JAFが学童用チャイルドシートの使用を啓発 身長の目安を「150センチ未満」に拡大
日本自動車連盟(東京都港区、JAF)は9月12日、東京都多摩市のJAF中央研修センターで開いた報道陣向け説明会で、「学童用チャイルドシート」の使用推奨対象児の目安を「身長140センチ未満」から「身長150センチ未満」に拡大することを正式に発表した。道交法上チャイルドシートの使用義務がない6歳以上の子どもを自動車に乗せる場合であっても、身長150センチ未満を一つの目安として提示し、乗車する子どもの安全性を高めるために、学童用チャイルドシートの使用を啓発していくという。
JAFによると、小学生を主な使用者に想定する学童用チャイルドシートの使用推奨の身長目安を巡っては、チャイルドシートの着用推進団体・メーカーの間で「135センチ未満」「140センチ未満」「150センチ未満」とばらつきがあり、保護者の使用判断に無用の混乱と不安を与えることが懸念されていたという。
また8月に福岡県で起きたバスと軽自動車の衝突事故で、軽自動車の後部座席に乗っていた学童用チャイルドシート未着用の7歳と5歳の姉妹がシートベルトで腹部に衝撃を受けるなどして亡くなったと見られる死亡事故があり、自動車に子どもを乗せる保護者の安全対策への不安に対応する必要性も高まっていた。
JAFは「身長150センチ未満」の新しい推奨目安を基に、学童用チャイルドシートの適切な使用に対する保護者への啓発活動を今後強化していく方針だ。
また、後部座席の子どものダミー人形が学童用チャイルドシートを使用した場合と不使用の場合とで、衝突事故時にどのような被害の差が出るかを検証する「衝突テスト」の動画や、チャイルドシートの正しい取り付け方・適切な着座方法をJAF職員が分かりやすく説明した動画も公開して、保護者らに注意喚起していく。
この日の説明会であいさつしたJAF本部交通環境部の柴田年輝部長は「チャイルドシートの使用は車内の子どもを守る唯一の方法だが、JAFが警察庁と実施した調査では、使用が義務付けられている6歳未満のチャイルドシ-トの使用率は7割強で、年齢が上がるにつれて使用率は低くなっている。またチャイルドシートを使用していても4割強の子どもは正しく着座していないことが判明している。チャイルドシートを使用していても正しく着座しないと重大な事故につながりかねない」と指摘。
また「チャイルドシートの法的使用義務がない6歳以上の子どもでも体格によってはシートベルトだけでは十分な安全効果が期待できないこともあり、体格に合った学童用チャイルドシートを適切に使用してほしい」と述べ、使用義務年齢にかかわらず、子どもの体の成長具合に配慮した安全対応を呼び掛けた。
この日は、身長約140センチの男児、同145センチの男児、同150センチの女児の3人をモデルに、学童用チャイルドシートを使用した場合と、シートベルトのみ使用の場合の、肩付近にかかるシートベルトの位置の違いや、腰周辺を覆うシートベルトの上下位置の差を見せるデモンストレーションも行われた。
身長約150センチの女児はシートベルトのみ使用の場合は、事故時にベルトが首を圧迫しないよう鎖骨と胸の中心にかかることが求められる肩付近のベルトが、やや首寄りに位置していた。腰周辺のベルトも事故時に腹を圧迫しないよう、本来は硬い腰骨に位置すべきだが、腰骨よりやや上にあるように見えた。
一方、背もたれを外し、お尻の下のシート部分のみを取り付けた学童用チャイルドシートに同女児が座った場合のシートベルトの位置は、肩は鎖骨と胸の中心にきちんとかかり、腰周辺を覆うベルトも腰骨に位置する、理想的なシートベルト着用状態に修正されていた。
デモンストレーションの進行役を務めたJAF本部交通環境部調査研究課の丹野祥孝主管は「シートベルトの正しい着用状況を確認する際の重要ポイントは、シートベルトが子どもの首や腹部にかかっていないことだ。今回示した身長150センチ未満の数値は、あくまでチャイルドシート使用推奨の目安であり、体格の違いなどで、シートベルトの位置はそれぞれの子どもで異なってくる。保護者は乗車した子どもの首や腹部にシートベルトがかかっていないことをしっかり確認してほしい」と説明した。