子どもたちが誇れる「未来の里」に向かって 岩手県遠野の挑戦

 山々に囲まれた自然豊かな岩手県遠野市。北上山地最大の盆地、遠野はアイヌ語の「トー(湖)ヌップ(丘)」が地名の由来とも言われ、豊かな水と緑が人々を育む。時間がゆっくりと流れるこの地は、柳田國男が明治43年に発表した説話集『遠野物語』でも知られる。座敷わらしやカッパも登場するミステリアスな『遠野物語』は、この豊かな自然や風土から生まれ、今も地元で語り継がれている。空が夕暮れ色に染まる午後6時、遠野の町には、三橋美智也のヒット曲「星屑の町」のメロディが流れる。昭和30年代後半にヒットした「星屑の町」は、作詞家の東条寿三郎氏が遠野の星空をモデルに作詞したと言われている。

今にもカッパが現れそうなカッパ淵
今にもカッパが現れそうなカッパ淵
きゅうりがブラ下がった釣りざお。美男美女はご注意と
きゅうりがぶら下がった釣りざお。“美男美女はご注意”と

■ビールに欠かせないホップは遠野から

 遠野では、ビールに欠かせない原料のホップ栽培が約50年前から行われており、栽培面積は日本一を誇る。とれたてのホップを使ったビールや多彩なクラフトビールの登場により、国産ホップの需要は伸びている。しかし、国産ホップの生産量は年々減少傾向にあり、遠野でもピーク時には239戸あったホップ農家が、現在では35戸。ホップ農家の高齢化と後継者不足、6次産業化への対応が急務となっている。

 ところで、「普段ビールをよく飲むが、そもそもホップって何?」という読者も多いはず。ホップはアサ科のつる植物で、半年で6mを超える高さまで伸びる。ビールに使われるのは雌株の毬花(まりばな)という部分だ。ホップはビールに加えることで雑菌の繁殖を防ぎ、苦みと香りを加え、濁りを抑えるなどの効果がある。ビール独特の苦みと香りはホップの分量や加えるタイミングによって変わる。遠野ホップ農協の組合長は「ホップはビールの魂」と語る。6mを超えるホップの栽培と収穫は重労働で、品種改良や就農者の確保が今後の課題となっている。

ビールの苦みと香りに欠かせないホップ
ビールの苦みと香りに欠かせないホップ
毬花の中の黄色い部分からホップの爽やかな香りが!
毬花の中の黄色い部分からホップの爽やかな香りが!

 

■ホップの里からビールの里へ

 ホップ栽培を通じた地域の活性化を図る試みが遠野で始まっている。ホップ農家と行政、ビールメーカーがタッグを組み、遠野を「ホップの里」から「ビール文化を発信する里」にする構想だ。良質なホップを栽培し、需要を伸ばす。そして、自然環境を保全しながらホップ農家を増やし、周辺の産業も活性化させる。遠野市では、ビールのつまみになるスペイン原産の野菜「パドロン」の栽培を支援。パドロンをキリンシティで提供するなど、メーカーも後押しする。また、クラフトビールを醸造・販売する「マイクロブルワリーパブ 遠野醸造」も遠野市役所の横にオープン。ビール好きの旅行者や若者が集う交流の場となっている。

 ホップ農家が共同で収穫所を運営するのも遠野の特徴の一つだ。新鮮なホップを農家から一同に集め、ビール工場に出荷することが可能で、キリンが今秋に発売する「一番搾り とれたてホップ生ビール」も遠野のホップ農家の協力により、商品化にこぎ着けたという。

高さが6mを超えるホップ畑
高さが6mを超える遠野のホップ畑

 

 また、遠野の小中学校では教育の一環として、ホップ農家での収穫体験や工場見学を行う。岩手県立遠野緑峰高等学校では、廃棄されるホップの主蔓(しゅづる)を活用した和紙の研究と製作に挑戦し、平成26年度には「イオンエコワングランプリ 研究専門部門」で内閣総理大臣賞、「日本学校農業クラブ全国大会プロジェクト発表会 区分文化生活」で文部科学大臣賞、「環境活動発表会全国大会」で環境大臣賞を受賞するなど、地域資源を活用した教育活動も進む。

遠野緑峰の高校生が作ったホップ和紙
遠野緑峰の高校生が作ったホップ和紙

 

■遠野ホップ収穫祭が開催

 ホップは8月中旬から9月初旬に収穫する。今年は雨の恵みもあり、大きさや形、香りも上質なものになったという。ホップの収穫を祝う「遠野ホップ収穫祭」が遠野市内で8月25日と26日に開催された。オープニングイベントでは、当日の朝にホップ畑で収穫をした遠野中学校の生徒たちからビールメーカーの工場長らに、ホップのバトンパスを行った。収穫体験を行った中学生は「ホップの収穫作業は思っていたよりも大変だった。早く大人になってビールを飲んでみたい」と語った。

ホップの収穫体験をする遠野中学校の生徒達
ホップの収穫体験をする遠野中学校の生徒たち
ホップ収穫祭のオープニングイベントで収穫したホップをバトンタッチ!
遠野ホップ収穫祭のオープニングイベントで収穫したホップをバトンタッチ!
パドロンの素揚げ(写真左手前)とビールは最高!!
パドロンの素揚げ(写真左手前)とビールの相性は最高!!

 

 「ビールの里」実現に向けた遠野市の取り組みにより、ホップの新規就農者は2年間で7人も増えたという。遠野で栽培される高品質のホップ。豊かな自然という資源を最大源に活用した地域振興により、子どもたちが誇れる「里」の実現に向けて、遠野の挑戦はまだまだ続く。

 


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