Part1に続き、今回取り上げるのは一般社団法人「エシカル協会」(東京)の代表・末吉里花(すえよし・りか)さん。
末吉さんは元フリーアナウンサー。テレビ番組の取材でアフリカの最高峰・キリマンジャロを訪れた際、その氷河が大幅に溶けている実態を目の当たりにして地球温暖化などへの問題意識を強めた。次のターニングポイントとなったのは、アパレルブランド「ピープルツリー」との出会い。雑誌でピープルツリーのワンピースを見かけた時はそのかわいらしさから興味を持ったが、その後、ピープルツリーが行うフェアトレードやその生産背景に感銘を受け、末吉さんは創業者であるサフィア・ミニーさんに会いに行く。そこからフェアトレードについて学んだり、ミニーさんとともに実際の生産現場を訪ねたりするなどの経験を踏む。そして2010年、より多くの人にフェアトレードの重要性やその魅力を知ってもらいたい、とフェアトレード・コンシェルジュ講座を開始する。年に2回開催していたフェアトレード・コンシェルジュ講座は、現在もエシカル・コンシェルジュ講座としてエシカル協会が継続して実施している。この10年間で輩出したコンシェルジュ資格者は約1,700人に及ぶ。
■フェアトレードからエシカルへ
末吉さんがちょうどフェアトレード・コンシェルジュ講座を始めたころ、フェアトレードを含む「エシカル消費」という考え方がイギリスから日本へと入ってくる。エシカル消費とは、“地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地球環境に配慮した消費・サービス”のこと。そして、このエシカル消費の対象となるモノ・コトは、伝統工芸・寄付つき商品・地産地消・障害者支援・再生可能エネルギーなどと実に幅が広い。末吉さんは、今後の日本での広がりを考えた時、エシカル消費という概念の方が携われる人が多いと思い、コンシェルジュ講座の第一期生二人とともに2015年、一般社団法人「エシカル協会」を立ち上げる。
〈エシカル協会分類による「エシカル消費」の具体例〉
1)環境への配慮:再生可能エネルギー、間伐材を使用した商品、クルエルティフリーなど動物福祉に配慮した商品、魚のエコラベルなど認証ラベルを取得している商品
2)社会への配慮:フェアトレードを含む生産者やその地域を支援する商品、障害者支援となる商品、寄付つきの商品
3)地域への配慮:地産地消、被災した地域を応援する商品、伝統工芸
など
■唯一の正解はない
末吉さんが最近よく相談されることは、「エシカル消費の範囲が多岐にわたるので、どれが最善の選択か悩む」という内容。例えば、「100%リサイクルポリエステルのTシャツと100%オーガニックコットンのTシャツはどちらがよりエシカルか?」「太陽光発電と風力発電はどちらがよりいいのか?」。一見難しい選択ではあるが、末吉さんは以下のように考えている。「完璧なものはない。(どの商品・サービスも)良い点もあれば悪い点もある。エシカルに唯一の正解はなく、自分の価値観で優先順位を決めて選ぶしかない。」
Part3では、エシカル的考え方やその実践方法についてお伝えする。