6月の映画

 

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「デッドプール2」(6月1日公開) ☆☆☆

“赤いクソ野郎”が良いヒーローに変身!?

 マーベルヒーローの中でもとりわけ個性的なデッドプール(ライアン・レイノルズ)の活躍を描くシリーズ第2作。前作で、人体改造により人並み外れた治癒能力と不死身の体を手にしたデッドプール。今回は未来からやって来たマシーン人間のケーブル(ジョシュ・ブローリン)との戦いの中から、ある少年を救い、友情や絆を大切にする“良いヒーロー”へと変身する様子が描かれる。

 今回もレイノルズが製作に参加し、前作同様、過激なアクション、X―MENとのコラボ、下品な下ネタ、コアな映画ネタなどを満載させた。ただし、今回はデッドプールのヒーローとしての成長物語の要素が強いので、時間ネタを絡めて“ちょっといい話”にしている。

 また、前作はラブストーリー、今回は友情が話の根底にあるので、グロさや下品さが緩和されるところもある。というように、本シリーズは一見、ノリの良さが身上のようにも見えるが、実はきちんと計算して作られているのだ。

 

「万引き家族」(8日公開) ☆☆☆

家族とは? 血のつながりとは? を問い掛ける

 祖母、父、母、叔母、息子、娘の6人家族。だが、その実態は、老婦人の年金と、細々とした仕事、そして窃盗で生計を立てる、それぞれが訳ありの血のつながらない疑似家族。本作は、そんな彼らの日常を描いてカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した。

 是枝裕和監督は、これまでも、「誰も知らない」(04)、「そして父になる」(13)などで、家族とは? 血のつながりとは? 幸せとは? を問い掛けた。本作は、これらの発展形、あるいは集大成として見ることもできる。

 ただ、本作もそうだが、彼の映画は、劇映画とドキュメンタリーのはざまで家族というテーマを淡々と描いているようでありながら、同時に、物語の設定や俳優の演技も含めて、問題提起を狙った作意が見え隠れするところがある。そして、最後は明確な結論を出さずに観客に判断を委ねるという手法は、観客への丸投げ的なものを感じて、もやもやが残る。そうした作風に対する好みは分かれるところがあるだろう。

 

「ワンダー君は太陽」(15日公開) ☆☆☆☆

涙が頬をつたうが、ほほ笑みながら見ていられる

 遺伝子の疾患で、人とは異なる顔で生まれたオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)。度重なる手術のため、自宅学習を余儀なくされたが、両親(オーウェン・ウィルソン、ジュリア・ロバーツ)は、10歳になった息子を、学校に通わせることを決意する。オギーは学校でいじめや裏切りといった試練に遭うが、やがて彼の存在が周囲に変化をもたらしていく。

 本作は、オギー、友のジャック、姉のヴィア、その友のミランダというチャプターに分けて、それぞれの視点から多角的に見せるところがユニーク。ミランダが語る「オギーという太陽の周りの家族という惑星の物語」という一言が象徴的だ。話が出来過ぎだと批判するのは簡単だが、この場合、映画を見て、久しぶりに、温かさ、優しさ、すがすがしさを感じたことの方を、素直に喜びたいという気になる。適度なユーモアも効果的。見ながら涙が頬をつたうが、ずっとほほ笑みながら見ていられる。そんな感じの映画である。

 

オンリー・ザ・ブレイブ」(22日公開) ☆☆☆

名もなきヒーローたちの物語

 2013年、米アリゾナ州で発生した巨大な山火事に立ち向かう森林消防隊ホットショットの活躍を、実話を基に描く。

 本作の最大の見せ場は、壮絶な山火事のシーンだが、それを背景に、地方自治体の一団からエリート森林消防隊へと昇格するプロセス、隊員同士の友情と絆、仕事と家族との間で生じる葛藤といったドラマが丁寧に描き込まれている。何より、アメリカではこんなに頻繁に山火事が起きているという事実を知らされてがくぜんとする。

 また、強くて頼れる男の代名詞として「ジョン・ウェインみたい」というせりふが出てくるが、隊の指導員(ジョシュ・ブローリン)の妻(ジェニファー・コネリー)に馬の世話をさせたり、隊の後見人(ジェフ・ブリッジス)にカントリーミュージックを歌わせたりなど、現代版の西部劇を思わせるところがある。それは、本作がアメリカ映画の伝統の一つである、“偉大なる大ばか者=名もなきヒーローたち”を描いた物語だからだろう。

 

「女と男の観覧車」(23日公開) ☆☆☆

どこかに、もっといい人生が待っているはず…

 82歳のウディ・アレン監督の新作。舞台は1950年代のニューヨーク、コニー・アイランド。ウエートレスのジニー(ケイト・ウィンスレット)は、夫(ジム・ベルーシ)と、自身の連れ子と暮らしていたが、海水浴場でライフガードのアルバイトをする大学生のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と浮気をする。ジニーはミッキーとの未来を夢見るが、そこに夫の娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)が現れて…。

 原題の「WonderWheel」はコニー・アイランドの観覧車の名前。眺めはいいが、いつも同じ場所を回転しているだけで、決して別の場所に行くことはできない、という意味で象徴的なものとして映る。また、狂言回し的な役割を果たすミッキーのキャラクターにアレンらしさが感じられる。

 ただ「ここではないどこかに、もっといい人生が待っているはず」と思い込み、自分勝手な行動を取るジニーに、感情移入ができるか否かが、本作の好悪の分かれ目になるだろう。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly6月25日号から転載)


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