5月の映画

 

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「君の名前で僕を呼んで」(4月27日公開)☆☆☆

美しくも切ない男同士の恋物語

 1983年、北イタリアの避暑地。17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、考古学者の父を手伝いに来た24歳の大学院生オリバー(アーミー・ハマー)と恋に落ちる。

 オリバー役が女性なら、よくあるティーンエージャーと年上の人との切ない恋物語だが、本作は、男同士の恋という点で異彩を放つ。自らも同性愛者のジェームズ・アイボリーが脚色しただけに心理描写が細やか。その脚本を基に、監督のルカ・グァダニーノが繊細な演出を施し、美しくも切ない映画として完成させた。

 ただ、例えば女性同士の恋を描いた「キャロル」などにはあまり違和感を抱かないのに、「ブロークバック・マウンテン」など、これまでの男同士の恋(特にラブシーン)を描いた映画には、見ていてどうにも居心地の悪さを感じさせられた。だが本作は、人が人を恋する感情を丁寧に描き、同性愛うんぬんではなく、恋をする若者の思いの切なさを描いた映画なのだと納得させてくれた。

 

「モリーズ・ゲーム」(5月11日公開)

☆☆☆☆

名脚本家の監督デビュー作

 「ソーシャル・ネットワーク」「マネーボール」「スティーブ・ジョブズ」と、実在の人物の知られざる裏側を描いてきた名脚本家アーロン・ソーキンの監督デビュー作。

 今回は、ジェシカ・チャステインを主役に迎え、女子モーグルのオリンピック候補から一転、26歳でセレブが集う高額ポーカールーム(レオナルド・ディカプリオも顧客の一人だった)の経営者となりながら、違法賭博の罪でFBIに逮捕された実在の女性モリー・ブルームの数奇な半生を描く。

 チャステインが「女神の見えざる手」に続いて、悪女と見せかけておいて、実は…という主人公を見事に演じている。そしてモリーはもとより、彼女の弁護士(イドリス・エルバ)、個性的な顧客たち、モリーと対立する父親(ケビン・コスナー)などの人間ドラマがしっかりと描かれているから、ポーカーのルールを知らなくても十分に楽しめる。さすがは実録映画の名手ソーキン。この映画も見事に面白い。

 

「MIFUNE:THELASTSAMURAI」(12日公開)☆☆☆

名優・三船敏郎の生涯を描く

 名優・三船敏郎の生涯を描くドキュメンタリー映画。監督は「ヒロシマナガサキ」などで知られる日系3世のスティーブン・オカザキ。チャンバラ映画の歴史や、先の戦争について説明する冒頭を経て、本題の三船の人生に入っていく。三船が出演した映画の名場面と、関係者へのインタビューを中心に構成されている。

 証言者は、息子の三船史郎、役所広司、共演女優の香川京子、司葉子、二木てるみ、八千草薫、スクリプターの野上照代、殺陣師の宇仁貫三、そしてマーティン・スコセッシ、スティーブン・スピルバーグほか。15年に製作された映画なので、最近亡くなった加藤武、中島春雄、夏木陽介、土屋嘉男の貴重な証言も聞ける。

 土屋が「三船さんは我慢の人」と語っているのが印象的。黒澤明が三船に送った弔辞を香川が朗読するラストシーンも心に残る。全体的に黒澤映画の三船に偏り過ぎている気もするが、こうした映画が作られること自体が貴重なのだ。

 

「ランペイジ巨獣大乱闘」(18日公開)☆☆

ジョンソンが怪獣たちと互角に渡り合う!?

 遺伝子操作の実験の失敗によって、ゴリラとオオカミとワニが巨大化かつ凶暴化する。シカゴを舞台に、大乱闘を始めた“怪獣たち”に、元特殊工作員で今は動物学者となったドウェイン・ジョンソンが立ち向かうというはちゃめちゃな設定。特撮を前面に押し出した“超絶映画”だ。もともとがアーケードゲームだったこともあり、アトラクション的な要素が強い。

 元プロレスラーのザ・ロックことジョンソンありきの映画。例えば、ジャングルのシーンでは同じく彼が主演した「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」を思い出し、ヘリコプターのシーンでは「カリフォルニア・ダウン」を思い出す。それにしても怪獣たちと互角に渡り合ってしまうジョンソンは、いくらなんでも…と思いつつも、最後は「まあ、彼の映画に理屈は要らないか」と妙に納得させられてしまう。これもまたお決まりのパターン。何も考えずに楽しめるところが、ジョンソン主演映画の魅力だ。

 

「妻よ薔薇のように家族はつらいよⅢ」(25日公開)☆☆☆

今回は専業主婦の労働問題がテーマ

 山田洋次監督による「家族はつらいよ」シリーズの第3作。1の熟年離婚問題、2の高齢者ドライバーや無縁社会の問題に続いて、今回は専業主婦の労働問題が“喜劇”の中で描かれる。今回の表向きの主役は平田家の主婦で、夫(西村まさ彦)への不満から家出する妻・史枝役の夏川結衣だが、裏の主役は家族の絆を取り持つ次男・庄太役の妻夫木聡だろう。

 また、タイトルの「妻よ薔薇(ばら)のように」は、成瀬巳喜男監督の「妻よ薔薇のやうに」から取られているし、劇中には、成瀬が映画化した林芙美子の「めし」の引用や、黒澤明監督の「生きる」のパロディーシーンもある。これらは山田監督なりのサービスだと言えよう。

 最近は、一つ年上のクリント・イーストウッドが映画を撮れば、負けじと山田洋次も撮るという感じである。80歳を超えてなお、これだけの映画が撮れるとは…。特にこのシリーズは、回を追うごとに喜劇としての鮮度が上がってきていることに驚かされる。

(映画ライター 田中 雄二)

 たなか ゆうじ 1961年生まれ。著書に「人生を豊かにするための50の言葉~名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方~」「外国映画女優名鑑」などがある。

 

(KyodoWeekly5月28日号から転載)


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