクセスは良くない。それでも、夏に音楽祭を開く。中学生の吹奏楽や、さまざまな団体の歌や踊りが林の中に響く。グループ自らもコーラスを披露する。

 「赤字なんですけどね」。茨城の団体の理事は話す。映画館単体の収支は厳しく、ほかの事業と相殺している。奈良の場合も、音楽祭がビジネスになるわけではない。「でも、集まった人の笑顔がいいんですわ」。代表の男性は笑う。やめるのは簡単だ。しかし、続けることで生まれるものもある。

 「この辺でいいかな」。仕切り役のおじさんの声が掛かり、集落の草刈りは終わった。山あいの地域は元々、草や木で満ちている。作業の成果も目を見張るほどではない。しかし、私のような帰省者も含めて互いを確認し、同じ時間を共有する。地域社会はこうした作業の積み重ねの上にある。帰り道、右腕の張りを快く感じた。

(共同通信企画委員 伊藤 祐三)

 

(KyodoWeekly7月2日号から転載)


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