初産当日知らされた夫の不倫、なぜ許せたか 元衆議院議員・金子恵美氏『許すチカラ』発刊

『許すチカラ』

 2016年2月、第一子出産当日に夫から知らされた「実は週刊誌に載ります」。内容は、陣痛の間も腰をさすり続けてくれた夫の、不倫問題。当時、夫婦ともに衆議院議員だった金子恵美氏と宮崎謙介氏。金子氏の妊娠中に宮崎氏が育休取得宣言をして注目されていたこともあり、世間の関心と批判は特に宮崎氏に向かった。現在、宮崎氏は実業家・テレビのコメンテーターとして、金子氏もコメンテーターとして活動。夫婦で一緒に番組に出演することもある。夫の不倫を経て、家族再生の道を歩んできた金子氏が、著書『許すチカラ』(集英社)を10月5日に発刊した。金子氏に、家族や著書への思いを聞いた。

――この本を書こうと思ったきっかけを教えてください。

 離婚しないで子どもを含めて3人で生活をしていくことを選ぶのは、私にとっては極めて自然なことでした。お互い政治家であり、政治家・宮崎謙介へのリスペクトが大きく、宮崎がそれまで私にしてくれてきたことへの思い、1回の過ちの大きさも感じながらそれが宮崎のすべてではないという思いがありました。宮崎自身の、私や家族から許されるための苦悩や努力、子どもに父親としての背中を見せるためにこれまでひたむきに前を向いてやってきた姿がありました。

 しかし、当時は私の地元でも、「離婚しないというのはありえない」という反応がほとんどでした。今、こうしてテレビなどのお仕事をいただくようになってからも、いろいろな方々から「あのとき頑張ったね」と言っていただくこともあります。でも、「非常に心の広い人だね」と言われるのも、「簡単に許した」と思われるのも、私にとっては違うのです。この4年間、もちろんいろいろな葛藤もありながらも、私は「許した」ことで今、幸せでいられています。「許す=離婚しない」「許さない=離婚する」ということでもなく、許したから心が広くて強い女性だというのも違うと思いました。

 宮崎と一緒にいることに対して、“ビジネス夫婦”だとか“仮面夫婦”などとも言われてきました。「どうしてそんな思考回路なんですか?」なんて聞かれることも結構あります。でも、このような事態が起きた時、個々の夫婦にしか分からない事情があり、それぞれの夫婦の選択を認める社会であってほしいと感じています。また、これまでの人生における家庭環境と経験の中で、私はこういう価値観を持つようになり一つ一つの選択をしているということを、お伝えしておきたいと思いました。

――コロナ禍でも、異なる価値観を認められなかったり、正義感が行き過ぎて攻撃につながったりする現象があります。ネット上の誹謗(ひぼう)中傷も社会問題となっていますね。

 人それぞれの価値観・考え方・選択があります。表面に出てきていることだけではなく、その背景には何かきっとあるんだということをちょっと考えたり、許容したり、尊重する社会であってほしいなと感じています。

 夫の騒動の時に、1回の過ちに対して糾弾し、社会全体が「悪」と見なす。「悪者だ!」となったら完膚なきまでに排除しようとする……。宮崎のこと以降も、著名人や立場のある人のスキャンダルが明るみに出ると、同じような社会の反応が繰り返されるのを見て、非常に大きな違和感を持っています。だれしも失敗をするし、過ちを犯したくなくても犯してしまう可能性があるのに、1回の過ちをもって、それがその人のすべてだと決めつけてしまう。そして、そこまで思っていない人も、大勢の意見と違うことを言うと自分まで攻撃されるから、無難な方に行く流れもあるように思います。当時は、当事者の私がそのようなことを言っても言い訳になってしまうので言えなかったのですが。

 最近、私がある番組で安倍総理の辞任表明を受けての批判意見に対し、「選挙に出て総理になってから言ってもらいたい」というようなことを申し上げました。選挙に出て国家国民のためにという思いで仕事をしてきた人間が、病気でやめなければならないということが、どんなに苦しい、悔しいことかというのは、一回選挙に出ていれば分かるという思いからの発言でした。政治家、総理と言え一人の人間の健康に対し、最低限の気遣い、敬意を払いたいという率直な思いでした。しかし、「総理にならなきゃ言うな」という形で切り取られて拡散され、私へのものすごい攻撃がネット上にも出ました。安倍さんの病気すら、うそじゃないかという話まで出る。このぎすぎすした社会において、何か発散したいものや鬱屈したものがあるのかもしれませんが、これはどうしたことなんだろうと。ネットの不寛容さと言ったらいいでしょうか。ネットで出てくる情報も全部飲み込むのではなくて、「でもこういった側面での見方もあるよね」と立ち止まって考えるようなゆとりを、自分自身も持っていたいと思うのです。

