2017年映画ベストテン

 年末恒例の映画ベストテン。結局邦画は1本も入らなかった。見終わって暗い気分になるものが多かったからだ。10本は、筆者の好みが色濃く反映された結果なのでお許し願いたい。選外となったが「ムーンライト」、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、「ジーサンズ」、「ファウンダー」、「女神の見えざる手」、「バリー・シール」、「ローガン・ラッキー」など、大作以外の作品に見るべきものが多かった。

 

1位「ドリーム」

 1960年代初頭、NASAに務める3人の黒人女性が、人種と性別による差別を克服し、有人宇宙飛行計画に多大な貢献を果たしたという、知られざる事実を描く。監督のセオドア・メルフィは「人種も、性別も、経歴も関係なく、人はその才能でこそ判断されるべき」という思いを物語の柱とした。これまで無名であった彼女たちの存在や功績を知らしめたところに、本作の価値がある。見終わった後で、元気になれること間違いなしの映画だ。

 

2位「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」

 1950年代から映画の絵コンテを担当した夫のハロルド、後に映画リサーチャーとして活躍した妻のリリアン。多くの映画に多大な貢献を果たしながら、ほぼ“無名”のままで終わった2人の人生にスポットを当てたドキュメンタリー。無名ではあるが、自分たちの仕事や人生に誇りを持つ2人の姿がりりしく映る。また2人の姿を追いながら、スタジオシステムの崩壊や独立プロの没落といった米映画史の側面を浮き彫りにした点も素晴らしい。

 

3位「カフェ・ソサエティ」

 舞台は1930年代。エージェントの叔父を頼ってハリウッドを訪れたボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、叔父の秘書に心を奪われ、やがて結婚を考えるが…。監督は82歳の名匠ウディ・アレン。必ずしも一致しない夢と現実、かなわぬ恋を、甘く切なく、時に苦さも加えて描くのは彼の得意技だが、今回は、時を同じくして公開された「ラ・ラ・ランド」との共通性が目を引く。アレンの老練の技の方に軍配を上げた者も多かったのではないか。

 

4位「ラ・ラ・ランド」

 女優志望のミア(エマ・ストーン)と売れないジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)の恋愛模様をミュージカル仕立てでつづる。デイミアン・チャゼル監督は、全編に音楽への愛をあふれさせ、2人の恋を四季に分けて描きながら、懐かしさと新しさが混在する摩訶不思議な世界を作り出した。ロサンゼルスの愛称であり、気分が高揚する状況や“夢の国”の意味もあるタイトルが、そのまま観客の気持ちを表わす言葉ともなった。

 

5位「ベイビー・ドライバー」

 犯罪組織の逃がし屋ドライバー、名前はベイビー(アンセル・エルゴート)。運転の天才である彼は、音楽を聴くことで、事故の後遺症の耳鳴りが消え、その才能が覚醒する。映画狂のエドガー・ライトが監督した本作は、犯罪を描いているにもかかわらず、スタイリッシュな映像、音楽と一体化したカーチェイス、音楽のビートに合わせて銃声が響くといったミュージカル的な要素から、クライム版の「ラ・ラ・ランド」とも称された。

 

6位「沈黙―サイレンス―」

 17世紀、宣教師のロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)は消息不明となった師の行方を探るため日本を訪れる。遠藤周作の「沈黙」を、マーティン・スコセッシ監督が映画化。激しい弾圧の中、厳しい選択を迫られるロドリゴの姿を通して、人間の強さと弱さ、善と悪、信仰とは、神の沈黙といった宗教の根幹に関わる問題に切り込んだ。異文化の衝突という現代にも通じる問題を提起した力作だ。

 

7位「ライフ」

 火星で未知の生命体の細胞が採取され、国際宇宙ステーションで極秘調査が開始された。だが、カルビンと名付けられた生命体は次第に進化、成長し、宇宙飛行士たちを襲い始める。本能に従って生き残ろうとするカルビンと、彼を地球に行かせまいとする飛行士たちの攻防が見どころ。宇宙ステーションという密室で繰り広げられる死闘はまさに緊張感たっぷりで、皮肉にも今年公開された本家「エイリアン:コヴェナント」よりも上と見た。

 

8位「メッセージ」

 ある日突然、謎の巨大物体が地球にやって来た。その目的は不明。言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)らは、“彼ら”との接触を試みるが…。本作は異星人とのコンタクトをテーマにした哲学的なSF映画の系譜に連なるが、ルイーズの心の旅を見せながら、時の概念を超越した世界を現出させるというテーマは目新しく映る。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。「ブレードランナー2049」よりも、こちらの方が好奇心を刺激された。

 

9位「ダンケルク」

 1940年、フランス北端のダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士たちは、絶体絶命の状況に陥る。英国は民間船まで動員して救出作戦を開始するが…。陸海空と、それぞれ異なる時間軸の出来事を、一つの物語として同時進行させたクリストファー・ノーラン監督の演出が見事だ。主人公と一緒に、否応なく戦場へ連れて行かれ、訳が分からぬまま、その渦中に身を置いたような気分にさせられる。“体感する映画”だと言ってもいい。

 

10位「人生はシネマティック!」

 1940年、イギリス・ロンドン。ダンケルクで英軍兵士を救った双子の姉妹を描く映画に、素人のカトリン(ジェマ・アータートン)が脚本家として参加することになるが…。本作の背景は、戦時下という特殊なものだが、カトリンが映画人として成長していく姿を見ていると、映画作りに参加しているような高揚感が味わえる。また、鳥瞰(ちょうかん)的な戦争物である大作「ダンケルク」と、市井の側から外伝的に描いた本作が、同時期に作られた事実も興味を引く。

 では、来年も映画を楽しく語りたい。

(映画ライター 田中 雄二)


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