まるで漫画のような胸のすく結末 消費者・製造元・被災者が喜ぶ「獺祭 島耕作」

島耕作確認ラベルデザイン 「島耕作」の問題解決力はやはりすごかった。

 各地に大きな被害をもたらした7月の西日本豪雨。死者は200人を大きく超え、平成最悪の豪雨災害となった。島耕作の故郷・山口県岩国市でも甚大な被害が広がり、同市で「獺祭」(だっさい)ブランドの日本酒を製造する旭酒造株式会社も深刻なダメージを被った。同社の前を流れる川が溢れて酒蔵の1階に約70cmの高さまで浸水し、送電線の破断により3日間の停電が発生。これにより、150本の発酵タンク(50万リットル強、四号瓶換算で70万本)の温度コントロールが不能となったのだ。被災当時、同社の桜井博志会長が悲痛な面持ちで「これはもう通常の商品としては出せない」と語る様子がテレビなどのメディアでも紹介され、世界的に認められた名酒「獺祭」が大量に廃棄されるのかと、頭を抱えた酒好きも多いはずだ。

2018年7月の西日本豪雨で氾濫した旭酒造前の川。
2018年7月の西日本豪雨で氾濫した旭酒造前の川。
酒造への浸水、送電線の破断による停電などの被害が出た旭酒造。
酒造への浸水、送電線の破断による停電などの被害が出た旭酒造。

 その様子を見かねて声をかけたのが、やはり山口県岩国市出身で、講談社「モーニング」誌で『会長 島耕作』を連載中の漫画家・弘兼憲史氏だ。弘兼氏は作中で「喝采」という日本酒製造プロジェクトを描いているが、その取材のため2年前に旭酒造を訪れて同社と親密な関係を築いていた。だから今回の被災を知り、泥にまみれた「獺祭」を買い取りたいと伝えたのだ。だが、桜井会長は「たとえ密封されていたとしても、泥に浸かった商品。細菌でも入り込んでいたらと思うと売ることはできない」と返答。では、何ができるかとなったときに浮かび上がってきたのが、廃棄処分が予定されていた発酵中の酒だ。通常の「獺祭」として出荷するのは無理だが上質な日本酒を作るのには十分なクオリティー。これを使って純米大吟醸酒を造り、特別なラベルを貼った「獺祭 島耕作」として売るというプランを弘兼氏が提案したのだ。桜井会長も「被害を受けたのはうちだけではないので、被災地復興支援商品としてなら」と快諾したという。実はこれには伏線があり、「獺祭」に「島耕作」のラベルを貼った両者のコラボは、2年前に講談社の読者プレゼント「シマコー獺祭」としてすでに実現している。そのときのラベルの版がまだ残っていたので、話はスムーズに進んだようだ。

まるで島耕作のように、消費者を喜ばせ、製造元・被災者を救う“三方よし”を実現した作者の弘兼憲史氏。
まるで島耕作のように、消費者を喜ばせ、製造元・被災者を救う“三方よし”を実現した作者の弘兼憲史氏。

 こうして出来上がった「獺祭 島耕作」純米大吟醸は、被災地復興支援商品として8月10日の発売が決定。四合瓶(720ml)入りで価格は1,200円(税別)と格安。そのうち200円が西日本豪雨被災地への義捐金として寄付されるという。販売は旭酒造Web店、直営店および獺祭取り扱いの全国の酒販店で行われる。

「獺祭 島耕作」純米大吟醸 四合瓶(720ml)入り 価格1,200円(税別)。
「獺祭 島耕作」純米大吟醸 四合瓶(720ml)入り 価格1,200円(税別)。

 だが、物語はこれで終わらないのが「島耕作」だ。旭酒造の桜井一宏社長によると、同社は「獺祭」として販売できなくなった酒のうち出荷可能な分(四合瓶換算で約65万本分)を、すべて「獺祭 島耕作」として販売するという。同社の「獺祭」は、精米の度合いなどに応じて、価格(720ml入)が約1,500円の「獺祭 純米大吟醸50」をはじめ、約2,400円の「獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分」、約5,000円の「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」、そして約3万円の「獺祭 磨き その先へ」まで幅広いラインアップを揃えている。それらの商品になるはずだった酒をすべて「獺祭 島耕作」として販売するということは、つまり税別価格1,200円の「獺祭 島耕作」を買うと、その中身は1,500円の「獺祭 純米大吟醸50」かもしれないし、3万円の「獺祭 磨き その先へ」かもしれない(確率は200分の1?)というのだ!

税別価格1,200円の「獺祭 島耕作」の中には、「獺祭 磨き その先へ」(3万円)相当の酒が中に入っているものも。
税別価格1,200円の「獺祭 島耕作」の中には、「獺祭 磨き その先へ」(3万円)相当の酒が中に入っているものも。

 消費者にとっては、チャリティーという大義名分で名酒を割安で購入でき、しかも宝くじのように「当たり」があるという夢のような商品。製造元にとっては、廃棄処分するしかなかった酒を復興支援に活用でき、すべて売れれば1億数千万円を被災地に寄付できる喜び。そして被災地にとっては有難い復興支援と、困難な状況を逆転させ、絵に描いたような“三方よし”を実現した「獺祭 島耕作」。漫画家・弘兼憲史氏が実現させた、まるで漫画のような胸のすく結末に拍手を送りたい。

「獺祭 島耕作」で乾杯する、(右から)旭酒造桜井博志会長、弘兼憲史氏、旭酒造桜井一宏社長。
「獺祭 島耕作」で乾杯する、(右から)旭酒造桜井博志会長、弘兼憲史氏、旭酒造桜井一宏社長。

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