 行き過ぎた追及や攻撃は、社会を生きづらいものにしてしまっているし、いつか自分もターゲットになるかもしれない。特にネットに関しては、技術の進歩に人間のモラルが付いていっていないところがあるんだろうなあと、感じます。そういうことを、1人1人が感じた方がよいと思うのです。

――今回本を出されることに対し、夫の宮崎さんや、本の中でも登場されるお母さまの反応はいかがでしたか?

 夫はまさに一番の当事者。もちろん自分のやってしまったことが原因ですが、世の中の批判のターゲットになり、「許しがたい人間」とネットやテレビで言われてきて、本人もこの4年間、苦しかったと思います。彼なりのけじめと反省があり、今もなお、みそぎだ、みそぎだと言って生きています。私たちは、夫婦といっても同志のようなところがあるので、騒動も含めた今までを振り返り、私自身の視点で振り返りまとめることを応援してくれました。

 あの騒動の後、母と(2019年に亡くなった)父が味方についてくれていなかったら、宮崎も苦しかったと思います。今でも母も一緒に「いやあ、つらかったよねえ」と話すこともあります。今でこそ、私もテレビに出させていただいたり、今回のような総裁選を控えた時に、宮崎も政治のネタで呼んでいただいたりしてもらえるようになりました。母は私たち夫婦の苦しい時を間近で見ていて、それこそ宮崎の、苦悩からの死にそうな状態も見てきたので、宮崎が再生し、1人の人間として元気に活動しているのを一番喜んでいるのは母ではないかと思います。

 23年間(新潟県月潟村の)村長をしてきた父は、極めて高い調整能力・問題解決能力の持ち主でした。宮崎の騒動の時も、宮崎が自分にはすごく言いづらい立場だろうということを一番理解したからこそ、彼を追い詰めてしまうこと、逃げ道をなくしてしまうことを避けたのでしょう。父のおかげで、まずは私たちの子ども、両親にとっての孫のことを第一に考えることで、家族みんなが生産性のある考えをし、前に進めました。父が亡くなったとき、父に向かって、「おかげさまで大丈夫ですよ。本当に幸せだから安心してね」と言って送りました。

――著書の中では女性の生き方や子育て支援、夫婦の協力体制、介護や医療問題についても提言されていますね。

 窮屈な生きづらい社会だからこそ、一層自分のキャリアや自己実現などに一生懸命な女性も多く、さらに家庭のこともやらなければいけない。いっぱいいっぱいになってしまい、なんとなく余裕がなくなってしまっている部分があるかもしれません。女性が力を発揮していくために足りない部分は、政治や社会がもっと手を差し伸べてカバーしていかなくてはいけないと思い、本の中で政策提言もさせていただきました。

 夫婦の協力体制について、私たち夫婦は、ざっくり言うと、「得意な方がやるべきだよね」「それを本人が気持ちよくやれる環境を作った方がいいよね」という考えです。目先のことだけに目が向いていると、育児や家事においても相手のうまくできていないところ、そのとき十分に関われていないことに目が行ってしまって、「うーん、違う!」となってしまい、小競り合いも起きがちです。お互いが得意なこと、やれることを中長期的に見て、総合的に協力体制を築いていけたらと思っています。

取材・文・写真 千葉美奈子

■金子恵美(かねこ・めぐみ)

金子恵美氏
金子恵美氏

 1978年新潟県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。新潟放送勤務、新潟市議会議員、新潟県議会議員を経て、2012年に衆議院議員初当選。16年に総務大臣政務官に就任、地方自治・IT行政・優勢を担当し、10年間の衆院議員生活を経て、現在は企業顧問・テレビコメンテーターを中心に活動中。

 公式Twitter「金子恵美オフィシャル」@kanekomegumioff

■『許すチカラ』

集英社刊、10月5日発売。税別1,000円。新書版ソフトカバー、208ページ。

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