アスリートによるアスリートのための団体「ATHLETE HONOR」誕生 継続的な活動をサポート

アスリート向けセミナー「第2回アスリートオーナーアイデアソン」の模様。
アスリート向けセミナー「第2回アスリートオーナーアイデアソン」の模様。

 今年、日本中に感動を与えた「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。さまざまなニュースが飛び交った中、話題の一つになったのが、選手の報酬の低さだ。ラグビー日本代表の場合は、好成績を収めたこともあって、報奨金の増額やテレビ出演などによる臨時収入があったようだが、一般的にアスリートとして継続的に活動していくのは大変だ。優勝・入賞で得られる報酬が低い割に、生活費や遠征費などの資金、コーチ・練習場所、トレーナー費用やパフォーマンスアップのための研究費用など出費が多いからだ。金銭面の心配をせずにパフォーマンスを上げることに集中できるのは、人気競技のスター選手やスポンサーがいる一部の選手だけだという。

 そんな状況を打破するために画期的な団体が設立された。アスリートの社会的価値向上を目指す一般社団法人「ATHLETE HONOR(アスリートオーナー)」だ。2017年ロンドン世界陸上男子400メートルリレー銅メダルの藤光謙司氏が代表理事に就任し、アスリート自身によるアスリートのためのプラットフォームとなる。

 その概要が、11月28日に都内で行われた「アスリートオーナー」主催のアスリート向けセミナー「第2回アスリートオーナーアイデアソン」で説明された。イベントには、カヌー女子スラロームのロンドンオリンピック代表、陸上短距離、カバディ日本チャンピオン、7人制サッカー「ソサイチ」日本代表、競輪、サッカーJ2といった競技の現役アスリートや、起業を目指す元アスリートなどが多数、参加した。

一般社団法人「ATHLETE HONOR」の代表理事に就任した藤光謙司氏。
一般社団法人「ATHLETE HONOR」の代表理事に就任した藤光謙司氏。

 開会にあたって藤光氏は、「皆さんがアスリートとして継続可能な社会を作っていくのが社団法人設立の大きな目的。1人の力、一つの競技団体の力ではできないことを、皆さんの力を集めて一緒に盛り上げていき、アスリートが抱える問題や課題を解決していきたい」とあいさつした。

 活動の目玉となるのは、“アスリートオーナーカード”の発行だ。この会員になることで、福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」が利用でき、140万を超える会員制割引、アスリートのブランディングを高めるサポート講座受講、メディアキャスティング支援、起業支援など、幅広いサービスが享受できるという。

 アスリートオーナーの会員は4つのランクに分かれ、オリンピックや競技大会及び世界大会においてのメダリストが「GOLD」、オリンピック競技もしくはオリンピック競技以外の日本代表選手及び世界大会出場選手が「SILVER」、オリンピック競技以外で世界を目指すアスリートが「BRONZE」、世界を目指す18歳以下が「GOLD Jr.」となる。要は自称アスリートというだけではダメなのである。当面は「SILVER」会員以上からスタートし、「BRONZE」以下は少し先になるようだ。

 説明会で強調されたのは、アスリートが自己価値を上げていくことと、社会的価値を上げていくことの重要性だ。自己価値を上げていけば「自分で稼げるアスリート」になるし、国旗を背負うようなアスリートは一時的な栄誉だけでなく継続的な社会的価値をも得られるべきだという。

 この日は、この2つの価値を「アスリートオーナー」がサポートする具体例として、ベネフィット・ワン社が提供する福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」などの説明と、アスリート自身による情報発信のためのTikTok入門講座が開かれた。

TikTok活用講座では、ハンドボール男子日本代表主将の土井レミイ杏利選手(写真左)が登場してノウハウを惜しげもなく披露した。
TikTok活用講座では、ハンドボール男子日本代表主将の土井レミイ杏利選手(写真左)が登場してノウハウを惜しげもなく披露した。

 ベネフィット・ワン社は、一般企業が社員の「福利厚生」「教育・研修」「健康支援」をアウトソーシングしている会社。アスリートはアスリートオーナーカードの会員になることで、あたかも「アスリートオーナー」という企業の社員になったかのような形で、「ベネフィット・ステーション」の割引優待サービスなどを利用できる。それによって、宿や旅行の割引で遠征費が節約できるし、グルメの利用で栄養補給などが割安でできるというわけだ。ほかにも、自己啓発したい場合は「教育・研修」サービスを、体調管理したい場合は「健康支援」サービスも利用できるなどメリットは多い。

 一方、自己価値を上げる一例として挙げられていたのが、SNSのフォロワーを増やすことだ。この日は、会員数4億人を誇るショートムービープラットフォームTikTokのスタッフが登壇し、TikTokのアスリートとしての活用法をレクチャー。途中から、TikTokを上手に活用しているアスリートのひとりとして、ハンドボール男子日本代表主将の土井レミイ杏利選手も加わった。11万人のフォロワーがいるという土井選手は、「最初は面白さだけで始めたが、面白い動画をアップすればハンドボールファンではない人もたくさんフォローしてくれるところに可能性を感じた。将来はハンドボールの会場をTikTokで僕を知った人で埋め尽くしたい」と言う。試合やイベントの告知などにも使えるTikTokは、アスリートにとって「使わない手はない」ツールのようだ。

 続いて、さまざまな競技のアスリート同士による交流会が行われ、この日のイベントは幕を閉じた。イベントに参加して最も印象的だったのは、アスリートたちの危機感である。スポーツの市場規模は15兆円、東京2020での経済効果は32兆円と言われているが、スポーツ業界の中心にいるはずのアスリートに資金が回っていないという現状。これを変えていかなければマイナー競技や個人競技の存続ができなくなるという危機感だ。

 厳しい現状を、アスリートが自己の価値を高めること、その力を結集することで打破しようと取り組む「アスリートオーナー」。その行く末を、日ごろスポーツからたくさんの感動をもらっている我々も注意して見守っていくべきではないだろうか。

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