【コラム】時はまさに2019年秋 AIはIMAX版『ブレードランナー ファイナル・カット』の夢を見るか?

ph1  なんてこった。201911月がもうすぐやってくる。映画『ブレードランナー』で描かれていた201911月が。近未来を描いた作品として何度も見てきたのに、気が付けば2カ月後じゃないか。 

 日本初公開時の19827月、原作者フィリップ・K・ディックの大ファンだった私は社会人1年生だった。期待に胸躍らせて劇場に出かけ、期待以上の内容に衝撃を受けて劇場を後にした記憶がある。当時、興業的にはいま一つだったらしいが、カルト的な人気やSF映画の名作としての評価、その後の映画やアニメに与えた影響はご存じのとおりだ。 

ph2  この作品にはいくつかのバージョンが存在するが、そのうちリドリー・スコット監督が最も好きだと語る『ブレードランナー ファイナル・カット』が、96日から2週間限定で国内にあるIMAXシアター31館で上映されている 

 『ブレードランナー』は、当然のことながらビデオ、レーザーディスク、DVDなど、何度もパッケージメディアになっている。私もその度に買い換え、今は『ファイナル・カット』3枚組ブルーレイディスクを持っており自宅でも幾度となく見ている。ただの再上映であれば、正直、劇場に足を運ぶ気にはならない加えて、あちらこちらで何度も論じられ、語りつくされてきた感のある作品である。いまさら何か書くことがあるとも思えない・・・ 

ph3  だが、今回はIMAXでの上映だ。そして時はまさに2019年。何かまた新たな気持ちであの映画を見ることができるような気して、公開初日、足は自然に池袋グランドシネマサンシャインに向いていた。 

 最初に結論を書くと、IMAX版の『ブレードランナー ファイナル・カット』は、十分に見る価値があった巨大スクリーンのおかげで、とにかく没入感がすごいのである。冒頭の、近未来(2019年だけど)の陰鬱なロサンゼルスの夜景からタイレル・コーポレーション本社ビルまでのシーン、“強力わかもと”の映像広告が映し出される街のシーン、空飛ぶ車がビルの屋上に降り立つシーンなど、特に引きの映像は、まるで映画の中にいるようだ。これだけ大きな映像に引き伸ばされても、アラが目につかないクオリティーもさすがである40年近く前の映画なのに、だ。まぁ、巨大画面になったために顔のアップや、早いスピードでカメラが左右に振られるような映像はちょっとクラクラしたりはする。それでも、何度となく、いや数十回と見た愛着のある作品世界に没入できる感覚はファンとしては素直にうれしかった 

 少しだけ内容的なことを書くと、この映画の真の主人公はデッカード(ハリソン・フォード)ではなく、レプリカントのロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)だよなぁと改めて思った。映画の終わり近く、ロイが死ぬ直前に詩的で哲学的な内容を語るシーン。ここがこの映画のクライマックスだからだ。結局、レプリカントも人間もつかの間の生を生きて死んでいく存在だという深いメッセージである。しかもそのセリフは、台本をしっかり読み込んだルトガー・ハウアーが脚本家の意図を汲んでアドリブで口にしたというからすごい。ちなみに、そのルトガー・ハウアー2019年、鬼籍に入った(合掌)。 

ph4 一部劇場先着入場特典 『ディレクターズ・カット』と『ファイナル・カット』には、オリジナル劇場版のラストにあったデッカードとレイチェルの逃避行シーンが無い。私のような俗物にはうれしいハッピーエンドのラストだったが、それをカットしたのは、ロイが死ぬシーンこそがこの映画の最も重要なシーンだということを強調したかったのではないだろうか。 

 現実の2019年には、残念ながら空飛ぶ自動車やレプリカントはまだ実用化されてはいないけれど、身のまわりにはAIが加速度的に増え続けている。この作品が問いかける「人間と人間に似たもの」というテーマは、AIがどんどん進化を遂げていくにつれて、ますます重要なテーマになっていくはずだ。2019年秋、IMAX版で『ブレードランナー ファイナル・カット』を見ることができる幸せ―― その気持ちをAIが理解できる日がいつかやって来るのだろうか。                  
(鬼院 丈)
 

 


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