オリンピアン父子つかの間の“水入らず” 新潟・デーランに「孝行息子が帰還」

オリンピックデーラン新潟大会で子どもたちと50メートル走を楽しむオリンピアンの田中和仁さん(体操)。
オリンピックデーラン新潟大会で子どもたちと50メートル走を楽しむオリンピアンの田中和仁さん(体操)。

 ダーウィンの『種の起源』やマルクスの『資本論』と並んで「世界を変えた一冊」としてよく挙がるのが『聖書』。聖書の逸話は西洋の多くの芸術作品のモチーフになっているが、その中の一つ「放蕩(ほうとう)息子の帰還」の話は、レンブラントの絵とともによく知られている。

 道楽の果てに無一文で家に戻ってきた息子を抱きすくめる年老いた父。レンブラントは、柔らかな光を用いて老父の慈愛に満ちた表情を際立たせ、父子の情愛の深さを巧みに描いている。

 新潟スタジアム(新潟市)で9月21日開かれた、五輪精神の普及を目指すスポーツイベント「2019オリンピックデーラン新潟大会」(日本オリンピック委員会、新潟市など主催)には、“放蕩息子”どころか、五輪に2回出場した「偉大な息子」を笑顔で迎える目黒豊さん(75)=新潟県魚沼市=の姿があった。

オリンピックデーラン新潟大会に参加したオリンピアン。前列右端が目黒宏直さん。
オリンピックデーラン新潟大会に参加したオリンピアン。前列右端が目黒宏直さん。

 息子は、スキーとライフル射撃を組み合わせた競技「バイアスロン」で長野と米ソルトーレークシティーの2回、五輪出場の偉業を果たした目黒宏直さん。この日のオリンピックデーランには、大勢の一般市民と一緒にジョギングなどをして五輪やスポーツの素晴らしさを伝える10人のオリンピアン(五輪出場経験のある選手)の一人として参加した。

オリンピアンと一緒に勢いよくスタートを切る、ジョギングに参加した子どもたち。
オリンピアンと一緒に勢いよくスタートを切る、ジョギングに参加した子どもたち。

 自衛隊員の宏直さんはこれまで勤務地が北海道と遠く、父子再会は2年ぶりという。豊さんは新潟市内のビジネスホテルに前泊してこの日に備えた。開会式で中原八一新潟市長らと並ぶ宏直さんの勇姿に、豊さんは目を細める。

 「故郷に錦を飾ってくれて誇らしい。私の妻が交通事故で若くして亡くなり、子どものころは寂しかったと思うが立派に育ってくれた。オリンピック出場の際は地域の方が大勢応援してくれた。地域の人20人が自腹で一緒にソルトレークシティーに応援に来てくれた時は、本当にうれしかった」

聖火トーチを持った息子の宏直さん(左)と並んで記念撮影する目黒豊さん。
聖火トーチを持った息子の宏直さん(左)と並んで記念撮影する目黒豊さん。

 豊さんは、広いスタジアムを駆け回る宏直さんの姿を追って移動する。聖火トーチが飾られた「東京2020聖火リレー」のサポーティングパートナー・エネオスのブースでは、聖火トーチを持った宏直さんと仲良く記念写真を撮った。父子のほほ笑ましい姿に見守っていた関係者の頬が緩む。

 オリンピアンが五輪出場時の逸話を話す「トークショー」でマイクを握った宏直さんは多くの子どもたちを前に「オリンピックに出場した時はとてもうれしかった。応援されたり、したりするとすごい力になる。みなさんも身近な人を応援したり、応援されたりする関係になってください」と呼び掛けた。宏直さんが話している間、周りがみな座っている中で一人背筋を伸ばして立ち静かに耳を傾けている豊さんの姿が印象的だった。“孝行息子の帰還”を迎えた父の感慨がその姿勢の良い立ち姿からにじみ出ていた。

聖火トーチを持った息子の宏直さん(左)と並んで記念撮影する目黒豊さん。
聖火トーチを持った息子の宏直さん(左)と並んで記念撮影する目黒豊さん。

 宏直さんはすでに現役を引退しており、五輪との「付き合い方」は変わっているが、豊さんは来年の東京五輪も「楽しみ」と話す。

 「息子もそうだが、どのオリンピアンも人に見せないところで大変な努力を重ねている。そのことを知るだけに、テレビで競技を見ていても、華やかな五輪の“裏”にある厳しさに思いをはせてしまい、ついつい目頭が“熱く”なってしまう」
 豊さんと五輪との「熱い関係」はまだまだ続きそうだ。

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