3月の映画

 

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 「シェイプ・オブ・ウォーター」(3月1日公開)☆☆☆☆

まか不思議な“デル・トロ・ワールド”

 1962年、米政府の研究機関で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は、ひそかに運び込まれた半魚人(ダグ・ジョーンズ)に心を奪われる。メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督が、「大アマゾンの半魚人」(54年)を現代流にアレンジし、種族を超えた愛の物語として描いたファンタジーロマンス。

 デル・トロ監督は、声が出せないイライザ、人間ならぬ半魚人、イライザの隣人のゲイの画家、イライザと共に働く黒人女性といったマイノリティーを物語の中心に置くことで、差別や人種の違いといった問題を浮き彫りにしていく。アカデミー賞で、作品、監督賞他を受賞したのは、そうした部分が高く評価された結果だろう。

 また、イライザが住むアパートの部屋、その階下にある映画館、研究所の独創的なセットの形状や色使いなど、もはや“デル・トロ・ワールド”と呼ぶほかないような、まか不思議な世界を現出させたことも特筆に値する。美術賞の受賞も納得である。

 

「15時17分、パリ行き」(1日公開)☆☆

新たな試みではあるが…

 2015年に欧州の高速列車タリス内で発生した銃乱射事件の犯人に立ち向かった3人の若者の姿をクリント・イーストウッド監督が描く。80歳を過ぎてからの彼の仕事ぶりには驚かされるばかりだが、今回も、俳優ではなく事件の当事者が自分自身を演じ、実際に事件が起きた場所で撮影するという、新たな試みに挑んでいる。

 実話を、映画的に、時系列を操作して描くという手法は、前作「ハドソン川の奇跡」と同じだが、今回は94分という短い時間の中で、事件そのものを描いたのはラスト近くの20分ほどに過ぎない。それよりも問題児扱いされた3人の子ども時代や、事件直前の3人のヨーロッパ旅行のスケッチを丹念に見せる手法には、正直なところ戸惑いを覚えた。

 イーストウッドとしては、あくまでも“普通の人々の物語”として、あるいは問題児がヒーローになる皮肉を描くことに重点を置いたのかもしれないが、「ハドソン川の奇跡」に比べると違和感が残るのは否めない。

 

「リメンバー・ミー」(16日公開)☆☆☆

メキシコを舞台にした家族の絆の物語

 ディズニー/ピクサーの新作アニメーションの舞台はメキシコ。ミュージシャン志望の少年ミゲルは“死者の世界”に迷い込み、日の出までに元の世界に戻らなければ、永遠に家族と会えなくなるというピンチに陥る。

 亡き人とのつながりを大切にする、メキシコの“死者の日”の精神を核にした家族の絆の物語。リー・アンクリッチ監督は「私たちは、自分が死んだ後も、自分が子孫にとって大切な存在であり続けると信じたい。この映画では、思い出を持ち続けることがいかに大切かということを描きたかった」と語る。図らずも日本の盆とも共通する精神が描かれている点が興味深い。

 カラフルに表現された死者の世界はまさにピクサーアニメの真骨頂。アカデミー賞で歌曲賞を受賞したテーマ曲「リメンバー・ミー」などの音楽も耳に残る。原題の「ココ」はミゲルの曾祖母の名前で、映画を見れば「なるほど」と思えるが、今回は珍しく邦題の方が的を射ている。

 

「ペンタゴン・ペーパーズ最高機密文書」(30日公開)☆☆☆☆

ドラマと映像の魅力が見事に共存

 1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、反戦の機運が高まる中、米国防総省(ペンタゴン)が作成した、ベトナム戦争に関する極秘文書が流出する。ワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、ニューヨーク・タイムズのスクープ記事に対抗するため、残りの文書を入手して、公表しようと奔走するが…。

 実話を基に映画化したスティーブン・スピルバーグ監督の最新作。実はこの映画の主人公はブラッドリーではなく、メリル・ストリープが演じるワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムであり、彼女の米新聞社初の女性社主としての葛藤が物語の中心となる。

 そして、グラハムとブラッドリーの関係の変化や、記者たちの動静を通して“ジャーナリスト魂”を浮かび上がらせるドラマとしての魅力と、時間制限のある中で、印刷の輪転機が回るまでの緊迫感を映す映像的な興奮を共存させる職人技に、映画の申し子スピルバーグの本領が発揮される。

 

「トレイン・ミッション」(30日公開)

☆☆☆☆

通勤電車を舞台にした至極のサスペンス

 「アンノウン」、「フライト・ゲーム」、「ラン・オールナイト」に続く、ジャウム・コレットセラ監督、リーアム・ニーソン主演によるアクション映画の最新作。今回は、定年間近で保険会社からリストラされた元刑事(ニーソン)の身に突然降りかかる罠の恐怖を描く。冒頭で主人公の毎日の通勤風景の積み重ねを見せることで、彼がごく平凡な男であることを強調し、普通の男が巻き込まれるサスペンス劇としての種をまく。その点、アルフレド・ヒチコック作品をほうふつとさせるが、通勤電車が舞台というアイデアが意表を突いて面白い。

 作家のスティーブン・キングが本作を「ヒチコックとアガサ・クリスティが交錯したような至極のサスペンス」と評したように、コレットセラとニーソンのコンビネーションは今回も快調。「沈黙―サイレンス―」や「ザ・シークレットマン」で演技派に回帰したかと思わせたニーソンだが、こういう映画のことも忘れてはいなかったのだ。

(映画ライター 田中 雄二)

  たなか ゆうじ 1961年生まれ。著書に「人生を豊かにするための50の言葉~名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方~」「外国映画女優名鑑」などがある。

 


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