新たな“知”切り開く俊英8人を表彰 第41回サントリー学芸賞贈呈式

第41回サントリー学芸賞の受賞者。前列中央はサントリー文化財団の鳥井信吾理事長=東京都千代田区
第41回サントリー学芸賞の受賞者。前列中央はサントリー文化財団の鳥井信吾理事長=東京都千代田区

 独創的で優れた研究、評論活動をたたえる「第41回サントリー学芸賞」の贈呈式が12月9日、東京都内で開かれた。関係者約400人が出席する中、「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の各部門の受賞者計8人に記念の盾と副賞300万円がそれぞれ贈られた。

 主催者を代表してあいさつしたサントリー文化財団の鳥井信吾理事長は、各受賞者の研究評論の優れた着眼点と成果などを紹介した上で、「素晴らしい研究に敬意を表したい」と今後のさらなる飛躍に期待を寄せた。

あいさつするサントリー文化財団の鳥井信吾理事長
あいさつするサントリー文化財団の鳥井信吾理事長

 受賞者はそれぞれ受賞の喜びや今後の抱負を述べた。『「家族の幸せ」の経済学―データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社)を著し、政治・経済部門で受賞した山口慎太郎・東京大大学院経済学研究科准教授は「実証的分析を進めていく上で重要なのはデータ、統計調査の質。最近のニュースでは統計調査の質が下がっているとしばしば耳にする。その背景には統計データの重要性について世の中に皆さんに十分ご理解いただいていない面がある」と指摘し、「今回の本を通じてデータ分析の面白さと社会的調査の重要性に少しでも思いをはせていただければ、著者として光栄」と語った。

統計調査の重要性を訴えた山口慎太郎・東京大大学院経済学研究科准教授
統計調査の重要性を訴えた山口慎太郎・東京大大学院経済学研究科准教授

 『分解の哲学―腐敗と発酵をめぐる思考』(青土社)を著し、社会・風俗部門で受賞した藤原辰史・京都大人文科学研究所准教授は「この本は、捨てられたモノ、社会から漏れ出た人々、社会から剥がれ落ちた人々の面からもう一回、歴史や文化現象を問い返した。これはマルクスの“ルンペン観”への批判でもある。マルクスがルンペンと言った人々にこそ、いまの閉塞感ある時代状況を変える力があるという信念で書いた。この重いテーマを扱った本書の受賞は、死ぬまでこの重いテーマに関われという励ましのメッセージとして受け取った」と話した。

【社会から“捨てられた”人々・モノに焦点を当てた藤原辰史・京都大人文科学研究所准教授
【社会から“捨てられた”人々・モノに焦点を当てた藤原辰史・京都大人文科学研究所准教授

 『徂徠学派から国学へ―表現する人間』(ぺりかん社)を著し、思想・歴史部門で受賞した板東洋介・皇學館大文学部准教授は「私の人生の望みは、“美しい本”を作ることに尽きる。私にとって書くことはすべて。それ以外の事に関心はない。藤原定家の明月記(日記)に“紅旗征戎吾事ニ非ズ”(こうきせいじゅうわがことにあらず)という有名な言葉がある。“政治も戦も私には全然関係ない”という意味だ。これまでこの言葉を、堀田善衛も小林秀雄も“逃避でない”と言っていたが、私は、単なる文弱で軟弱な“逃避”の言葉と思っていた。今回の受賞でこの言葉が妙に脳裏に浮かび、この言葉は逃げではなく、“覚悟の言葉”つまり言葉だけに賭けた人間の覚悟の言葉と思うようになり、それは私自信の覚悟になった。戦も政治も知ったことじゃない。どっかでのたれ死にするまで、美しい本を書き続けてまいります」と述べた。

藤原定家『明月記』中の言葉「紅旗征戎吾事ニ非ズ」に託して受賞の心境を語った板東洋介・皇學館大文学部准教授
藤原定家『明月記』中の言葉「紅旗征戎吾事ニ非ズ」に託して受賞の心境を語った板東洋介・皇學館大文学部准教授

 山口慎太郎、藤原辰史、板東洋介の3氏以外の受賞者は次の皆さん。

<政治・経済部門>

善教将大・関西学院大法学部准教授)=『維新支持の分析―ポピュリズムか,有権者の合理性か』(有斐閣)

<芸術・文学部門>

桑木野幸司・大阪大大学院文学研究科准教授=『ルネサンス庭園の精神史―権力と知と美のメディア空間』(白水社)、鈴木聖子・パリ・ディドロ(パリ第七)大東アジア言語文化学部助教=『〈雅楽〉の誕生―田辺尚雄が見た大東亜の響き』(春秋社)

<社会・風俗部門>

小泉悠・東京大先端科学技術研究センター特任助教=『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)

<思想・歴史部門>

古田徹也・東京大大学院人文社会系研究科准教授=『言葉の魂の哲学』(講談社)。

 サントリー学芸賞は1979年創設。毎年、前年1月以降の著作物を対象に各分野の専門家が受賞者を選考。これまでの受賞者数は今回を含め、346人に上る。新進気鋭の研究者、評論家の独創的な研究・評論を広く世の中に知らしめる、人文社会系分野の代表的な賞とし定着している。

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